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誰が私を殺したの?2

「っていう話しなんだって」


だらだらと続く長い坂道に飽きたのか、誰かが怖い話をしようと言い出したのがきっかけだった。


「殺されちゃったの?かわいそ~」

「で、容疑者は婚約者だったと落ちか?」

「男見る目がなかっただけじゃん」

「アホらしい」

「親御さんも見る目なかったんですね」

「遅かれ早かれ、そんなんだったら潰れんだろう。その家も」


幼稚舎からエスカレーター式の学校に通う7人は、夏休みを利用して友人の一人が所有する別荘に遊びに来ていた。

しかし、目的もなく訪れた彼らは次第に暇になり、別荘の窓から見える、山の上に建つ屋敷に行ってみようという話になった。

そして現在、茹だるような暑さの中、山を登っているというわけだ。


「ねぇ、どのくらい歩いてる?」

「一時間くらいですかね」

「もういや~~!足痛いし、疲れた。帰ろう」

「お前が来たいって言ったんだろう!」

「だって、こんなに遠いと思わなかったんだもん」

「そうだよね、遠くから見るともっと近くに見えたんだけどね」

「帰るか」


そう提案した時、一気に空が灰色に染まる。

そして、低く唸る雷音と共に雨が降り出した。

慌てた彼らは、近くの木の下に避難する。


「なんだよ!この雨」


吐き捨てるように文句を言う。

さっきまで晴天だったのに、山の天気は変わりやすいというけど、急過ぎるだろうと悪態をつく。

雨はやむどころか段々強くなり、一メートル先も見えなくなる。

時折空に稲光が走る。

と、ドンと大きな音が響く。


「きゃっ」

「落ちたな」

「あぁ」

「ねぇ、あそこに明かりが見える。もう少しで屋敷につくんじゃない」


少し離れたところでに一つの明かりが見えた。


「行くか」


バケツをひっくり返したような土砂降りの中意を決したように走り出す。

暫く走り続けると、目の前に洋館の入口が見えた。


「ここかな?」


荒い息をついて玄関ポーチに逃げ込む。

見上げた屋敷の中は明かり一つついておらず真っ暗だ。


「すみませ~~ん。すみませ~~ん」


観音開きのドアをノックして中に声をかけるが応答はない。


「誰もいないんでしょうか?」


恐る恐るドアノブに手をかけるとゆっくりと扉が開く。


「あいた・・・」


本人も驚いた顔して皆を見回しす。

ドアの所から先程より若干大声で呼び掛ける。


「すみませ~ん。誰かいませんか~。雨宿りさせていただきたいんです。すいませ〜ん」


中は真っ暗で奥まで見えない。

時折瞬く稲光が室内を照らす。


「入るぞ」


後ろから来た青年が、声をかけていた青年の横をすり抜けて中に入っていく。

それに続くように全員が室内に足を踏み入れた。


「誰もいないのかな?」

「分からない。でも、誰かいたら明かりくらい付けるだろう」

「そうだよね。こんなに暗いんだもん」


すると、背後で大きな音を立てて扉が閉まった。


「きゃぁ」

「風で閉まったのか?」


そう言いながら扉に近寄ろうとした瞬間、明かりが何度か瞬いき煌々と室内を照らしだした。

暗闇に目がなれてた人たちは、突然ついた明かりに眉をしかめる。


「なんだ?」

「あっ、ごめんなさい」

「お前か?」

「ドアが閉まって、ビックリしちゃって・・・壁にぶつかったの。そしたら明かりが・・・」

「あぁ、そこにスイッチがあったのか」

「多分」


目が慣れてくると、室内全体が見渡せた。

床には真紅の絨毯が敷かれ、玄関から右に長い廊下が続いている。

壁や天井、見える床は大理石で、光に反射して白く光っている。

柱一本一本に繊細な模様が施されていて、豪華な雰囲気を醸し出している。

玄関を入り正面には絨毯の敷かれた幅3メートル程の大階段。

踊り場で二股に別れて2階へと繋がっている。

途中でカーブしているため2階がどうなっているのか見えない。

見上げると吹き抜けになっている天上中央に豪華なシャンデリア。

天井近くには明り取りの大きな窓がついている。



「とりあえず点呼しませんか?」

「点呼!?」

「雨の中走ってきたんです。山の中だし確認したほうがいいかと思って」

「いるか?」


控えめに提案した男の子に疑問に感じるながらも最初にこの屋敷に足を踏み入れた人物が腕を組んで全員を見渡す。


「美樹!」

「は~~い」


腰までのウェーブを金に近いほど茶色に染め、目元は黒いアイラインが濃くツケマを付け、真っ赤な爪の女性が疲れたようにその場に座りながら手をあげた。


「真里!」

「いるわよ」


スラリとした健康的な体にショートカット。身長も女性にしては高くすっきりした目元はからは意思の強さを感じる女性がハキハキした口調で答える。


「祥子は?」

「は~い。浩太と一緒にいま~す」


仏頂面をして一際この中の誰よりも身長が高くしっかりとしたガタイの良い男性の腕に小柄で胸も大きく長い髮を高い所でお団子にした女性がしがみつきながら微笑む。


璃紅りく

「いますよ」


ずり落ちてもいないのに、頻繁にメガネを直しながら、細身の男性が答える。


「春樹は?」

「僕は、ここです」


女性的な顔立ちの小柄の青年が控えめに手を挙げる。


雪夏せつか?」

「・・・はぃ」


壁のそばに立っていた、腰までの黒髪の女性が小さく手を挙げる。


「これで全員だな」

「いやいや、龍弥りゅうやく~ん」

「はぁ?」

「龍弥だけ呼ばれてないのかわいそうじゃん」


腕を組みながら確認をしていた龍弥を階段に腰を下ろしていた美樹がからかう。


「俺が点呼とってんだからわかるだろう」

「いいじゃん。ノリだよノリ」

「わぁったよ」


面倒臭そうに龍弥が答えた。


「じゃぁ、りゅうやく~~ん」

「おう」


わざとらしく大きなため息をついた龍弥は不機嫌そうに答えた。


「ねぇねぇ、ここ玄関?めちゃめちゃ広くない?」


祥子が浩太の腕を離さずに、璃紅に聞く。


「玄関というよりエントランスホールと答えたほうが適切ですね」

「へ~~」

「お前わかってないだろう」


浩太に言われて祥子は舌を出した。


「だって、聞いてもわからなかったんだもん」


あっけらかんと言う。


「馬鹿だな」

「うんバカだよ」


イチャイチャしだした二人はいつもの事と置いておいて、他のメンバーはこの先の話をしだす。


「まだ外は土砂降りですし、もう少しここにとどまりますか?」

「そうだよね~!髪もパサパサんみなるし化粧だって禿げちゃうじゃん!」

「塗りすぎだと思うが」

「璃紅は黙ってて!」


春樹の言葉に美樹が嬉しそうに答えるが、その理由に璃紅が軽蔑の眼差しで否定をする。


「どうでもいいけど!」


続きそうな喧嘩に真里が割って入った。


「挨拶はしておこう」


体育会系の部活に所属している真里は礼儀には少し口うるさい。


「え~でも、声かけても誰もいなかったじゃん」

「だな、これだけ話しても誰も出てこないし留守なんじゃね」


祥子の言葉に浩太が頷く。


「じゃぁさ、探検がてら探さない!」


良い事思いついたとばかりに美樹が提案した。


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