言葉にならないから
一年前、未曾有の大災害が東日本を襲いました。金曜日、週末。仕事場のテレビで津波が荒れ狂いながら人とその営みをあっけなく呑みこんでいく様を声もなく見つめていました。ぐるぐると渦を巻く津波の映像が頭の中を回る日々……。
何日か経っても、渦は相変わらず頭の中をめぐり、何かを書かなくては……とどこかで思っているのに、まとまった文章にはならず、でも感情がはけ口を求めて溢れそうになっていました。そして、エッセンスだけをまとめてみました。
賞味期限切れた乾パン食べながらテレビのニュース涙でにじむ
大地震次は大阪やってくる?怖くて一人で風呂にも入れず
東北の雪をこっちに持ってこい 寒の戻りのうらめしきかな
平凡な日常送る幸せとうしろめたさの一家団欒
志願して原発止めに行く父の背中の広さ誇らしきかな
最後まで防災無線向かいつつ波間に消えゆ乙女の命
絶望の地にすっくと立ち上がる若き力のすばらしきかな
「大丈夫 再建しましょう 我々で」これぞ日本の老人パワー!
そして一年経ちました。東北には先日慰霊のイベントで歌を歌うために行きましたが、被災地を見る時間はありませんでした。直接被災された方々の悲しみを分かち合うというのはあまりにもおこがましいのかもしれません。それでもやっぱり頭の中には今も津波がぐるぐるしていて、忘れてはいけないのだと、私に警告してきます。
鉄骨の墓標 見上げし父母の重き365日
波間より拾いし汝の生こそを 逝きし命の願う事かな
東北の嘆きも明日は我が身かな 画面の中に我映しみる
電力の幻なれば この世をばいかに現のものとかはせん
先人のツケを払うは子か孫か 廃炉の道の罪の深さよ
放射能浴びるのイヤとひきこもり 窓も開けれずエアコンつける
文明は電気なくして成り立たぬ 詭弁の上の原子力かな
人の世を壊すのは神 そしてまた新たな世界創るのも神
凛と立つ若者達の手で拓く明日に神の恵み多かれ
鎮魂のサイレン届け あの海の底に眠れる魂達へ
いつまでも忘れはすまい あの時を あの光景を あの悲しみを
生まれてきた瞬間に死ぬ事は決められています。でも生きている間は、否、生かされている間は与えられた命を懸命に燃やして欲しい。生き延びた人々が充分に生きる事を逝った人はきっとそう願っているはず。
体の一部が傷ついたら、体全体が痛みを感じるように、被災した方の痛みはこの国に住む人全ての痛み。
祈り合い、いたわり合いながら、共に生きていきたいものです……。