君と黄昏
尖角が書く、1000文字のセツナ系恋愛小説集です。
毎回完結させ、そして連載でまた閉じるという形で書きます。
ちなみに、「涙愛」で「るいあい」って読みます。
予定としては10作品は書きます。
それでは、第一作品目、どうぞ!!!!!
私が今いるのは、名前も知らない病院のベッドの上。
時刻は、夕暮れ時である――――――――――。
私が彼と付き合っていたのは、今から約三週間前のこと。
私が病院のベッドの上で目覚めたのは、今から約二週間前のこと。
私がのんきに寝ている間に、いつの間にか、私の彼は死んでしまった。
原因は、彼自身が引き起こした事故。
その車の助手席に、私は乗っていた。
事故を引き起こしたと言っても、彼は酒を飲んでいたわけでも、スピードを出しすぎていたわけでもなかった。
ただ、その日は運が悪くて、雪が降っていたの。
だから、ブレーキを踏んでも、ブレーキが利かなかっただけ。
ただそれだけで、前に止まっていたトラックに突っ込んでしまったということなだけ。
それだけで、私の彼は命を失ってしまった。
私は骨折や打撲、たったそれくらいの損傷で生き残ってしまった。
別に、私の傷はどうだっていいんだ。
別に、私がどれだけ傷つこうが構わない。
けれども、彼の命は奪わないで欲しかった。
愛す人がいないのならば、生きている意味などないのだから。
私の病室の窓から、薄れゆく夕日が差しこんでくる。
昔、彼と見た夕焼け空は、こんなにも醜くなんてなかった。
今はそんな何気ない一つ一つのことが、とても懐かしく感じてしまう。
彼がいないのならば、私の生きている意味とはなんだろうか?
私はこれから先、誰を愛して、誰を想えばいいのだろうか?
私達の結婚は、すぐそこまで迫っていたのに。
籍は、ハンコを捺して役所に持って行くだけ。
式は、お金が貯まり次第、すぐにできる感じ。
お互いの両親も顔合わせして、「よろしく」と言葉を交わしたところ。
まさに、“幸せ”という日々が続いていた。
けれども、そこまで進んでいた私達の関係に、神様は天罰を下した。
私達が何かいけないことをしたでしょうか?
罰を与えられるほど、何か悪いことをしたでしょうか?
何かしたならば、謝ります。
何度でも、気が済むまで謝らせていただきます。
「ごめんなさい、神様」
「許してください、神様」
だから、彼を返してください。 お願いですから。
そんなことを言っても、彼が返ってこないのはわかってる。
でも、彼が帰ってこないと、私の気持ちは何処かに消えてしまいそうなの。
だから、彼が帰ってくるまで、私は何度でもあなたに聞き続けるわ。
きっと、ずっと、聞き続けることになるでしょう。
だって、私が頼れるのは、もうあなたしかいないのだから―――――。




