7.穴から冒険
「ノーラ君これお弁当と水筒用意しといたからね」
「ありがとうございます」
「頑張っておいで!」
「はい!行ってきます!」
「食料よしポーションよし準備よし、行くぞ」
2日分のお弁当と水筒にタオルと寝袋をバックパックにつめながら確認をしていく。
緊急用帰還クリスタルは高価で手が届かなかった。
何かアクシデントがあった時のために買っておきたかったが僕が想定していた金額の数倍はしていて止むなく諦めた。
「行ってきます」
誰もいない我が家に暫しの別れを告げる。
学園ダンジョンの前まで来たが今までにない緊張に襲われる、僕は今から学園ダンジョンの、ソロ踏破に挑むんだ。
「ノーラ君!」
後ろから僕の名前を呼ぶ声がして振り向く。
「リノアさん!?」
リノアさんが走りながら僕の目の前までやってくる、僕の勘違いでなければ今はギルドの業務中のため、わざわざ僕のために来てくれたのかとても嬉しく思い先程までの緊張が嘘のように何処かに行ってしまった。
「ノーラ君今日ダンジョン攻略だったよね?」
「はい今入るとこでした」
「緊急用帰還クリスタル買えなかったて言ってたから」
「こんな高価なもの貰えません」
「駄目だよもしものことがあったらどうするの!?」
「でも」
「でもじゃない!」
「……」
「じゃあお守りとして持っていって」
「お守り?」
「そう返してくれればいいから…絶対無事に帰ってきてね」
「分かりました必ずお返しします!」
「うん待ってるね」
私はエレオノーラのギルド員になり3年が経った頃、ダンジョン学園のギルドへ異動を言い渡された。
最初は戸惑いがあったけど学園ギルドの業務や環境にも慣れてきた時あるニュースが都市全体だけに留まらず世界中にまで広がった。
世界初の男性冒険者の出現、しかもこの学園に入学が決まったとの知らせと共に学園ギルド長と学園長に呼ばれ、新年度に入学してくる男性学生冒険者の担当アドバイザーに任命を受けた。
最初に会った時のノーラ君は自信が無さそうでオドオドした頼りない印象で初日にスライムに負けてボロボロになって帰ってきたときは1時間ほど説教をした。
[穴掘士]ジョブ…世界初の男性冒険者だけでなく、前例の無いジョブを発現したノーラ君はソロでの学園ダンジョンの攻略を学園長から言い渡されたそうで、無茶だと思い学園長に抗議に言ったが、聞く耳を持ってもらえなかった。
「そなたがノーラを導いてやればよかろう 期待しておるぞ」
そうこうして生産科のヒルダさんからグローブを購入したノーラ君はいきなり数十体のモンスターを討伐してみせた。
両手を血で真っ赤にして帰った時は卒倒して倒れそうになった。
日に日に成長していくノーラ君を身近で見守っていて嬉しさの半分不安が残る、学園ダンジョンは通常新入生達が3人から4人程のパーティーを組んで攻略をするから初心者ダンジョンと言われる初心者用ダンジョンと認定されているが、[穴掘士]という未知数なジョブの少年がソロで攻略するのは一筋縄ではいかないだろう。
だから自分の給料でもけして安くない緊急用脱出クリスタルをノーラ君に手渡したがそれでも不安は拭えない。
「ノーラ君…無事で…」
「着いた」
道中のモンスターを難なく片付けて2階層の階段の前までやって来た。
僕が学園ダンジョンの攻略を急いでいるのには訳がある、入学してからもうすぐ3週間が経つがこれから身体測定や座学の授業が始まるそうすれば、学園ダンジョンの攻略に手を付けられなくなってしまう、だからこうして少し無理をしてでも攻略をしなければならない、リノアさんからもらった緊急用脱出クリスタルが、入っている胸元のポケットに手をかざし息を整える。
階段を一段一段注意しながら降りていく今までと変わり映えのしない光景だが油断をしないように気を引き締める。
この学園ダンジョンは下に行く程道が複雑になって入り組んでいきモンスターの数も種類も増えていく、学園ギルドから貰えるマップがあるとはいえ方向感覚やマッピングに集中しないと迷ってしまう。
学園ダンジョンの最終部にあるボス部屋にいるモンスターの討伐がダンジョン踏破の証である、真っ直ぐにボス部屋まで行くのが正攻法で最も簡単だが、僕に科せられたミッションはソロでの学園ダンジョンの攻略ともう一つ、ダンジョン内での[穴掘士]ジョブスキルの使用である、学園長が言うにはジョブとは戦闘系と生産系に分けられいずれもダンジョン攻略に役立つものでヴァルキリーから授けられる祝福である、だが[穴掘士]は今まで発現者がいない新たなジョブで戦闘系生産系どちらにも属さないイレギュラーなジョブであることから、ジョブの詳細を調べなければならずまずはダンジョン内で穴を掘る事を学園長から命じられた。
今のところは綺麗に薬草を掘り出す事が出来るくらいだが、学園長からは新たな道の開拓なども試してみよとの事だった。
1階層は粗方壁を掘ってみたが新たな道や部屋、アイテムが出ることは無かった。
「まずこの周りを散策しよう」
マップを見ながら辺りの壁を掘ってみるが手応えは空振りに終わる。
階層の入口ということもあってからかモンスターの気配もしない、お腹が空いてきたからお弁当を食べるためにバックパックを地面に下ろし、お弁当と水筒を取り出す。
「いただきます!」
ダンジョンに入ってからどのくらい時間が経っただろう、お腹の虫を頼りにするならばお昼ごろだろうか、肉汁が滴るカリカリに焼かれたベーコンに瑞々しいレタスとトマトを挟んだパンを頬張りながら考える、ダンジョン内での初めての食事だが何だか不思議と閉塞感や焦燥感等の違和感を感じることなくリラックスすることが出来ている。
食事をとり片付けを済ませてこれからの攻略のためにもう少し休息をとろうと思いその場に寝転んでいると何となく学生証カードをポケットから取り出し自分のステータスを確認してみる。
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ノーラ ヒューマン 男 15才 Lv6
STR 17 VIT 13 AGI 10 DEX 26 INT 11 LUC 20
スキル[穴掘士]Lv3
・穴を掘る事が上手くなる
・土より硬いものも掘れるようになる
・発掘可能な場所がハイライトするようになる
――
「レベルアップしてる!」




