6.穴から謎のポーション
「ん誰?」
「冒険科のノーラと言います、ギルドのリノアさんにカレンさんを紹介してもらって伺ったんですけど」
カレンさんが腰掛けている椅子の目の前に立ち会釈をしながら自己紹介をし、用件を伝える。
「……カレンから?」
ボソボソと小声でゆったりした口調の少女である。
「はい学園ダンジョンの攻略のためにポーションを揃えたくて」
「ノーラってあの男冒険者の?」
興味が湧いたのか初めて僕の顔に目を向けてくれる。
「えっはいそのノーラです」
「で……何しに来たの?」
もう興味が失せたのか研究器具にあるテーブルの方に身を返してしまう。
「あ、えっ?ポーションを買いに」
「ポーション……いいよ」
「ありがとうございます」
カレンさんの隣に移動し近づく。
「その代わり実験に付き合って」
僕の顔を見上げながら要求をしてくる。
「実験?」
「そう私が作るポーション……効能不明のが出来る」
手元にあるポーションの入った瓶を手にしながら、口から溢れるように言う。
「効能不明……」
「効能は使用しないと分からない……困ってる」
手にしている瓶を擦りながら何処か恥ずかしそうにしている。
「それで僕がそのポーションを飲めば良いんですか?」
「そう」
「わ、分かりました飲みます」
「じゃこれ」
そう言ってテーブルの上に置いてある布のかかった木箱に手を向け、布を取り払うと木箱一杯に入ったポーションが目に映る。
「この箱にあるポーション全部…ですか?」
木箱の中に大雑把に入れられているポーションの数々、その特出した色とりどりのポーションは禍々しく毒々しい色をしていて身体に良いと思えないものばかりであった。
初めてポーションを目にしたけどこういう物なのかな?
「……うん」
「は……ハハハ」
「じゃ……飲んで」
そう言って一つのポーションをグイと手渡される。
「何だか毒々しい色をしてますけど」
紫と緑を混ざったような、今まで見たことがない色をしていて、ブルブルとこれは良くないと身体が拒否反応を示してくる。
「……大丈夫……だと思う」
何処から来る自信なのかサムズアップしてくる。
「い…いただきます」
恐れ恐れ飲み込むと言い表すことの出来ない味と、舌の刺激に襲われる。
「……どう?」
「うっ!!」
「……鑑定」
「どうですか?回復とかしてますか?」
良薬は口に苦しとマリアお姉ちゃんに小さい頃から言われてきたのでポーションとはこういうものなのかもしれない。
「……ステータスダウン状態……だって」
「ステータスダウン?大丈夫なんですか!?」
ステータスダウン!?ってことは今僕のステータスは通常より低くなってるってこと?
ポケットに、ある学生証カードを取り出しステータスの確認をする。
――
ノーラ ヒューマン 男 15才
Lv4
STR 14 VIT 11 AGI 9 DEX 23 INT 8 LUC 18
DOWN
STR 9 VIT 6 AGI 4 DEX 18 INT 3 LUC 13
スキル[穴掘士]Lv2
・穴を掘る事が上手くなる
・土より硬いものも掘れるようになる
――
確かにDOWNの項目が出来ている、ステータスが全体的に5ポイントずつ下がっているようだ。
今気にすることじゃないかもしれないけど、Lvが4に上がっていた、ダンジョンでモンスターを沢山倒したおかげだ、とても嬉しい!
「……一時的だから…大丈夫……だと思う」
「思う!?」
ずっとこのままではとても困ってしまう。
「次は……これ飲んで」
休む暇もなく次のポーションを手渡される。
「禍々しい色ですね…本当に飲まなきゃ効能がわからないんですか?」
瓶の底を持ちながらドス黒い色をした液体をふるふると掻き回しながらカレンさんに問いかける。
「……そう、私の[薬師]スキルの対価……だから飲まなきゃ鑑定不能」
スキルの対価…木箱一杯に入ったポーションを見て、カレンさんが一人で研究する姿を想像し覚悟を決める。
「いただきます!」
ゴクッバタン
「う…あ」
地面に転がり体が硬直しビクビクと反応してしまう。
「麻痺……だった」
これが麻痺…ポーションって回復したり状態異常を治すだけのイメージだったけど、逆に状態異常になったりするポーションまであるとは世界は広いなと考えながら体の痺れが収まるのをただひたすら待つが中々収まらずカレンさんの方に目を向ける。
「うう」
「少し……強力らしい」
そう付け加えてくれる。
少しだけ強力だったそうだ、どうりで体が思うように動かせず効果が長いような気がしたけど、気の所為ではなかったようだ自分の感の鋭さに自分で称賛を送るが虚しい気分に襲われながら早く痺れが引かないかと願う。
「凄いですねモンスターに使えれば心強いポーションですよ!」
カレンさんの気に障らないように、どこか無理やり言い繕う。
「うん……ポーションは飲んだり体の一部に掛ければ効果が……あるから」
「えっじゃあ僕が飲む必要は…」
聞き捨てならない新情報にこれまでの苦悶が何だったのかと思ってしまう。
「……飲んだ方が即効性がある……私はダンジョンには行けないし自分を鑑定することは出来ない」
「そうなんですね…次のポーションを下さい!」
学生証カードを見れば良いのではと思ったが、悲しそうなカレンさんの顔を見ると言葉にできず、空気を変えるべく次のポーションを見繕ってもらう。
「…………じゃあこれ」
「はい!」
濃い緑色のポーションを一気に飲み込む。
ゴクッ
「何だか擽ったいような」
「……マナポーションだった」
表情変化や表現が乏しいカランさんだが今回はどこかつまらなそうな、悪戯が失敗した子供のような表情をした。
「何でつまらなそうなんですか!?」
「ノーラの……反応面白い」
「面白がらないでくださいよ!」
「……ふふ」
カレンさんが初めて笑ってくれた、表情の、変化は殆どないが確かに笑ってくれた、少し仲良くなれたような、会った時に感じた壁のようなものが薄らいだようだ。
「それで次は」
「今日は……これくらいで終わり」
「ハァハァ…疲れた」
体の節々に痛みが残り倦怠感に襲われる。
窓の外を見ると空は夕日が沈みかけ時刻が夕日であると知らせてくれている、ポーションの人体実験が始まったお昼ごろそんなに時間が経ったのかと考えふける。
残念ながら木箱にはまだまだ謎のポーションが残っている。
「ノーラ……今日はありがとう」
「いえ僕も良い経験ができました、ありがとうございます」
「まだポーションが残ってる……だからまた来て」
「はいもちろんです!」
「……うん」
「あっそれで回復ポーションと解毒ポーションを買いたいんですけど」
「はい……これ」
回復ポーション3本と解毒ポーション1本を手渡してくれる。
「ありがとうございます、おいくらですか?」
「7500P」
「7500Pですね」
学生証カードを重ね支払いをする。
「……初めて冒険者に、ポーションを買ってもらった」
「初めて?」
「いつもは……薬師ギルドに買い取ってもらう」
「そうだったんですね、僕も初めてポーションを買ったので初めて同士ですね!」
「!?」
「カレンさん?」
「……ノーラのエッチ」
「はい?」
「……必ずまた来て」
「もちろんです」
「……フフ」
「じゃあありがとうございました、さようなら!」
「……さようなら」




