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第三章 禁書と真実
ロウグ平原から戻った翌日、
レインは街の外れにいた。
古書店、と呼ぶには
あまりにも狭い。
看板もない。
人通りもない。
扉を開けると、
埃の匂いが鼻を刺した。
「……客かい」
奥から、
しわがれた声がする。
「探し物は?」
「植物の……本を」
店主は、
一瞬だけ目を細めた。
「表に出てるのは、
薬草図鑑までだ」
レインは頷き、
それ以上は言わなかった。
沈黙が落ちる。
やがて、
店主は棚の奥へ消えた。
戻ってきた手には、
薄い革表紙の本。
題名はない。
「読むなら、
ここでだけにしな」
ページを開いた瞬間、
胸がざわついた。
描かれていたのは、
見覚えのある葉。
同じ形。
同じ根。
だが、
その下に書かれていた文字は、
震えるほど重かった。
――世界樹幼生。
世界樹は、
最初から巨大ではない。
芽吹きは、
薬草と見分けがつかない。
一定の地脈、
一定の時代、
一定の選択。
それらが揃った時だけ、
世界は次を生む。
最後の一文で、
レインは息を止めた。
――引き抜かれた幼生は、
二度と芽吹かない。
本を閉じる。
指が、
微かに震えていた。
「……本物、か」
店主は答えない。
ただ、
こう言った。
「知ったなら、
もう戻れん」
レインは、
本を棚に戻した。
外に出ると、
空がやけに高かった。




