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俺の靴

作者: 活呑
掲載日:2026/01/16

朝。外はまだ暗い。

こんな時間から会社に向かわなければならない社畜、もとい、勤勉な日本のサラリーマン。

スーツに身を包み、家に帰ってから開けてもないカバンを手に持ち、玄関横にかけてある鏡で身だしなみチェック。


よし、いけなくもない。

変な寝癖もない。

ヒゲの剃り残しもない。


座って靴を履く。

靴?


いつも、帰ったら靴を揃えてから室内にあがる。

そう躾けられてきたから習慣だ。

今日履く靴は、昨日履いたものだ。靴は二足を交互に履くといいですよ、なんて言われるが、一足を履き潰す主義だ。

昨日履いた靴は、当然ある。問題はその隣。


さらに右足の靴が一足ある。


おれ、足三本だっけ?

いや、それなら真ん中の足用の靴があるはずだ。断じて右足ではないはずだ。



これは証明問題か、金の斧銀の斧か、単なるクイズかのどれかだな。

ちょっとだけ迷ったが、両足に、右足用の靴を履く。

左足の靴が、当然のことながら取り残される。


これでいい。帰ってきて何が起こっているか楽しみだ。



こうして、俺は出社した。

左足に靴擦れができた。

人は思ったより、俺の足に興味はないらしい。誰も指摘するものはいなかった。



退社時間。 お待ちかねだ。


いそいそと家にもどり、焦って鍵を開けるのにもたついてしまう。


ドアを開ける。



靴はなかった。俺の左足の靴。


足下を見た。 両方とも右足用の靴だ。




その晩、新しい革靴を買いに出かけた。





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