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初めてできた彼女をNTRされた。その後普通に生きてただけなのにざまぁが成立した。  作者: 猫野 ジム


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第5話 その明るさがありがたい

「それではこちらにプロフィールをご記入ください」


「分かりました」


 俺と歳があまり変わらなさそうな受付嬢から渡されたのは、一枚の紙。といっても履歴書のような本格的なものではなく名前や年齢、それと簡単な経歴や特技を書くだけのもの。


 俺はスラスラとこの世界の文字で記入欄を埋め尽くしていく。もちろんこの世界の学校に通ったことはないけど、書いた日本語がすぐさまスッと変換されていく。


 異世界の言葉や文字が分かること。もはやこれはチートではなく転生の標準装備なのかもしれない。


 それはそれとして、年齢のところに『20歳』と書ける喜び……! 


 例えば病院などで年齢を書く機会があるとその度に、改めて自分の歳を自覚させられる。「ああ……、ついに俺も30になったんだな」と。やっぱり29と30って全然違う気がするから不思議だ。


 そして40になった時、俺はいったいどんな気持ちになるのだろう。幸せでいられるだろうか。


「これで大丈夫ですか?」


「拝見します。……キョウマさん、ですね。すごい、Cランク冒険者ですか」


「はい、一応」


「一応、ですか?」


「実はもう冒険者としての活動は、登録取り消しにならない程度の最低限にしようと思ってます」


「えっ、もったいない」


「そうですね、確かに俺自身そう思う部分もあります」


「あっ……、ごめんなさい。何も事情を知らないのに私ったら」


 受付嬢はそう言いながら両手を口に当てた。何かマズイことを言ってしまったという気持ちの表れだろうか。


「いえいえ、大丈夫ですよ」


「でもCランクになるには三年はかかると言われていますよね。キョウマさんはまだ20歳なのにすごいと思います」


「ありがとうございます。でも運が良かっただけというか、自分ではこれ以上の成長は望めないと思ってます」


「そうなんですか。きっとそれはご本人にしか分からない感覚なのでしょうね」


「冒険者から別の職業に就く人ってあまりいませんか?」


「そんなことはないですよ。自分の命の責任は全て自分で持つ厳しい業界だと言われていますからね。合わないと感じて転職する方もよくいらっしゃいますから」


 確かにそれはその通りだった。冒険者は自分の命の行方ですら自己責任ということで片付いてしまう。


 どんな依頼を受けるのか、どのダンジョンを探索するのか、どの魔物を討伐するのか等、全てを決めるのは自分自身だから、他人のせいにすることはできない。


 それに加えて、俺には身をもって得た教訓がある。それは『誰と行動を共にするか』ということ。人を見る目と言い換えてもいい。


 日本にいた時の俺はそこに慎重になりすぎたばかりに、あと一歩が踏み出せずにいた。仲良くなるにはコミュニケーションをとるしかないというのに。

 きっとそのことも一度も彼女ができなかったことに関係しているのだろう。


「あら? キョウマさん、アイテム鑑定のスキルがあるんですね」


「はい。Cランクになって早い段階で習得しました」


「すごいじゃないですか! 鑑定系のスキルといえばレアスキルですよ」


 さっきまでの粛々とした雰囲気はどこへやら、受付嬢はそう言いながらカウンター越しにググッと顔を近付けてきた。


「そ、そうみたいですね。それにしてもさっきから凄く褒めてくれますね」


「それはそうですよー。誰がなんと言おうとも、すごいものはすごいんです。あ、だからアイテムショップでの就職をご希望なんですね」


「そうなんです。それに鑑定スキルに頼らなくても冒険者としての知識があるので、今の自分にピッタリかなと思いました」


「そうですね。得意なことを仕事にできればいいですよね。……あっ、一つ質問いいですか?」


「どうぞ」


「国選パーティーは目指さないんですか?」


「国選パーティーですか」


 国選パーティーとはその名の通り、国が選ぶ冒険者パーティーのこと。もちろん俺だって知っている。


 通常の冒険者パーティーは個人が自由に人選をするのに対して、国選パーティーは国が定める厳しい試験を突破した者だけがなることができる。


 しかしその合格率は数パーセントだと言われている、とても狭き門。

 だがもし合格することができれば、地位や名声を得られるだけでなく、生活レベルだってグンと上がることだろう。


「俺はCランクですからね、厳しいと思いますよ」


「いえいえ、そんなことないですよー。国選パーティーに冒険者ランクは関係ないと言われていますからね。過去には実際Fランクの合格者も出ていますから」


「そうみたいですね」


「だからっ! 単純な戦闘能力だけで選ばれるわけじゃないってことだと思いますっ!」


 そう言ってまたも前のめりになる受付の女の子。明るいというか屈託がないというか、なんだか一瞬で印象が覆った。

 だけど今の俺にはその明るさがとてもありがたかった。


「分かりましたから、とりあえず落ち着いて……」


「あっ……! ご、ごめんなさい。えーっと、面接の日時の調整をしますね。しばらくお待ちください」


 そして待つこと五分。


「はい、明日の午後一時に決まりました。当日はこの紹介状を持って行ってくださいね」


「ありがとうございます」



 そして翌日になり、そのアイテムショップへ向かうことに。


(確か店主の名前はラインゴットさんだったな)


 求人票からの情報によると、31歳の男性ということらしい。


 王都からは少し離れた場所にあるそのショップに到着した俺は、玄関ドアのそばにあるチャイムを鳴らした。

 やがてガチャという音と共にドアが開き、中から一人の若い女性が姿を現した。


「キョウマさんですね。お待ちしておりました」


 想定外だった俺は咄嗟(とっさ)に身構えた。

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