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初めてできた彼女をNTRされた。その後普通に生きてただけなのにざまぁが成立した。  作者: 猫野 ジム


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第37話 だがそれでいい

 俺は日本に住んでいたから、城といえば戦国時代に建てられたようなものを連想する。

 だがこの世界の城といえば、それこそヨーロッパにあるようなものであり、その中の広さは普通に迷子になってもおかしくないほどだ。


 大人だって迷子になる時はある。というか、俺はなった。日本で言うとホテルとかで「自分の部屋どっちにあるんだっけ?」という感覚に似ている。……もしかして俺だけかな?


 玉座の間をはじめ、その部屋数は計り知れない。個室の他にも食堂や会議室、それに教会や訓練場など、最新の技術が使われており内装だってとても綺麗だ。


 そんな中でもそれらの場所とは明らかに違う、異質な空気感のエリアがある。

 そこへと続く鉄の扉の横では二人の騎士が見張りをしており、扉には鍵がかかっている。


「見張りお疲れ様です。今日からしばらく中での仕事をすることになりました」


「キョウマさんですね、お疲れ様です。話は聞いてますよ。すでに他の担当者も何人か入って行きました」


 俺はそうあいさつをして身分証を見せ、扉を開けてもらった。

 扉の向こうには地下へと続く階段があり、螺旋状になっているそこをただひたすらに降り続ける。


 果たして何段あるのか数えるのも嫌になるほど降りた先で、ようやく担当者達の詰所が見えてきた。中にいるのは20代から40代くらいの男性が数人だが、一人だけ白髪の男性がいる。


「お疲れ様です。今日からしばらくの間よろしくお願いします」


 俺があいさつをすると全員が返してくれ、40代くらいのリーダーから業務内容の説明があった。


 ここは城の地下にある牢獄で、まだ取り調べが終わっていない被疑者達の居場所。


 俺は前世から警察のご厄介になったことは一度もないので詳しくはないが、日本とこの世界では多少の流れの違いというものはあるかもしれない。

 そんなことありえないと思うようなことでも、それが間違っているとは限らない。なぜならここは日本とは違う世界なのだから。


 当然ながらこのエリアは24時間体制なので担当者達の交代制となる。


「分かりました。俺はこっちのエリアの見回りですね」


「ああ。よろしく頼む」


「はい」


「それとちょっと待ってくれ」


 見回りに行こうとすると、リーダーから呼び止められた。

 そしてリーダーから言われたのは、ここにいる白髪の男性と一緒に行ってほしいということだった。


「分かりました。よろしくお願いします」


「こちらこそ。すまないね、こんな老人と一緒で。頑張ってついて行くよ」


「いえ、そんな。謝らなくて大丈夫ですよ」


 それからお互いに簡単な自己紹介をして見回りを始めることに。この男性は72歳だそうだ。もうその時点で尊敬できる。


 この牢獄はかなり広いためいくつかのエリアに分けられているが、番号が書かれたプレートが壁に貼られており視覚的に分かりやすくなっている。


 ここは不気味なほど静かな空間で、歩くと足音が響き渡る。普通に歩くだけでもこうなのに、走ったとしたらとても目立つことだろう。もしかすると脱走対策の一つなのかもしれない。


 しばらく進むと牢が見えてきた。中には一人ずつ入っているようだ。牢の正面は壁になっており、中にいる者からすればまるで周りに誰もいないように思えて孤独を感じるだろう。


 俺達が牢の前を通った時の、中にいる者達の反応は実に様々。「ここから出せ!」と怒鳴る者もいれば、罵倒してくる者もいる。かと思えばただ静かに体育座りをして下を向いたままの者もいる。


 それぞれがどんな経緯でここにいるのかは知らない。だけどそれが何であろうとも俺はここにいる以上、感情を表すわけにはいかないんだ。たとえそれが同情であるとしても。


「キョウマさん、あなたは優しい人だ」


「突然どうしました?」


「歩く速度が私と一緒になるよう常に気を配ってくれている。それでいて急かさずイライラしている様子もない」


 それはとても優しく穏やかな口調だった。


「長く生きているといろんな人と出会う。だからね、短い時間でもその人となりというものがなんとなく分かるようになるものなんだよ」


「そうなんですね。やっぱり俺にはまだまだ人生経験が足りないようです」


「キョウマさんはまだ若い。これからもたくさんの人との出会いがあるだろう。やはり一人で生きていくのはツラいことだ。だから人との縁というものを大切にするんだよ」


「はい。ありがとうございます」


「いかんいかん。どうも説教くさくなってしまった。さて、と。もう少し先に進んだら少し止まってくれるかな」


 そう言われ止まった場所はとある牢の前。中には一人の男性がいるが、そこからは死角になる位置に俺達はいる。


「では私の役目を果たすとしようか。……マジックプリズン!」


 それは奇しくもライネスが俺をダンジョン内に閉じ込めた魔法と同じものだった。


「あの、これは何をしているのでしょうか?」


「私の魔法によって牢の外に出られないようにしているんだよ。この牢は強化魔法がかけられた特別製だ。しかしここにはどんな強者が入るか分からない。だから物理的以外に魔法によってもセキュリティを強くしているんだ。さっきかけたのは触れた者を弾き返す魔法だよ」


「俺もその魔法の効果は知ってます。でも有効時間は三十分もないはずですよね」


「使用者の素質や魔力量によって変わる魔法なんだよ。私が使うと一週間ほど効果が続くかな」


「一週間! 凄い! でもずっと続くわけじゃないから、効果が切れそうになる度にここに来てるというわけですね」


「そういうことだよ。でも私のは持続時間が長いだけで、人によっては簡単に打ち消されてしまう。これはそういう魔法だからね」


「それでも凄いですよ。唯一無二ということですから」


「ありがとう。私のような老人でもまだ人様の役に立つことができるのは、とても嬉しいことだよ」


 それからさらに一つずつの牢に魔法をかけていき、とある牢の前に出た。


「キョウマ……っ! てめえ! このままですむと思うなよ!」


「ライネス……!」


 そこでは冒険者だった頃とは違い、全ての武器防具を外されたライネスが俺に向けて叫んでいた。


「ここから出たら絶対にお前を見つけ出してやる! 俺から逃げられると思うなよ……!」


「お前がこれからほんの一瞬でも自由の身になれるなんて本気で思ってるのか?」


 それからもライネスは俺に向けてとにかく吠えた。だがそれでいい。万が一にも俺が同情なんてしないように。


 それからライネスがいる牢にも魔法がかけられ、この日の仕事が終わった。



 そして翌日。詰所に出勤するとリーダーからライネスがいる牢の前へ行くよう言われたので、真っ先に向かう。


 するとそこにはすでに数人が集まり、中にいるライネスの様子が昨日とは打って変わって大人しくなっていた。

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