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初めてできた彼女をNTRされた。その後普通に生きてただけなのにざまぁが成立した。  作者: 猫野 ジム


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第31話 決して笑わない

「ラインゴットさん、この人どうしましょうか? 気を失ってるみたいですけど」


「召喚魔法を使う前の言動がなんだかおかしくなかったか? それが気になるな」


「俺も思いました。まだ質問する前だったのに、盗んでないとか言ってましたよね」


「ああ。それに何かに怯えてるように見えたな」


「もしかして誰かに命令されていたのでしょうか?」


「どうだろうな。とりあえず国家騎士団を呼んで事情を説明するか。ここで待っててくれ」


 国家騎士団とは日本における警察と同じような役割を持つ組織のことだ。


 そして待つこと数分。ラインゴットさんが数人の若い騎士と一人の若い女性ヒーラーを連れて戻って来た。


 ヒーラーの女性は仰向けに倒れている男の横に座り、何やら手をかざし始めた。

 おそらく診察のようなことをしているのだろう。俺達を含めたこの場にいる全員が見守っている。


「どうやらこの方は重度の魔力欠乏症になっているようですね。自分の魔力量の限界を遥かに超えて魔法を使い続けたことによるものと思われます。相当な無茶をしたのでしょう」


「なるほどな。ということはキョウマの言う通り誰かに命令されて仕方なくってのは間違ってないのかもな」


「この人は元気になりそうですか?」


「そうですね。これほどとなると一ヶ月単位での治療になるかもしれませんが、命に別状はありませんよ。ただ直近の記憶の混乱や欠如といったことはあるかもしれません」


「それはよかったですけど、しばらく寝たきりになったりするんでしょうか?」


「しばらくは入院になるでしょうけど、その期間が終われば定期的な通院だけで大丈夫です。日常生活に支障はありません」


 それを聞いて安心した。もしかすると何かやむを得ない事情があるのかもしれないし、この人自身は悪人ではないのかもしれない。

 とはいえ万引き犯の可能性が高く、そこについては許そうとは思わない。


 騎士達が担架のようなものでこの男性を運び出す。ヒーラーの女性もそれについて行き、ここには俺達と一人の騎士が残った。


「お二人には詳しい経緯を聞かせてもらいます。ここから一番近い騎士団の詰所までお越しくださいますか?」


「了解だ。客観的に見ると俺達が一番怪しいよな。だから説明ならいくらでもするぞ」


 それからは二人で騎士団の詰所に行き、事の経緯をできるだけ詳しく説明した。


 魔力欠乏症というものは他人からの干渉でなるものではなく、あくまで自らの魔力の使い方によるものとのこと。


 なので少なくとも俺やラインゴットさんが意図的にそうさせたという可能性は極めて低いと判断されたようだ。あとは騎士団に任せよう。



 そして店に戻った頃には夕方になっていた。俺達がいない間はスフィアさん一人しかいなかったため、いつもより早く閉店したとのことで、俺はラインゴットさんの家で夕食をいただくことに。


 テーブルの上にはパンにサラダにスープ、それに唐揚げが並べられている。この世界にも畜産という文化はあるので、魔物の肉とかそんなものは食べない。


「それにしてもラインゴットさん、めちゃくちゃ強いですね。知りませんでした」


「俺も冒険者をやってた時があったってだけさ。すまん、別に隠すつもりはなかったんだが」


「大丈夫です。俺も映像記録スキルのことを伝える機会がなくて黙ってたみたいになってましたから。俺のコミュニケーション不足だと思います」


「あら、キョウマさんは悪くないのよ。人の過去の話を聞くのはなんだか気が引けるから、なかなか聞けないものよね」


「お気遣いありがとうございます」


「そういうキョウマだって凄かったじゃないか。正直言ってあの場にキョウマがいなかったら俺はかなり苦戦してたはずだ」


 その言葉に「ありがとうございます」と返すと、ラインゴットさんは少しだけ真剣な表情になった。


「なぁキョウマ、やっぱり来年の試験を受けるのか?」


「はい。自分にしかできないことがあるのなら、そしてそれをより活かせる場所があるのなら、そこを目指したいです。なのでもし合格することができたら、ここでは働けなくなってしまいます。でもこれだけ言って落ちたらどうぞ笑ってやってください!」


「笑わねぇよ。自分で目標を決めてひたむきにそこを目指して頑張る奴を誰が笑うっていうんだ。少なくとも俺とスフィアは決して笑わない」


「その通りよ。キョウマさん、私達のことは気にしなくて大丈夫だからね。もし私達に何かできることがあれば遠慮なく言ってくださいね」


 最後のほうは冗談のつもりだったんだけど、ラインゴットさんとスフィアさんは真剣な眼差しで俺を見つめていた。



 それからはまたいつもの日常に戻り、アイテムショップ店員として働く日々。

 先日の件があってからは万引きの被害は出ていない。そうなるとやはりあの男性魔法使いの仕業という可能性がグンと高くなる。


「店員さーん、これください」


「かしこまりました、ティアさん」


 ティアさんは時々こうして足を運んでくれる。もうそれはちょっとした楽しみになっていた。


「どんな依頼を受けたんですか?」


「ごく普通の魔物討伐依頼だよ。多分これがここでの最後の活動になるかな」


「最後?」


「うん。この依頼が終わったらこの街を出ようかなって思ってるんだ」

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