第3話 いずれざまぁされる者達の勘違い
キョウマをダンジョン内に閉じ込めてから数時間後、ミリーとライネスは自身が泊まっている宿のロビーにいた。
「そろそろ頃合いだな」
「そうね」
まるで何かを待っていたかのような口ぶりで話す二人は、不敵な笑みを浮かべながら宿を出た。
そしてやって来たのはキョウマを置き去りにしたCランクダンジョン。
「ミリー、キョウマの奴どうなってると思う?」
「そうね、まず生きてはいないだろうから、あとは何か身元が分かるものが残っているかどうかね」
「ま、一番いいのは冒険者カードだな」
とても笑えるような内容ではないが、二人は楽しそうに話す。
そうしているうちに、とある部屋の前にたどり着いた。そこは二人がキョウマを閉じ込めた場所。
「ここだな。魔法の効果は切れてるようだが、あの数の高ランクの魔物を相手にCランクのあいつが敵うわけないからな」
「でもそれってキョウマが言ってただけで、私は見たわけじゃないのよね」
「心配するな。俺の【気配察知】スキルで確認したからな。さすがに種類までは特定できないが、あの時は高ランクの魔物が大量にいたことは間違いない」
「それなら安心ね。さあ中に入りましょう」
そう言ったミリーだが部屋の中は真っ暗で、何も見えないであろうことは容易に想像できる。
「そういえばあの時キョウマはサーチスキルを使っていたのよね」
「チッ……! 俺達はアイテムを使うしかないってのによ!」
「仕方ないわよ。使えるスキルは人それぞれなんだから。ま、それが使えても戦闘で役に立たないんじゃダメよね」
そう言って二人はアイテムを使い部屋の中に入り、様子を確認するかのように見回す。
そこは不揃いな岩だけで作られたような、どこか無機質で不気味さを感じさせる場所。
「何もないわね。それにとても静か」
「そんなの当たり前じゃねえか。それよりも早く探すぞ」
俯いて歩く二人。しきりに左右に首を動かしている様子を見る限り、何かを探しているのだろうか。
「何も無いわね」
「チッ……! 装備品ひとつすら落ちてねえとはな!」
「まさか脱出したの……?」
「そんなワケあるかよ。この部屋を見ろ、出入り口はここだけだ。それにあの時は俺の魔法で封鎖していたんだぞ。Cランクのあいつにそれを打ち破る力は無いはずだ。それにもし他の奴らがいたとしても、俺はAランクだ。そう簡単に破られるもんじゃない」
「そうね。魔力ならキョウマよりも私のほうが強いわ。それでもライネスが本気になれば私でもとても敵わない」
「そうなると、あと考えられるのはスライム系の魔物が混ざっていたことくらいか」
「確かスライムは何でも中に取り込んで溶かすのよね」
「ああ。それにキングスライムくらいの高ランクになると、人ひとりくらいは余裕だろう」
「あーあ、身元が分かる物どころか装備品すら残ってないなんて。結構いい値段で売れると思ってたのになー」
「まあいいじゃねえか。これでミリーはあいつと完全に別れたってことになるんだからよ」
「そうね、キョウマだってもう少し強ければ長生きできたのにね」
二人はそんな会話をしながらダンジョンをあとにした。
【キョウマ視点・ティアと別れた直後】
ティアさんと別れた俺はこの街を出ることにした。ここにいる限りどうしてもミリーのことが頭の中をチラついてしまうから。
転生してからまだ一年経ってないけど、俺にとってミリーと過ごした時間は本当に楽しくて輝いていた。
だったらミリーはどう思っていたのだろうか? そんな今となっては確かめようがないことを考えてしまうんだ。
冒険者ギルドに行って命を狙われたことを告発しようかとも思ったけど、証拠が無い。
俺には『映像記録』という珍しいスキルがあるが、それは魔物との戦闘を記録しておいて、後から立ち回り方を研究するというような使い方をするもの。
だから基本的に必要な場面以外では発動させていない。
なぜならスキルの発動は結構な体力を消耗するからだ。それを常時発動するとなれば、相当な体力と熟練度が必要になる。
(でも映像記録を使ってなかった一番の理由は、まさかあんなことになるとは思っていなかったから……だろうな)
異世界とはいえ、法律関係のことは日本とさほど変わらない。数えきれないほど多くの人が生活していく以上、法律というものができるのは自然なことなのだろう。
もっとも、ここには『冒険者法』という異世界ならではの法律もあるけど。
冒険者は他の人と比べて戦闘能力が高く、簡単に人や物に危害を加えることができてしまう。だから通常の法律とは別に制定されたとのことで、刑罰も相当に重いものになるそうだ。
そしてそれは冒険者による犯罪の抑止力にもなっている。これだけを聞くと冒険者が不遇な扱いをされているようだが、そもそも人や物に危害を加えてはいけないなんてことは、冒険者だけに限らず当たり前のことだ。
そして俺がやって来たのは乗り合い馬車の定期便乗り場。この世界に来たばかりの頃、主な移動手段が本当に馬車だということに驚いたのをよく覚えている。異世界もの作品は正解を書いていた。
(あの頃に戻りたい……)
ついそんな考えが浮かんでしまう。そんなことできるわけがないのに。




