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初めてできた彼女をNTRされた。その後普通に生きてただけなのにざまぁが成立した。  作者: 猫野 ジム


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第27話 終わってなどいなかった

 部屋で過ごす自分の姿を見たことがある人は、果たしてどのくらいいるのだろうか? 

 マジックレコーダーで初めて部屋全体を客観視してみると、なんだか寂しい映像に見えた。


 正直に告白すると日本で一人暮らしをしていた時に、「自分が結婚したらどんな感じだろう?」と、想像したことはある。


 だけど気が付けば30歳になっていた。何もしなくても腹は減るし、時は流れる。この世界に転生した俺は、もう二度と前世のように時間を無駄にはしないと決めたんだ。



 翌日。いつものように出勤した俺は品出し中のラインゴットさんにマジックレコーダーを見せた。


「おお! これか! 高かったんじゃないのか?」


「いえ、中に込める魔力は俺が映像記録のスキルで作り出したので超格安です」


「マジかよ……! やべぇな!」


 これはラインゴットさんなりの褒め言葉だ。


「なぁキョウマ、もしかしてこれを売りまくればとんでもない利益になるんじゃないか?」


「確かにそうですね。魔力を込めるのは俺だから、一つ作るのにかかるコストは実質この入れ物の料金だけということになりますね」


 これがもしラノベの成り上がりものだったら、これを売りまくり莫大な利益を得て、それを元手にさらなる商売を始めるといった感じだろうか。


「でも俺は大金持ちになりたいとは思ってません。もちろんお金はあるに越したことはないですけど、贅沢しなくても幸せになれると思うんです。それにもし俺が大金持ちになっても、ここで働いていたいなと思います」


「ありがとな! 確かに俺は贅沢な暮らしをしてるわけじゃないが、十分に幸せだぜ!」


 そして俺はマジックレコーダーをレジカウンターの上に置いた。


「こうして見るとめちゃくちゃ小さいな。注意してないとすぐになくしそうだ。で、どうやって使えばいい?」


「手のひらの上に乗せて、そのままふわっと浮かせるようにして押し上げるイメージで、少しだけ手の位置を上げてみてください。それが起動の合図になります」


「こうか?」


 するとマジックレコーダーはぐんぐんと上昇していき、あっという間に高い天井へとたどり着いた。


「もうあんなとこまで行っちまった。なるほどなー、これは分かんねえわ。そもそも天井を見上げるなんてことがほとんどないからな。アレがあるって知ってないと、まず気付かない」


 二人で天井を見上げながら会話する。


「なぁ、これって今は何を記録してるんだ?」


「自動的に位置取りをして、今はラインゴットさんが常に中心にくるように記録してます。起動させた人を追尾するんですよ」


「おいおい、ずっと俺を記録してても仕方ないだろう。俺は自分の店の商品を盗んだりしないぞ」


「心配ないですよ。スイッチが付いていて、それの切り替えで対象とする範囲を変えることができます」


「よし、早速試してみるか。……降りてこねえな。どうすればいいんだ?」


「さっきみたいに手のひらを上に向けて、しばらくそのままにしてみてください」


「こうか?」


 するとマジックレコーダーがスーッと滑らかにラインゴットさんの手のひらに着陸した。


「なんだかよくしつけられた犬みたいだな……」


「起動させた人の魔力を感知しているそうですよ」


「俺も割と長くこの店をやってるが、まだまだよく知らないアイテムがあるもんだ。キョウマはダンジョンでこれを使って研究してたんだな」


「それがですね、ダンジョンによっては起動しなかったりするんですよ」


「あぁー、確かにそれはあるかもな。他にも魔法の効果が弱くなったり徐々に鉄が錆びていったり、いろんなことが起こるダンジョンもあるからな。で、このスイッチを押すとどうなる?」


「記録の対象が部屋全体になりますが、その代わり画面が固定されます。スキルが進化すると中継できるようになったりするみたいですけど、今の俺にはできません」


「まぁスキルの進化条件ってのは何種類かあるって言われてるからな。熟練度だったり単純に使用回数だったり、想いの強さって説もある」


 国選パーティーとの合同探索の時に、俺の【アイテム鑑定】が進化して、【魔物鑑定】もできるようになった。でもその理由は不明なままだ。


 あの時はとにかく俺にできることは何かないかと必死に探していた。だから今のところは想いの強さ説が有力だろうか?


「キョウマ、ありがとな。早速今日テスト導入してみるか」


 そして閉店後に売り場の奥にある部屋で、記録した映像を確認してみることにした。


(まずはマジックレコーダーを対象として捉え、手をかざし、そこから魔力を吸い上げるようにして……)


 かざした右手に温かさを感じる。実は魔力というものは、ほんのりと温かい。体内に流れているものだからなのか、それとも元からそういう物質なのか。いずれにせよ前世では体験できないことだ。


(それから手を軽く握り込み、そして放つ!)


 すると何も無い空間なのにまるでプロジェクターのように、売り場全体の映像が流れた。あとは楽にして観ればいい。


「マジか! こんなの初めて見たぞ! スゲェな!」


 想像以上に驚くラインゴットさん。まるで異世界もの作品に出てくるような、主人公のチートスキルを見て驚く現地の人みたいな反応だ。


 マジックレコーダーも前世にあるレコーダーのように、早送りや巻き戻しなどができる。


「おいおい、スゲェな! 俺の店、こんなにお客さんが来てくれてるのか! 売り場全体なんて初めて見たぜ」


(素直に喜んでくれるのって嬉しい……!)


 異世界もの主人公が現地の人達から神のような扱いになる理由が、なんだか分かるような気がするなー。


 結局この日は特に怪しいところは無かった。まだ初日だし、こういうこともあるだろう。

 それ以前に何も起こらないに越したことはないけど。



 そして帰宅した俺はマジックレコーダーを量産することにした。一台でもめちゃくちゃ疲れるから寝る前にしかできない。


 ところが異変が起きた。昨日は一台作るだけでも息切れしていたが、今日はまだまだ余裕がある。そこから導き出される結論といえば——。


(本当にスキルが進化した……!)


 今回の進化に名前をつけるなら、『消費体力ダウン』といったところだろうか。


 俺の成長は終わってなどいなかった。

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