第26話 改めて自分を観てみると
【映像記録】のレアスキル。それは【アイテム鑑定】と並んで、俺が冒険者としての実力の限界を思い知る直前に習得したスキル。
それは直接的には戦闘の役に立たず、その時の映像を魔道具に記録させて、味方や敵の行動パターンを後から分析して次に活かすために使うようなものだ。
そのスキルを使うと、俺と魔物の戦闘の様子を魔道具に自動録画してくれる。だから常に誰かがビデオカメラやスマホを構えている必要はない。
(そういえばミリーに嫌われたくなくて一人で必死に研究してたっけ……)
あの頃は確かにそんな思いがミリーへ向けられていた。そしてそれはずっと消えることはないものだと信じて。
「ラインゴットさん、実は俺には鑑定の他にもう一つレアスキルがあるんです」
「マジか! レアスキル持ちってだけでもスゲェのに」
「すみません、隠すつもりはなかったんですけど、出番はなさそうだなと思ってたのでお話しするタイミングがなかったんです」
「それはちゃんと分かってるって! それに俺だってキョウマと仕事するようになってまだ間もないが、キョウマが悪い人間じゃないってことは分かるぜ。そのレアスキルの話、聞かせてもらえるか?」
「はい! ありがとうございます!」
「仕事終わりで疲れてるところ悪いな。ちょっとだけ待っててくれ」
ラインゴットさんはそう言ってから立ち上がり、しばらくしてテーブルの上に湯気の立つティーカップを二つ置いたのを見て俺は一礼した。
「俺が持つ鑑定以外のレアスキルというのは映像記録のことなんです」
「おいおいマジか。それはまたとんでもないスキルじゃねえか」
「そうみたいですね」
「そうみたいですねって、そんな他人事みたいに……。まぁキョウマらしいと言えばそうだが」
「もちろん俺だってレアスキルだってことは把握してました。だけど使い所が難しいというか何というか、どう役に立てればいいんだろうと思っていたんです」
「それはあれだろ、魔物とのバトルを記録しておくんじゃないのか?」
「はい。実際に俺もそんな使い方をしていました。だけどここで働かせてもらうようになってからはそんな必要がなくなったので、このスキルのことを考えることがなかったんです」
「なるほどな。冒険者として頻繁に活動してるならまだしも、アイテムショップ店員には関係ないと思うのは無理もないことかもしれないな」
「さっきまでは俺もそう思ってましたが、関係大アリでした。ホントにどうして気が付かなかったんだろう」
「まさかとは思ったがそこまで言ってもらえればさすがに俺だって分かるぞ」
「はい。マジックレコーダーを導入しましょう」
マジックレコーダーとは映像を記録するための魔道具で、小型ドローンのように空を飛ばせることができる。
そして後から何もない空間にプロジェクターのようにして映像を映し出すという使い方。
特徴はその大きさで、わずか数センチほど。そんなものが離れた場所で飛んでいるとしても、よほど注意していない限りまず気付くことはないだろう。
「マジックレコーダーだよな? 確かに導入するべきかどうか悩んでたんだよ。でもさっきも言ったがそれってお客さんの全員を疑うってことだからなぁ。それに現実問題としてコストがかかりすぎる」
ラインゴットさんの言う通り、マジックレコーダーはとても高価なアイテムだ。正確にはそれ自体ではなく、その中身。
マジックレコーダーを使えるようにするためには、【映像記録】のスキルのために練られた魔力をその中に封じ込める必要がある。
それは例えるなら、マジックレコーダーを鍵穴とした場合、スキルで練られた魔力という鍵じゃないと適合できないといった感じだ。
そしてそこが一番肝心なところで、その魔力は【映像記録】スキル持ちの人じゃないと作り出せないという点。
レアスキルはその名の通り希少なため、使える人が少ない。だから値段も上がる。一台でこの国の一般的な給料の10分の1ほどが吹き飛ぶくらい。
しかも使ってるうちに魔力がどんどん減っていくため、一台で12時間分しかもたない使い捨てのアイテム。
だからそんなものをホイホイと簡単に使い続けるのは莫大なコストがかかる。仮に冒険者であっても気軽に買える代物ではない。Cランク以下なら尚更だ。
だったら俺はどうしていたかというと、魔力が込められる前の物を買って自分で魔力を封じ込めていた。魔力のない形だけの物なら格安になるからだ。
これも例えるなら、何も記録されてないブルーレイディスクなら安いけど、アニメなどの制作会社から公式販売されると値段が跳ね上がる。そんな感じ。その場合のアニメや特典にあたるのが【映像記録】の魔力というわけだ。
しかも売ってるところは王都にですら一つしかなく、城の御用達にもなっている店。だけどまだ一般客でも買えるだけいいのかも。
「コストのことなら心配いりません。俺がスキルで魔力を封じ込めますから。それに俺がやりたくてやってみるだけなので」
「それは助かるが、いいのか? スキルを使うと体力を削られるぞ。それがレアスキルなら尚更だ」
「大丈夫ですよ。これでも体力づくりは続けてますから」
「そうか。それなら世話になってみるかな。だがまずは実際に見てみたい」
「分かりました。明日にでも持って来ます」
それから俺は王都にある店で空のマジックレコーダーを一台買って帰り、部屋にあるテーブルに置いた。
(久しぶりだけど上手くできるかな?)
目を閉じ意識を集中させる。【鑑定】と同じようにマジックレコーダーを対象として捉え、さらに両手のひらをかざす。
そしてそこから対象物に向かって体内から魔力を注ぎ込むイメージで——。
すると十数秒ほどで全身を疲労感が襲った。それはつまり成功したということ。
(こんなに……、疲れたっけ……?)
その場から一歩も動いてないのに一瞬で息切れを起こす。もしも今周りに人がいたら心配して救急車を呼んでくれそうな気さえもする。
(このスキルも進化したりして?)
それと同時にそんな期待もあった。そして試しにこの部屋を記録してみることに。
それから再生してみると、そこにはごく普通の部屋で一人くつろぐ自分の姿があり、それを観た俺はこう思った。「やっぱり一人は寂しいものだな」と。




