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初めてできた彼女をNTRされた。その後普通に生きてただけなのにざまぁが成立した。  作者: 猫野 ジム


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第24話 かける言葉はきっとこれ以外にない

 国選パーティーのリーダーであるカイルさんと王都で話してから、一週間ほどが過ぎた。


 新しく現れたダンジョンの合同探索に参加したことで、この世界には冒険者という職業が必要なんだということを改めて実感したんだ。


 でも今の俺の仕事はアイテムショップ店員。ラインゴットさんとスフィアさん夫婦の二人だけで経営していたけど、スフィアさんの妊娠を機に人材募集をしていたところに俺が応募した。


 一期一会という言葉があるけど、本当にその通りだなと思う。どんな人と出会うかで人生が大きく変わることだってあるだろう。

 この世界での人生の目標はできたけど、今はまだこの『普通の生活』を続けていたいと心から思っている。


 合同探索が終わり客足が落ち着いたとはいえ、店内では商品を選んでいる何人もの冒険者達の姿がある。それもそのはず、この店の商品はどれも安い。

 それは傷付いたり命を落とす人が一人でも少なくなりますようにという、ラインゴットさん達の願いによるもの。


「すみませーん、これくださーい!」


 いつものようにレジに立っていると、一人の女性が買い物かごを置いた。見た感じ高校生くらいで、装備してるものから推測すると駆け出し冒険者だろう。


「かしこまりました」


(えーっと、回復ポーションと解毒剤とアイスボムと、あとは……)


「あーっ! やっと会えたー!」


 かごの中にあるアイテムの種類と数を確認していると、不意にそんな大きな声が聞こえた。どうやらこのお客さんの声のようだ。


「ねぇ店員さん、私のこと覚えてますか?」


 俺はこの女性に見覚えがあった。それはもう半月ほど前になるだろうか。あの日もレジにいた俺に、「初めてダンジョンに潜るけどアイテムは何を持って行けばいいでしょうか?」と質問してきたんだ。


 そう聞かれた俺は丁寧に答え、最後に彼女はこう言ってくれた。「また来ますね!」と。

 俺はその時、その言葉がどうか実現しますようにと願わずにはいられなかった。


 そして今、彼女が目の前にいる。


「おーい、店員さーん、聞こえてますかー? もしもーし? ……ってええぇ!? お兄さんどうしたの!?」


 どうしたのって言われても、なぜこの子が慌て始めたのか全く見当がつかない。


「えっ……と、俺、どこかおかしいでしょうか?」


「だってお兄さんがいきなり泣き出したから私ビックリしちゃいました」


「俺が、泣いてる……?」


 そんなまさかと思ったが俺の視界は(にじ)んでいた。


「あれ……? どうしてだろう……?」


 俺はまたもや少し前のことを思い出した。それは俺のために涙を流してくれた、ギルドの受付の女性のこと。

 行方不明かと思われていた俺が無事であることが分かり、心から喜んでくれた人。


 そして今度は俺がその立場になり、その気持ちが痛いほど分かる。こうして無事にまた来てくれたことが、こんなにも嬉しいだなんて。


「無事で本当に……っ、よかった……!」


「えっ……と、私? それならほらっ、この通り!」


 そう言って彼女は大げさにアピールする。


 ここは魔物と共存しなければならない厳しい世界。昨日は元気だった人が、今日にはもういないということが起こる世界。


 そんな世界だからこそ、再会できた時の喜びはきっと大きなものになるのだろう。


「い、いやだなぁ……! 私のためにそんな……! あ、あれ? なんだか私まで泣けてきちゃった……。えっと、その、ありがとう……!」


 滲む視界の向こうからは彼女のそんな言葉が聞こえてきた。



 そしてお互いが落ち着いた後、会計をすませた。


「お兄さんのアドバイスのおかげでダンジョンを初攻略できたから、ちょっと前に報告に来たんだ。でもその時レジにいたのはおじさんだったからお兄さんに会えなくて」


「おじさん……?」


 まさかラインゴットさんのことだろうか? ラインゴットさんはまだ31歳なんだけど……。それに俺だって転生前は30歳だったし。


(俺っておじさんだったのか……? いやいや、30は十分若いよ)


 若いっていいなと思いつつ、会話を続けることに。


「冒険者としての活動は順調?」


「はいっ、それはもう!」


「それはよかった。何か分からないことがあれば俺でよければ答えるからね」


「ありがとうございまーす! 遠慮なく頼りますね!」


 元気よく返事をした彼女が会計を済ませた商品を持ち、レジから離れようとしている。

 この時俺がかける言葉は、きっとこれ以外にないだろう。


「またのお越しをお待ちしてます!」


「はいっ! また来ます!」



 そして今日も一日が終わろうとしている。売り場の奥にある部屋ではラインゴットさんが何やら作業をしているようだ。


「お先に失礼します」


「ん? あ、あぁ。もうそんな時間か。お疲れ様」


 いつもは「おう! お疲れ!」と言って笑顔で手を上げてくれるけど、今日はどこか違っていてなんだか歯切れが悪い。


 そういえばラインゴットさんのこんな様子を見るのは初めてかもしれない。

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