第23話 いずれざまぁされる者達は自らざまぁされる
「そこの二人、そこまでだ!」
そんな声を上げながら二人の屈強な男がミリーとライネスのもとへ駆けつけた。この二人はミリーとライネスを監視するために派遣されたギルド職員だ。
「あぁ? なんだお前ら」
「私達はこういう者だ」
そう言って二人それぞれがカードのようなものをライネス達に見せた。
「ギルドの職員証だと……!」
ギルド職員の中にはこの二人のように、冒険者としてダンジョンに潜る役目を担う者がいる。
その目的は調査であったり監視であったり様々だが、一般冒険者の中で職員の顔を知る者はほとんどいない。それ故にいかにAランクのライネスであろうとも気が付かないことだろう。
「そうだ。この目でしっかり見たぞ。そして聞いた。お前達、さっき何をした?」
「何って、こいつらが苦戦してたから加勢してやっただけだ」
ライネスがそう言うとギルド職員は、Cランクパーティーのリーダーであろう青年のほうを向いた。
「君、この冒険者の言うことに間違いはないだろうか?」
「いえ、その人がいきなり出て来て魔物を倒してしまったんです。そして加勢してやったから素材は自分達のものだって言って、剥ぎ取りを始めてしまったんです」
「実際のところ君達は苦戦していたのだろうか?」
「そんなことありません! みんなで力を合わせた結果もう少しで倒せそうでした」
「この青年はこう言っているが?」
「だからそれがそもそも見当違いなんだ! 俺の見立てだとあの魔物はまだ弱ってはいなかった。俺はAランクだ、間違えるわけがねえ!」
「そうか。でもそれはこの話においては関係のないこと。それよりも問題なのはお前達がその後にとった行動のことだ」
「魔物の素材は倒した奴のものになるってのが冒険者の常識だろ? 実際に倒したのは俺だ。だから剥ぎ取りをした。何も問題ないはずだ」
「そんなことはない。お前達は他の冒険者が戦っている最中にも関わらず、いきなり割り込んで素材を手に入れようとしていた。私達も見ていたがこの青年の言う通り、確かにあの魔物は弱っており、あのままいけばすぐに撃破できていただろう」
「もし仮に俺が割り込んだとしてそれが何だっていうんだ。そこのCランク達に危害を加えたわけでもない、何かを強奪したわけでもない、何かを盗んだわけでもない。それが何かの罪になるとでも?」
「確かに罪ではない。しかしお前達は冒険者としてやってはいけないことをした。冒険者という職業は常に自分の命をも危険にさらしてダンジョンを探索し、魔物と戦い、素材を採取する。そしてその全てが自らの糧となるんだ。それは言わば命がけで手に入れたもの。それを何もせず横から奪い去っていくなんてことが許されるはずがない」
「とりあえず六人ともギルドまで来てもらおうか。それぞれの話を聞かせてほしい」
冒険者には冒険者の掟がある。マナーと言えば聞こえはいいが、決して踏み込んではいけない領域というものがあるのだ。
そしてそれを許してしまえば、徐々に秩序というものが失われていってしまう。
それは冒険者という職業だけに限らず、例えば人との距離感においても当てはまるのではないだろうか。
その後ミリーとライネスがどうなったかというと、罪ではないが現行犯のような扱いであることに加えてその悪質性が認められた。
そしてミリーとライネスは三日間、身柄を拘束されることとなり、さらに三ヶ月間の冒険者活動の停止処分が下された。つまり三ヶ月間の無収入となったのだ。
ここはとある宿の一室。ミリーとライネスは酷く苛立った様子で、ライネスに至っては壁を殴りつけている。
「クソッ……! どうして俺がこんな目に!
「だからやめておこうって言ったじゃない!」
「はぁ!? そんなこと一言も言ってなかったじゃねえかよ!」
「だいたいライネスはいつもいつも自分勝手なのよ!」
こうして二人は互いに怒りをぶつけ合うのだった。
完全なる自業自得だが、キョウマを置き去りにしたことが発端となっていることに二人が気が付くことはきっとないだろう。




