第22話 いずれざまぁされる者達は気付かない
ミリーとライネスが受けた依頼はCランクダンジョンの探索。
とはいえすでにギルドが探索済みの認定をしているダンジョンで、ギルドのエントランスには誰でも自由に持って行けるマップが置かれており、そこには地図の他に出現する魔物や採取できる素材の情報が載っている。
それは少しでも冒険者の安全を確保しようというギルドの配慮で、ベテラン冒険者であっても重宝しているものだ。
「今さらCランクダンジョンなんてやってられねえな!」
「仕方ないじゃない! Dランクで悪かったわね! 私は高ランク冒険者と一緒という条件付きでやっとCランクの依頼が受けられるんだから」
ダンジョンの入り口が見える場所で、何やら険悪な雰囲気の二人が入り口へと近付いていく。
そこは広い草原の真ん中にあるダンジョンで、まるでそこだけ地面がボコっと盛り上がったようになっており、そこに入り口と思われる空洞がある。
例えるなら数人が立ったまま一度に入ることができる、土で作られた『かまくら』といった感じだ。
入り口では国家所属の男性騎士が二人ほど見張りをしており、中に入るには冒険者カードとギルドからの依頼書が必要となる。
それは当然の措置だろう。万が一にも冒険者以外の人や、難易度に見合わない低ランク冒険者が入ってしまったりしないようにという配慮で、見張りも兼ねていると思われる。
「冒険者カードと依頼書の提示をお願いします」
「チッ……いちいち面倒だな」
どんなに悪態をついてもルールは守らねばならない。素直に従った二人は中へと消えていった。
するとすぐさま二人の男性冒険者がやって来た。二人とも30代半ばといったところか。二人ともいい体格をしており、装備品から前衛職だと思われる。
そしてミリー達と同じく騎士達と話し始めたが、何かを見せている様子は見られない。
「今日もお疲れ様です」
「お疲れ様です。ギルド職員のあなた方が来られたということは監視ですか?」
「ええ。近頃になって要注意リストに追加された二人がここの依頼を受けまして」
「すると先ほどの男女二人組が?」
「そうです。会話内容など何か変わった様子はありませんでしたか?」
「いえ、特には。ですが態度が悪いと言いますか、印象はよくなかったですね」
「そうですか。そういった何気ない振る舞いにもその人の性格が出るのでしょうね。とりあえずこれ、お見せします」
そう言って二人は他の冒険者と同じようにカードと一枚の紙を騎士に見せた。
「はい、確かに。しかしどなたか分かっているのに二度手間みたいに思えますね」
「確かにそうですね。ですが誰が見ているか分かりませんからね。自分達だけ素通りというのは怪しまれますから」
そして二人も中へと入っていった。
Fランクダンジョンなど一部のダンジョンには、国や冒険者ギルドが設置したランプが等間隔で壁に配置されていたりするが、ほとんどの場合はダンジョンにそれらを設置しても翌日までには消え去っていたりする。
だがここはCランクダンジョンでは珍しく、設置されたランプが残り続けている場所だ。
「今さらこんなとこ来てもたいした稼ぎにはならねえよ」
「まあいいじゃない。ライネスにとっては楽して稼げるんだから」
途中で他の冒険者達とすれ違いながら進む二人。当然ではあるが他の冒険者も同じ依頼を受けていることだってあるだろう。
その二人の10メートルほど後ろにはギルド職員の二人が歩いており、その視線はミリー達の背中に向けられているようだ。
やがてミリー達が開けた場所へ出ると、そこでは四人の若い冒険者達が魔物と戦っていた。
「おいミリー、あれを見ろよ! あいつらが戦ってる奴ってロックタートルの希少種じゃねえか?」
その魔物は体長2メートルほどで、全身が灰色で亀のような姿をしており、その甲羅はその名の通りまるで岩のようだ。
「確かに通常の倍はある大きさだし甲羅の模様が違うわね。私も希少種だと思うわ」
「こいつはラッキーだぜ。ロックタートルの素材は主に防具の材料になるが、希少種の素材となると買い取り価格が格段に跳ね上がるからな」
「ね? Cランクダンジョンでもいいことあるでしょ?」
「フン、たまたまじゃねえか。そんなことよりさっさと行くぞ」
「分かってるわよ!」
二人は意気揚々とした様子で魔物のもとへ走って行く。
「どけっ! ダラダラ戦ってんじゃねえ!」
ライネスはそう言いながら魔物に斬りかかる。
「あっ、ちょっと……! なんだあんた達!」
すると今まで戦っていた男性冒険者の一人がそう声を上げた。
「うるせえ! 俺が加勢してやるよ!」
「加勢? そんなもの必要ない! もう少しで倒せそうなんだ!」
だがライネスはその声を無視して攻撃を続け、魔物はあっさりと倒れた。
「よし、あとは素材を剥ぎ取るだけだ。ミリー、手を貸せ」
「分かったわ!」
そうやって勝手に進めようとするミリー達を見て黙っているはずがなく、若い四人の冒険者達は一斉に声を上げる。
「待てって! いきなり出てきてあんた達なんなんだよ」
「そうだよ! もう少しで倒せそうだったのに!」
「あぁ? お前らが苦戦してるから助けてやったんじゃねえか。だからこれは当然の報酬だろ」
「そんなこと僕達は頼んでない!」
「そんなの知るかよ。あのままだったらお前ら全員魔物の餌食になってたぞ」
「嘘つかないで! 私達だってCランクだからあの魔物が弱ってたことくらい分かるから」
「フン! Cランク風情が騒ぐんじゃねえ。とにかくこいつの素材は俺達のものだ」
それから改めてミリー達は魔物の剥ぎ取りを始めた。四人の冒険者達はその様子を黙って見ている。おそらく彼等なりにライネスと争ったところで敵わないと悟ったのだろう。
そしてライネスが魔物の甲羅を剥ぎ取ったその瞬間、六人のものとは別の声が響いた。
「そこの二人、そこまでだ!」




