第15話 たとえレアスキルが戦闘向きじゃなくても
「俺も探索に参加して大丈夫なんですか?」
「確かキョウマ君はCランクだよね? それならギルドとしても大歓迎だと思うよ」
今回のようにギルドから緊急で依頼が出される場合、高ランクの冒険者ができる限り多く参加することが望ましい。高ランクとは主にAランクか最高であるSランクのことを指す。
しかし強力な魔物が出没したり複雑な構造のダンジョンであったりする場合、高ランク冒険者以外では危険すぎてとてもじゃないが探索できないし、そもそもギルドが許可しない。
なので高ランク冒険者は高難度の依頼を受けることが多く、さらに一つの依頼に数日かかることも珍しくないという。
そのため緊急の依頼とはいえ、すぐに大勢の高ランク冒険者が集まるというのは難しい。
だけどCランクだってなれるまでに少なくとも三年はかかると言われているから、こういう時は特にCランクでも重宝される。
「高ランクの人は何人くらい参加するんですか?」
「それがね、私達のパーティーだけみたいなんだ」
「つまりAランクが三人だけということですか」
「でもギルドからの先遣隊の発表では、今のところはCランク相当のダンジョンなんだって」
「確かにそれなら俺でも役に立てるかもしれません。それに高ランク冒険者が集まるまで何もせず放置しておくのは危険ですよね。新しくできたダンジョンなら特に何が起こるか分かりませんから」
「うん。だから国選パーティーが派遣されるんじゃないかな」
「そんなことになってたなんて、全然知りませんでした」
「仕方ないよ、ギルドの掲示板でしか分からないことだからね」
そういった情報はギルドにある掲示板で知ることになるが、それを見るためにはギルドまで足を運ぶ必要がある。
なので冒険者しか知らないことがあるわけで、その理由はおそらく混乱を避けるためだろう。
万が一、国の存続や国民が危険にさらされる事態になった場合は、国から緊急事態が宣言されることになっているらしい。
「なんだか最近アイテムがよく売れるなとは思っていたんです」
「それはきっと探索に参加する人達が買っていたんじゃないかな。アイテムバッグの容量には限りがあるけど、アイテムはできるだけ多く持っているほうが安心だからね」
そういえば少し前にラインゴットさんが同じようなことを言ってたっけ。「最近は売り上げが好調だ」って。
それをまさか俺も実感することになるなんて思わなかった。少しはこの仕事に慣れてきたってことかな。
「今日の仕事終わりでギルドに行ってみます」
「そうだね、掲示板を見るのが一番いいと思うよ。……あっ、後ろに誰も並んでないからつい話し込んじゃった。お会計お願いね」
「そういえば俺、店員でしたね」
そんなささやかな冗談でさえも、ティアさんは「もう、忘れちゃダメだよー」と楽しそうに微笑んでくれた。
そして夕方。今日の仕事が終わりギルドに行ってみることにした。
ギルドは24時間営業だ。その理由は、夜など特定の時間帯でしか出没しない魔物がいたり入り口が現れないダンジョンがあるから。
せっかく依頼を達成したのに、ギルドが開くまで何時間も待たなければならないなんてことを避けるためだろう。
中に入るといつも通り多くの冒険者の姿があった。エントランスにある通路から行くことができる併設されているレストランも、ここから見る限り満席だ。そういえばちょうど夕食時か。
一直線に掲示板を確認しに行くと確かに、ティアさんの言う通りのことが一番目立つように書かれている。
それから三つある受付カウンターに行ったが満席なので並んで待っていると、真ん中が空いたので用意されてあるイスに座った。
「あら? キョウマさん」
「どうも、お疲れ様です」
応対してくれたのは、少し前に俺が生きていたことに涙を流してくれた受付の女の子だった。
「何か依頼を受けられますか?」
「掲示板にある緊急の依頼に参加しようと思ってます」
「それは心強いです。それではこちらの申請書にご記入をお願いします」
「分かりました。ところで国選パーティーが派遣されるそうですね。やっぱりとんでもなく強いんでしょうか?」
「Sランクの魔物を討伐したりSランクダンジョンのマップを作成したり、とにかく実績がすごいです」
「やっぱりSランク冒険者だった人が選ばれてるんですか?」
「そうですね、基本的には高ランクの冒険者さんが多いですけど、試験がありますからそれに合格すれば、どなたでもなれる可能性がありますよ」
女の子はそう言って視線を落とし、手元にある書類を見て何かを確認しているようだった。
「どうやら今回派遣されるパーティーの中にFランクの方がいらっしゃるみたいですよ」
Fランクは一番下のランクで、誰もがそこからスタートする。
「話には聞いたことありますけど、本当にFランクでもなれるんですね」
「唯一無二とまではいかなくとも、きっと何か秀でたものがあるのでしょうね。ところで、キョウマさんは国選パーティーを目指すのですか?」
「俺にはレアスキルがありますがそれは戦闘向きではありません。でもそれを誰かのために役立てたらいいなと思ってます」
「応援しています。頑張ってくださいね!」
「ありがとうございます!」
そして当日になった。ギルド前の広場ではティアさん達を含め複数の冒険者パーティーの姿があり、あとは国選パーティーの到着を待つのみ。
予定時刻である十時まではまだ三十分ほどあるため、冒険者達はリラックスしている。
すると何もないスペースが突如として光り始め、そこには人の姿がぼんやりと見える。やがてその光が収まると、そこには四人の人間の姿があった。
それは転移魔法で現れた国選パーティーの姿だった。




