第14話 願わずにはいられない
ティアさんが来店したことに気が付いたが、今は仕事中なので声をかけることはできない。
それにしても「また来てください」とは言ったけど、まさか本当に来てくれるとは。
冒険者といってもその活動スタイルは人によって違っており、同じ街に長く滞在してそこにあるギルドからの依頼を受けることをメインにしている人や、各地を旅しながら冒険者としての活動をする人など様々。
前者のスタイルなら利用する店が固定されがちで、後者のスタイルなら同じ店に何度も足を運ぶことは少ない。
(ティアさんはどっちなんだろう?)
そんなことを考えていると、一人の女性がレジまでやって来た。見た目だけで判断すると高校生くらいに見える。装備しているものから考えるとまだ駆け出し冒険者の可能性が高い。
「すみません、実は初めてダンジョンに潜るんですけど、アイテムは何を持って行けばいいのでしょうか?」
「そうですね、まず最優先すべきは回復ポーションです。目的地がどこであれ少なくとも人数分は欲しいところですね。あとは出現する魔物に合わせることが大切です。例えば毒を使う魔物が出るなら解毒剤は必須で、属性もちの場合は弱点属性の戦闘用アイテムなどですね。その辺りの情報は依頼書に書いていますから、事前に確認することを忘れないようにしてください」
「分かりました、ありがとうございます! やっぱり店員さん、詳しいですね! それにアイテムのことだけじゃなくてギルドのことも知ってるなんて。もしかして元冒険者とか?」
「一応は現役で冒険者してます」
「そうなんですかぁー! それじゃあ先輩さんですね!」
「失礼な質問かもしれませんが、ソロで活動するのですか?」
「そんなまさかー。四人パーティーです」
「ギルドで知り合ったとか?」
「いえ、みんな幼馴染なんですよー」
俺とは関係ないことは分かっていながらも安心した。それならきっとしっかりとした信頼関係が築けていることだろう。
それから女の子は俺のアドバイスに素直に従い、回復ポーションを中心としたアイテムを持って来たので会計を済ませた。
「また来ますね! その時はまたいろいろ教えてください!」
女の子は元気よくそう言うと、小さく手を振って外へと出て行った。
(また来ますね……か)
その言葉がどうか現実になりますように。どうか無事に帰って来ますように。俺はそう願わずにはいられなかった。
「すみませーん、これください」
(しまった、お客さんを待たせてたかも)
ハッと我に返ったような感覚だった。ここからは仕事に集中しないと。
「お待たせいたしました」
目の前にはティアさんがいる。さっきの女の子と話していて気付かなかったようだ。
「キョウマ君、元気そうだね!」
「ティアさんも。それにしてもティアさん、本当にまた来てくれたんですね」
「うん。しばらくはこの街にいることになったからね。だから時々はここに買い物に来ると思うよ」
「そうなんですか。しばらくってことは、ずっとこの辺りで活動するわけじゃないということですね」
「そうだね。私を含めたパーティー三人でもっといろんな場所を見てみたいと思ってるんだよ」
「ここに留まる理由って何かあるんですか?」
「ちょっと前にここのギルドから緊急依頼が出されたの。なんでもこの地域にダンジョンが新しくできたんだって」
「ダンジョンが新しく……ですか。ある日突然ダンジョンができることがあると聞いたことはあります。それらを含めたダンジョンや魔物の謎を解き明かすためにあるのが冒険者という職業なんですよね」
「そうだね。あとどのくらい長い時間が必要かは分からないけど、いつかそんな日がくるといいね」
「そうですね。でもそう言いながらも俺はもう冒険者としてはほとんど活動してませんけどね」
「国選パーティーのことは考えてみたの?」
「はい。確かに国のために働くのもいいかもしれないなと思いました」
「国選パーティーは試験で選ばれるからね。それに冒険者ランクや戦闘能力は関係ないみたいだから、何かキョウマ君にしかできないことがあればいいアピールになると思うよ」
「俺にしかできないことですか? それならあります。正確には自信があること、ですね」
【アイテム鑑定】や【映像記録】はレアスキルだから、十分なアピールポイントになるはずだ。
「ホント!? 実はね、さっき話した新しいダンジョンの探索に国選パーティーが派遣されるんだって。そして冒険者と一緒に探索するみたいだよ」
「そうなんですか。実際に見たことはないんですよ」
「そっか、仕方ないよ。なかなか無い機会だからね。ね、もしよかったらだけどキョウマ君も参加してみない?」
手を汚さない復讐方法として自分が立派になって見返すというものがあるが、俺が国選パーティーに入ってあの二人に「誰が冒険者に向いてないって?」と、言い放つというのはどうだろう? ……ダメだ、それだけじゃ生ぬるいな。かといってあの二人のために俺が手を汚す価値なんてないか。
まあそのことはまた考えるとして、国選パーティーを実際に見ておくというのは良いかもしれない。




