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初めてできた彼女をNTRされた。その後普通に生きてただけなのにざまぁが成立した。  作者: 猫野 ジム


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第13話 せっかくなのでスキルを使う

 ギルドマスターとの話を終えて廊下の入り口まで戻って来ると、俺をさっき部屋まで案内してくれた受付嬢が受付カウンターから立ち上がり、俺の前までやって来た。


「ギルドマスターとのお話が終わったようですね」


「はい」


 返事をしてから少しの間が空いたため様子をうかがうと、まるで今にも泣き出しそうな表情をしている。


「どうしました?」


「私は受付を担当していますから、行方不明になっている冒険者さん達のリストを毎日見ています。いつか目の前に現れてくれることを願って……。なのでこうして一人でも無事であることが分かって本当に……っ、嬉しいです……!」


 俺はただの冒険者の一人に過ぎないのに、それでも涙を浮かべながらそう言ってくれたことが本当に嬉しくて、生きててよかったと思わせてくれた。


「こちらこそ……! 俺のために涙を流してくれてありがとう……ございます……!」


 思わずもらい泣きする。自分のために涙を流してくれる人がいることがこんなにも嬉しいものだなんて……! どんな涙であれ、日本で最後に泣いたのはいつだっただろう。


 それからお互いが落ち着いたところで俺はカウンターの向こう側、つまり本来の立ち位置へと移動して、再び対面する形になった。


「キョウマさん、どうされましたか?」


「いや、まだ本来の目的を果たしていないので……」


「あっ……! ご、ごめんなさい! そういえばキョウマさんのご用件を聞いていませんでした! 私ったらお恥ずかしい……」


 泣いたかと思えば驚いた表情を見せたり恥ずかしがったり、表情が豊かでなんだか安心できる。


「えっと……、そうでした! この依頼を受けるんですよね。……あっ! もうすぐ期限切れですか。そういうことだったのですね」


「そういうことなんです。せっかくCランクになったのに期限切れで登録取り消しは避けたいですから」


「かしこまりました。出過ぎた質問だとは思いますが、パーティーには所属しないのですか?」


「そうですね、今は冒険者をメインにはしてませんので。決して冒険者を軽んじてるわけじゃないですが、一人でのんびりとできる依頼を受けようかなと思ってます」


「兼業が認められていますし、人それぞれのペースや考え方がありますからね」


 それから依頼書にギルド印が押され、約一ヶ月ぶりに冒険者の活動が始まった。


 選んだのは薬草採取。これだけを聞くと駆け出しであるFランク冒険者がするような内容だが、問題は『どこに生息しているか』ということ。


 もしそこがAランクの魔物も生息しているような場所なら、Fランクは当然としてBランクですら四人以上のパーティーじゃないとギルドに受理してもらえない。


 そしてレアなものほど強力な魔物の生息地にもなっているという、この世界におけるなんとも不思議な自然の摂理。



 一番近い馬車乗り場から二十分ほど歩いてやって来たのはとあるダンジョン。ここには中級の回復ポーションの調合に必要な薬草があり、出現が確認されている魔物はCランク以下。


 どうしてダンジョンに草が生えているのか? この世界に来たばかりの頃は不思議に思ってたが、そもそも世界が違うのだから日本とはあらゆることが違っていてもおかしくない。


 そのためまず最初に、日本と同じ価値観を捨てることも時には必要だということを学んだ。

 さすがに倫理観は日本と同じようだが、もしそこが違っていたら、とてもじゃないがスローライフとかそんな場合じゃなかっただろう。


 中に足を踏み入れた俺はアイテム袋から懐中電灯を取り出した。電気で動いてないから正確には違うけど、形状はほとんど同じ。


 光を放つ魔法が付与された魔石を中に封じ込めており、スイッチを入れている間だけそれが解放されて、前方を照らすという仕組みらしい。

 でもやがては魔法の効力が消えてしまい、補充ができないので使い捨てのアイテムだ。


 ダンジョンとはいえ、山のように大きな岩をそのままくり抜いただけのような場所。

 なので足場が不安定だし、外の明かりは届かないし、静かすぎて不気味だ。


 今は昼なのでまだいいが、夜になると夜行性の魔物の動きが活発化してしまう。なのでギルドからCランクの依頼だと認定されている。


 少しでも魔物の気配を察知できるよう、なるべく足音をたてないように進む。

 それでも途中で魔物と出遭ってしまうが、Cランク以下で一対一なら負ける気がしない。


 魔物を倒しつつやがて開けた場所に出ると、そこにはまるで草原のような緑色の光景が広がっていた。

 そんな草ばかりの中から目当ての薬草を探さなければならない。


(せっかくだから使ってみるかな)


 俺だってCランクなのでそれなりの知識と経験があるから問題ないんだけど、ここはスキル【アイテム鑑定】を使ってみることにした。


(まずは目当てのものから)


 目当ての薬草を視界の中心に捉えて、スキルを発動させた。こればかりは感覚的なものなので、体で覚えることが一番の近道となる。


名称:『薬草(中級)』


特徴:『すり潰して傷口に塗ると、その部分の自然治癒力を一時的に促進させ回復を早める効果がある。何もせずそのままの形で食べてもいいが、その場合は効力がやや下がる』


備考:『異常なし』


 こんな感じの説明文が対象として認識したものの近くに見えてくる。これも異世界もの作品の通りだったので本当に凄い。


 試しに薬草以外の草にスキルを使ってみると、毒草やら口に含むと全身が(しび)れる草やら物騒なものも多く生息していた。

 こんなところも駆け出し冒険者には任せられないため、Cランク以上じゃないと受けられない理由の一つとなっている。


 こうして二時間ほどダンジョンに滞在した後ギルドに戻って来た俺は、さっきと同じ受付カウンターへ。


「終わりました。確認お願いします」


「えっ、もう終わったのですか?」


「アイテムのことなら自信がありますから。それに鑑定スキルがありますので」


「すごいじゃないですか! 鑑定系のスキルは珍しいと聞きますよ」


「ありがとうございます。俺には戦闘よりもこういうことのほうが向いているのかもしれません」


 そんな会話の後、指定された量の薬草を納品して報酬を受け取った。

 それと同時にこれでまた登録取り消しまでの猶予が40日間に戻ったので、これでまたアイテムショップでの仕事に集中できる。



「ただいま戻りました」


「おうキョウマ! 冒険者の活動は終わったのか?」


「はい、無事終わりました。ありがとうございました。さあ今から仕事に戻りますよ」


「何言ってんだ、今日は有給だって言っただろ? 帰って休め休め!」


「それはありがたいですけど、見たところいつもよりお客さんが多いみたいだし、せっかく早めに終わったのでやりますよ。ところでスフィアさんはどこにいるんですか?」


「スフィアなら家にいるぞ。スフィアがどうかしたか?」


「いえ、もしスフィアさんも手伝っていたら申し訳ないなと思いまして」


「そうか、ありがとな。でも大丈夫だ。このくらいなんてことない。だからキョウマも帰って休むといい。いや、休め」


 少し不器用ながらも優しいラインゴットさんの厚意で、今日は帰って休むことにした。



 それから数日後。いつものようにレジに立っていると、他のお客さんがいる中で見覚えのある人が入って来たのが分かった。ティアさんが再び訪れたんだ。

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