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初めてできた彼女をNTRされた。その後普通に生きてただけなのにざまぁが成立した。  作者: 猫野 ジム


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第11話 俺の心はきっと傷まない

 そろそろ冒険者としての活動をしないと、登録が取り消されてしまう。せっかくCランクになったんだから取り消しになるのは避けたい。


 そうなると次に考えることは、『いつにするか』ということになる。

 でも今の俺はアイテムショップ店員だから、そのために休むわけにはいかない。となると、次の休日になるわけだ。


 それはそれとして、時刻は朝八時。今は出勤の準備を進めよう。

 まずは昨夜買っておいたパンを頬張(ほおば)って、それから着替えて、身だしなみを整えて、……終わり。


(日本にいた時と変わらないな)


 一人暮らしの30歳男の朝って、きっとこんな感じが普通じゃないかな。

 出勤前の様子は変わらないけど、大きく変わったことが一つある。それは家を借りたこと。


 就職した当初は王都にある宿からの馬車通勤だったけど、実は馬車通勤というのは落とし穴だということに気が付いた。


 仕事の日は言ってみれば強制的に起きなければならず、少なからず眠気が残った状態で出勤することになる。

 そんな中で舗装された道を快適に進む馬車に、三十分も揺られるとどうなるか? その答えは、『心地よい眠気に襲われる』。


 感覚としては電車の中でなぜか眠くなることに近いだろうか。つまり寝過ごしによる遅刻の危機と毎朝戦うことになる。


 そんな理由も踏まえて冒険者で得た収入が尽きる前に、職場まで歩いて十数分で行ける場所に家を借りた。アパートやマンションの一室ではなく、一人暮らしを想定して建てられた一戸建てだ。


 ここはこの世界での大国なので土地に余裕があり、日本と違って家がギュウギュウに建ち並ぶといったことはない。



「おはようございます」


「キョウマおはよう!」


 開店前の店内でいつものようにラインゴットさんにあいさつをすると、意外な人物が姿を現した。


「キョウマさん、おはようございます。今日もよろしくお願いしますね」


「スフィアさん、おはようございます。妊娠中と聞きましたけど、動いて大丈夫なんですか?」


「大丈夫よ、心配してくれてありがとう。今日は私も品出しを手伝っていたの」


「俺に言ってくれればいくらでもやりますよ。もしかして人手が足りないとかですか?」


「まあそうだな。最近は売り上げが好調なんだ」


「アイテムは冒険者だけじゃなくて、それ以外の人が使う物もありますからね」


「それもあるが突如として売り上げが伸びることが度々ある。それはどんな時だと思う?」


「……冒険者ギルドで大型の依頼が出た時、でしょうか。例えばダンジョンの調査だったり強力な魔物の討伐依頼だったり」


「正解だ。さすが現役の冒険者だな。ギルドが力を入れている依頼には特に多くの冒険者が関わることになる。時にはギルドの呼びかけで何十人という冒険者が集まって全員一緒に行動することもあるんだよな」


「そうですね。そういう依頼は大抵の場合、通常の依頼よりも危険を伴うことが多いです。だからいつもよりアイテムを使う機会も多くなります」


「売る側としてはありがたいことではあるんだがな。……そういえばキョウマ、そろそろ何か活動しないとマズいんじゃないか?」


「そうなんですよ。なので次の休みに一人でもできる依頼を受けようと思ってます」


「休みの日にって、それはダメだろ。休みなんだから。休みは休みとして、有給にするから出勤日に行くといい。いや、行ってこい。むしろ有給とれ」


「もう有給があるの?」と思ったけどここは異世界。日本と違うことだって当然ある。


 それにまるでパワハラのような言葉だが俺のためを思ってのことだと分かっているし、ラインゴットさんが言うと全くそうとは思わない。誰から言われるかってのが重要なんだろうな。


「いくらなんでもそれはできませんよ。完全に俺個人だけの事情ですから。それに俺がいない間はラインゴットさん一人になるから大変じゃないですか?」


「俺一人くらいどうにでもなるって。それに本当に困った時でもスフィアがいるからな」


「それなら尚更ですよ。スフィアさんに負担をかけてしまいますから」


「スフィアはまだ動いていいっていう医者の許可が出てるから大丈夫だ。それに重労働ってわけじゃないし、何より俺が全部対応すればいいってだけの話だ」


 それを聞いた俺は相手の厚意を無下にするわけにもいかないと考え、お言葉に甘えさせてもらうことにした。


「おう、任せとけ! それでいつにするんだ? 明日でもいいぞ。なんなら今日でもいい」


「さすがに今日だとは俺も考えてないので明日でお願いします」


「了解だ! ここにあるアイテムいくつか持っていくか?」


「実はアイテムならまだストックがあるので大丈夫です」


「そうか。それじゃあ今日も頼むぜ」


「はい。スフィアさんもありがとうございます」


「私、働くの好きだから気にしないでくださいね。それに夫が言う通りきっと一人でやりきると思うから」



 そして翌日になった。ここはそこそこ大きな街で、王都ほど大規模ではないものの冒険者ギルドだってある。


(俺はどういう扱いになってるんだろうな)


 俺がダンジョンに置き去りにされた時、ミリーが見舞金を受け取ると言っていた。

 依頼自体は未達成ということになるだろうが、ギルドには俺が魔物の犠牲になったと報告しているはずだ。


 ギルドが無条件であの二人の証言を信用するわけがない。まずは調査ということになるはず。


 そんな中で俺が生きているとギルドが把握すれば、あの二人が見舞金を不正受給しようとしたと判断される可能性が高くなるだろう。


 もちろんそれは詐欺だし、『冒険者法』だって許さない。少なくともギルドから疑惑の目を向けられることになる。


 もしあの二人がそんなことになっても、俺の心はきっと傷まない。あの二人の身を案じるほど俺はお人好しじゃない。


 ギルドにやって来た俺はまず依頼掲示板の前に立った。そして一枚の依頼書をはがしてから、俺と同じくらいの歳の女性が座る受付カウンターへ持って行った。


「この依頼を受けます」


「かしこまりました。それでは冒険者カードの提出をお願い致します」


「はい。どうぞ」


「拝見しますね。……キョウマさん、ですね。20歳でもうCランクだなんて凄いです」


 本来ならここですぐに冒険者カードを返してもらって受注が成立する流れだが、今は少し違っていた。


「あっ……! 申し訳ございません、このままで少しお待ちいただけますか?」


 受付の女性はそう言うと、何やら慌てた様子でカウンターの奥へと遠ざかっていった。

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