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地の国の物語  作者: たくぼあき


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王太子の悩み

地の国の物語


地の国の第一王子にして王位継承権一位の若者カラム王子は、盛大にためいきをついた。


当代の地の精たちを統べる王は、マルカイトラズリコ3世。


王妃腹の正統な王の長男として生まれ、若くして王位に就き、即位と同時に国内の名門貴族から迎えた地の国で最も美しい女性の1人と言われる同い年の正妃との間には第一王子が、側室たちとの間には臣下に降ることが決まっている第二王子のハルトもいる。


そして他に側室たちとのあいだに数人の王女たちをもうけてており、国をつつがなくおさめていた。


この時代の地の国は、国境を接する風の国の内乱が続いているため国境の護りは油断ならないものの、大国である水の国との長年の同盟関係が安定してさほど経済的にも国防的にも波乱はなく、平和で幸せな時代を謳歌していた。


同盟国たる水の国は地の国の物産を買い上げてくれるし、文化交流も盛んであり、王は、さほど特出したところはないが王統をまもり、破綻なく自分の義務を果たすという王者に最も大切な使命を常に守る真面目でやや気弱な臆病な性格だったからだ。国王として立派な姿を見せる義務を果たしつつ、

そんな王は、頭の上がらない長年連れ添った正妃以外にも何人かの側室を持ち、言ってみればそこで気晴らしをするしかない茫洋な男だった。


そしてその側室以外にも若い娘たちが好きでよく身近に娘たちを招いては園遊会などを開いて妻に隠れて遊んでいた。隠しきれないこともあったが。


国で1番美しく賢くプライドの高い正妃は妻としても母としても申し分がない女性だったが、王妃としての気位が高く夫のそういった女遊びにいい顔をしなかった。


というかヤキモチと怒りの悋気を隠せない人柄であった。王の周囲の女性たちに怒りながらも誇りの高さから黙認するという難しい心を保つ。


最も地の国では地位のある男性が複数の側室を持つことが認められる国だったので、成否としては我慢せねばならなかった。


第一王子をうみ、その養育に人生を捧げ、他にも国内の福祉と宮廷を取り仕切り、更に外交などで気弱な夫の政務を補佐するなど王妃としては完璧とまで言われた。


そんな女性だが、年齢を重ねていくうちに若い女性に興味を示すことが多くなった夫や自分が女性として軽んじられることに苛立ちを感じることも多くなった。


王宮はいつも人目が多くて役割りも多いため気苦労もある。


ある時疲れた王妃は、自身が持つ荘園に随員を連れて滞在することにした。



その事については全く問題はなかった。賢く慈悲深い彼女が国王の政を支え、趣味も高く王妃として高雅な性格の火の打ちどころのない高潔な人柄。


そして優秀な跡取りを産んだ完璧な人物であるということは国民にも貴族たちにも知られていて多くの人々に慕われていたし、領地経営も完璧にこなす。


そんな彼女が休養を取るために少し地方に出かけることくらいにあれこれいうものはいなかった。



しかし、王宮に残された夫たる国王にとっても日頃立派すぎる妻に疲れていたところだったのでそれはそれで羽を伸ばす理由となりえた。


国王は、有能な側近たちに政治を補佐され、自分の執務は滞りなく行いながらもいつもは妻に憚られる若い娘を自身の王家の桟敷と言われる私的空間に連れ込んでいたのである。



王の第一王子にして王太子の地位にあるカラム王子は、


外見は父親にそっくりなのだが、中身は完璧主義者の母に似て大変真面目で礼儀正しい優秀な人物だった。国王と正妃の第一子として生まれた瞬間に王位継承者第一位の位が与えられ、軍隊の高位の階級を授けられた。


産着とともに地の国の軍人の名誉将軍の勲章も与えられた正真正銘の地の国の次代の王とされる若者である。


彼は、とても真面目で頭脳も鋭く若者だがやや堅苦しい人物でもあった。


非常に記憶力が高く儀礼にやたらと詳しいので間違えないように周囲の人間は大変緊張するという。


母の誰よりも誇り高い性格が1人息子への過度の愛情と強い期待となり、彼は大変厳しく育て上げられた。

そして見事に優秀な人物に育った。


王妃は誰よりも優れた後継者を国家に贈らなければならない、というのがこの国の王妃に求められる最も重要な役割であり、それを叶えた王妃はもはやそれだけで全ての役割を果たしたようなものだったのだ。


そして王太子は見事に成長して王を補佐し、王の代わりに戦場に出て国境を守ったこともある立派な後継者となっていた。


カラム王子は、その日の朝も王太子の邸宅から定刻通りに王宮に参内した。


成人した王太子は、王にとっての第一の臣下として政治の助けになるべく常に傍にあるものとされている。


まず王に参内の朝の挨拶をする儀式的な習慣がある。

父王は王宮内で最も格式が高く神殿のようなしつらえの桟敷の玉座に常に鎮座している。


そして、王子は、父の王座に跪き、まず


「地の国の国王陛下。第一の臣下として朝のご挨拶を申し上げます。父君にて我が国王陛下、暁のより少し過ぎましたこの時に東の大公が朝のご挨拶を申し上げます」


と儀礼通りに頭を下げた。


完璧な所作、みなりも完璧である。


親子とはいえど典礼上主従関係にあるのでまずは型通りの挨拶をする。


全て儀典で定められていることだからだ。


「うむ。おはよう。変わりはないか大公。愛する息子よ」

畏まって跪く息子に優しく声をかける父。


王は息子をとても頼りにして愛している。、


そこで親子はやや打ち解けたような口調で笑顔になり普通に話を交わした。


若者らしい笑顔を見せ


「父上。ご機嫌麗しゅう」


「大変気持ちが楽になった。そうだな、懸案だった火の国との国交の件もこのまままとまりそうか」


「は、外交の場で水の国が我が国に有利に動いてくれました。我が国の資源、光る石を彼らのいうような値段で取引するのは痛いですが国境線を侵されるよりは被害が少ないと存じます」


「そなたが気丈に振る舞うので誠に喜ばしい。なんと立派に育ったことだろう。これからも王国のためよくはたらくよう」


「御意」


王は心から息子の働きに満足していた。


しかし、息子には父にやや懸念があった。

先程王妃の桟敷の前を隋員とともに通過したのだが

無人のはずの桟敷に人の気配がするような気がしたのだ。


「母上の桟敷の御簾から人が出入りしているようですが、お忍びで地方に巡幸された母上がお戻りなのですか?ならばご挨拶させてください」


「いや、その、王妃はまだ現地に滞在しておる」


言葉を濁すこの国の王。


「では、王妃の桟敷にどなたがおられるのですか」

「いや、その・」

クラムは、慣れたことで父が止めようとするのも構わずツカツカと王妃の桟敷に近づき御簾という室内を隔てる仕切りの薄い布をめくりあげた。


はたしてそこには若々しい着飾った娘が一人いた。

「お、お許しくださいませ。王子殿下」 


黒髪の若くて可愛いらしい女性がゆるしをこうように腰をかがめて青ざめていた。


ドレスも桃色で辺りをパッと華やがせる。


この娘が現在の父上のお相手か。

全てを察した息子は父に向き直り


「国王陛下にして我が父上。王妃陛下の桟敷にほかの女性を招くとは母上のこけんにもかかわり、大いなる問題となります。人の噂にもなりましょう。このご令嬢は私が責任を持って在るべき場所に送り出します!」


王太子はいつも正しい。


そしてやや冷たい声でこの非常識な若い娘に話しかけた。


「名前を聞くまでもない。わたしについてくるように」


「息子よ。少し待ってくれぬか」

情け無い声を出す地の国でもっとも尊いとされる王。


王のお気に入りらしい年若い美しい衣装を着た可愛らしい娘は今にも泣きそうだ。

静かにさせてうまく隠しておいたつもりだったのに。


「王妃の桟敷になんということ!父上!こんな事をお許しになるのですか!王宮のしきたりと王妃であられる母君の大切な場所を」


「いや、その少し控えさせていたのだ」


「なりません!そなた私についてきなさい」



王の愛人なのか単なるお気に入りなのかわからないがこんな醜聞は彼の性格上許しがたかった。

母の怒りも恐ろしい。

娘はこうして王太子の随員とともに退出させられてしまい国王はため息をついたのだった。


カラムの朝はこうして最悪の出来事で幕を開けたのだった。

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