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神々、掲示板に降臨す 〜天界勤務中、うちの神、業務中にスレ立ててる件〜  作者: 物書狸。
最終章:祈りの終わる場所で

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第78話 プリンスたま旅立ち──そしてカーマは本気でついていく♡

旅立ち前の空気が、少しだけゆるく揺れた。


神さま

「さて……たま、ピアス。

いよいよ旅立つんじゃな」


プリンスたま

「んー、まぁね。

風がさ、“そろそろ行けよ”って言うもんで」


ブッダピアス

「風ではなく、あなたの気分でしょう」


そこへ、カーマの明るい声。


カーマ

「はーい♡

たま〜、荷物も腕もぜんぶ私が持つね♡」


プリンスたま

「……ちょっと。

カーマ、ほんとに来るつもり?」


カーマ

「来るよ?

だって断絶したらもう追えなくなるし♡

今でしょ〜♡」


神さま

「まぁ、筋は通っておるのう」


プリンスたま

「いやいやいや、通す前に言えよ!?

カーマさ、ついてくるのはいいの。

けどさ……」


カーマ

「なぁに?

そんな真面目な顔しちゃって♡

好きになっちゃうよ?」


プリンスたま

「……だからそういうのが旅の目的と違うのよ。

“邪魔だけはしないで”って話」


カーマ

「邪魔なんてしないよ?

神さまのすごさ語った時に抱きつくくらいでしょ♡」


プリンスたま

「それが邪魔なの!!

ピアス、なんか言って?」


ブッダピアス

「言いましたよね。

“言い方に気をつけろ”と」


神さま

「わしは何も言っておらんが……」


カーマ

「たま♡

ほんとはさ、私がいた方が楽しいでしょ?」


プリンスたまは、少しだけ視線を外した。

否定はしない。


プリンスたま

「……まぁ。

来たいなら来れば?

ただしほんと、足はひっぱらないでよ?」


カーマ

「はぁい♡

じゃあ先頭ついてくね〜♡」


プリンスたま

「先頭の問題じゃないのよそれは!!」


ブッダピアス

「はいはい。

神さま、行ってきます」


神さま

「うむ。

三人とも……好きなように行ってこい」


カーマ

「たま♡

ピアス♡

旅、はじめよ〜♡」


朝の光がゆっくり三人を押し出した。


旅路の最初の坂を登ったところで、

プリンスたまがふと足を止めた。


振り返る先には、まだ神さまがいた。

立ち位置も、表情も、昔から変わらない“見送る背”だ。


プリンスたま

「……ねぇ、かみちゃま」


神さま

「なんじゃ、たま」


たまはにかんだように眉を下げて、しかし言葉の芯はまっすぐだった。


プリンスたま

「俺さ。

絶対にまた天界戻るから。

そんときまで、ちゃんと見守っといてね?」


神さま

「わしは、いつも見守っておるぞ」


プリンスたま

「いや、それね。

“いつも”だから逆に心配なのよ。

泣くでしょ?ひとりで」


神さま

「わ、わしは泣かん!」


プリンスたま

「泣いたじゃん。

今もちょっと目赤いじゃん」


カーマ

「うん♡

泣いてるね。可愛いよ神さま♡」


ブッダピアス

「動揺していますね。

たまの核心は昔から刺さりますし」


神さまはそっぽを向いた。

その肩の揺れが、小さくて、誰よりも優しかった。


プリンスたま

「かみちゃま。

泣いていいんだよ。

そっちの方が“かみちゃまらしい”からさ」


神さま

「……たま」


プリンスたま

「俺さ、ずっと好きなんだよ。

かみちゃまの、そういうとこ。

誰より優しくて、

誰より弱くて、

でも誰より強いとこ」


風がゆっくり吹いた。

三界断絶前の空気なのに、やわらかかった。


ブッダピアス

「神さま。

あなたが揺らぐから、私たちも生きられるのです」


カーマ

「そうそう♡

だってさ?

完璧だったら恋しがいないもん♡」


神さま

「……おぬしら、ほんと勝手じゃの……」


ぷいと顔をそらす神さま。

でも耳の先がほんのり赤い。


プリンスたま

「かみちゃま。

だからね?

俺たち、行くよ」


神さま

「……うむ。

行ってまいれ」


プリンスたまは最後に肩をすくめ、笑った。


プリンスたま

「見ててよ。

ちゃんと帰ってくるから。

その時はさ──

“おかえり”って言えよ?」


神さま

「……言うとも。

必ずな」


風が三人の背を押した。

旅が続き始めた。


【裏会話:天照、神さまを支える】


旅立っていく三人の背中が見えなくなったあと、

神さまはほんの少しだけ、その場に立ち尽くしていた。


天照

「……行っちゃったね」


神さま

「うむ。

あやつらは、いつの時代も……瞬きのように去っていく」


天照は隣に立ち、そっと袖を引いた。

無言のまま寄り添う気配だけが、冬の光に溶ける。


天照

「さみしいって、言ってもいいんだよ?」


神さま

「……わしは、泣かんぞ」


天照

「はいはい。

じゃあ“泣いてない”涙を拭いてあげるね」


神さま

「……気づいとったか」


天照

「気づかないわけないでしょ。

あなたが誰よりも、あの子たちを愛してることくらい」


神さまは、ゆっくりと息をついた。

ため息ではなく、“受け入れる息”。


神さま

「わしは……いつか、皆が戻ってきてくれると信じておる。

たまも、ピアスも、カーマも」


天照

「うん。

だから大丈夫。

あなたの信じる力は、誰より強いもの」


神さま

「……天照。

そばにおってくれてありがとうな」


天照は顔を少し赤らめ、

しかし言葉は静かに柔らかかった。


天照

「私こそ。

あなたがいるから、みんなが帰って来られるんだよ」


二人の間を、雪まじりの風がそっと通り抜けた。


温度は冷たいのに、

心は不思議とあたたかい。


薄い霧の地獄通路。

旅立った三人の残り香が消えきったころ、

ロキは手をひらひらさせてため息をついた。


ロキ

「……行ったねぇ。

ああやって笑って去ってくの、実にたまらんよ」


夜叉は隣で静かに歩き、

音のない声でふっと笑った。


夜叉

「……にぎやかな方々でした。

少しだけ、静かすぎて……落ち着きませんね」


ロキは片目を細め、

地獄の天井の向こうにあるはずの“境界”を見た。


ロキ

「夜叉。

とうとう――この日が来ちゃったねぇ」


夜叉はまつげを伏せて、やわらかく首をかしげた。


夜叉

「……三界断絶の準備。

ここからは、もう戻れないのでしょう?」


ロキ

「戻れないとも。

でもまぁ、終わりは悪いもんじゃない。

すぐそこに始まりも顔を出す」


夜叉はその言葉を聞き、

ほんの一瞬だけ呼吸を止めた。

その後、静かに微笑んだ。


夜叉

「……ロキさま。

“終わり前夜のざわめき”は……嫌いではありません」


ロキは笑った。

その笑みは軽いが、奥に影が沈む。


ロキ

「そうこなくちゃ。

さ、行こう夜叉。

明日、世界は三つに戻る。

――その瞬間を、ちゃんと見届けよう」


夜叉

「……はい」


ふたりの足音だけが、

静けさを裏切るように響き続けた。


プリンスたま

「――さて。

旅というのはね、静寂と笑いが同じ歩幅でやってくるから面白いんだよ」


カーマ

「静寂とか言ってるけど〜?

はい、たま♡ 手つなぐ? 旅の相棒ってことで♡」


プリンスたま

「つながんでいいよ〜。

手がふさがると、笑いが拾えなくなるからね?」


ブッダピアス

「……ふっ」


プリンスたま

「ほら、ピアスがもう笑ってる。

この“ふっ”一個で充分。

それ以上の説明、いらないだろ?」


カーマ

「んもー♡ そういうとこが“たま”なんだよねぇ♡

悟りとか笑いとか、全部まぜこぜでふざけてるみたいで〜」


プリンスたま

「ふざけてるんじゃなくて、“軽くしてる”だけ。

重いとね、世界って転びやすいんだよ。

ほら、神ちゃまもよく転ぶだろ?」


ブッダピアス

「……ふっ(認めた)」


カーマ

「あははっ♡ わかる〜!!

ほら、断絶したらもう会えないかもなんだし〜

私もついてくよ? ね? たま♡」


プリンスたま

「ついてくのは止めないよ。

ただ――“邪魔だけはするな”。

悟りってね、意外と静かだから」


カーマ

「じゃあ静かに誘惑する♡」


プリンスたま

「矛盾!!!」


ブッダピアス

「……ふっ(楽しんでる)」


プリンスたま

「……まぁいいや。

賑やかな旅も悪くない。

寂しさって、静かすぎると形になるからね。

こうやって騒いでる方が――その先で泣かなくてすむ」


カーマ

「泣いたの?たま♡」


プリンスたま

「悟っただけだよ」


ブッダピアス

「……ふっ(優しい)」


プリンスたま

「さ、行こうか。

次に神ちゃまに会うとき、

“あの人が泣かない世界”を持って帰るために」


カーマ

「はーい♡」


ブッダピアス

「……ふっ」


三界断絶まで あと残り1日。

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