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神々、掲示板に降臨す 〜天界勤務中、うちの神、業務中にスレ立ててる件〜  作者: 物書狸。
最終章:祈りの終わる場所で

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第77話 かすかな兆し。

【現世ニュース】


「——師走に入りました。

本日、北海道から北陸にかけて“この冬一番の豪雪”となっております。

交通機関は一部で遅れが出ており……」


スタジオのアナウンサーが当たり前の顔で読み上げる。

その“当たり前”が、ひかるんには少しだけ不自然に見えた。


(……なんか、静かだよな)


つい昨日まで、三界はもっと騒がしかった。

天界は天照の光がぐるぐるまわってたし、

地獄は妲己とカーマが“炎上で経済回す♡”とか言ってたし、

現世にもその余波がじんわり届いていた。


でも今は——雪の音しかない。


ひかるん

「……なあ、あかり。なんか最近“静か”じゃない?」


ソファに座ったまま、ニュース画面をぼんやり指差す。


あかり

「静か、ですか?」


ひかるん

「うん。

前までさ、時間が逆に走ってるんじゃないかってくらいバタバタしてたじゃん。

神界はロックダウンだの、地獄は再建だの、天照さんはなんか光でWi-Fi飛ばそうとするし……」


あかり(小さく笑う)

「そんなことも、ありましたね」


ひかるん

「“断絶”って本当に必要なのかなあ……。

だってさ、こうやって静かになられると……逆に不安にならない?」


言葉の最後が少し弱くなる。

現世の普通の高校生の“本音”が、そのまま落ちた。


あかり

「……不安にならないって、いいことじゃないんですよ」


ひかるん

「え?」


あかり

「不安になるって、生きてるからです。

生きてるから、未来を考えて、

『どうしようかな』『こうしたいな』って思うんですよ」


ひかるん

「……そっか」


あかり

「それに……私たち、神様に頼りすぎてたんだと思います。

全部どこか“向こう”で調整してくれてるって思って。

だから、静けさが来ると……自分で考えるのが怖いんです」


ひかるん

「……それ、刺さる」


あかり(微笑んで)

「でもね。

自分で考えることって、悪いことじゃないですよ。

不安になるのも、迷うのも、全部“現世の人間”の強さなんです」


ひかるん

「……あかりって、やっぱすげぇな」


あかり

「え?普通ですよ。

普通に悩んで、普通に笑ってるだけです」


ひかるん

「でも“普通”ってたまに最強なんだよな。

神様も天照さんも出来ない、“人間の普通”。」


その瞬間、

静かな部屋の窓に、ふわっと雪が張りついた。


世界がほんの少しだけ冷えて、

ほんの少しだけあたたかかった。



ひかるん

「なぁ、あかり。

俺らさ……最後になんか“恩返し”できねぇかな?」


あかり

「恩返し、ですか?」


ひかるん

「ほら、信仰ポイントとか……俺のフォロワー総動員して送るとかさ!

それくらいならできるだろ?」


あかり

(小さく笑う)「……ひかるんらしいですね」


ひかるん

「なんだよその顔。けっこう本気なんだけど!」


あかり

「でも、いらないと思いますよ」


ひかるん

「なんで?」


あかり

「そんなことしたら……

神さま、絶対こう言いますよ」


声を少し低くして、真似をする。


あかり

「わし、現世残るーーー!って」


ひかるん

「……言うわ。絶対言うわ」


あかり

「でしょう?

あの人、優しいけど……寂しがりですから」


ひかるん

「……まあな。見てたらわかる。あの人、情が深ぇよな」


あかり

「だから、恩返しは“足す”んじゃなくて“伝える”だけでいいんです」


ひかるん

「伝える?」


あかり

「はい。

“今までありがとう”って。

“あなたのおかげで頑張れました”って。

それだけで、神さまは十分なんですよ」


ひかるん

「……そういうもんかねぇ」


あかり

「そういうものですよ。

太陽の光って、強すぎると見えないでしょう?」


ひかるん

「まあ……確かに」


あかり

「だから、夜になったらいいんです。

月に向かって、静かに伝えれば」


ひかるん

「月に?」


あかり

「“今日も見てますか?

いつもありがとうございます”って」


ひかるん

「……なんかそれ、めっちゃ良いな」


あかり

「でしょ?

神さま……太陽なのに、月から見守られる時が一番落ち着くんですよ、きっと」


ひかるん

「……なんか、あかりって時々バチクソ詩人だよな」


あかり

「普通ですよ。

普通に、誰かに届けばいいと思ってるだけです」


ひかるん

「……よし。じゃあ俺、今日の夜から月に向かって言うわ」


あかり

「はい。

それが“一番の恩返し”です」


闇が落ちる、というより。

世界の端が、そっと音をひそめた。


ロキ

「……始めるぞ、夜叉。

三界断絶の、最終調整だ」


夜叉

「……はい」


風が通る気配だけが、現世と地獄の境を撫でていく。


ロキ

「現世も、ようやく息を整えたようだな。

あの二人……人間にしては、よくやった」


夜叉

「人は弱いのに、強いですね」


ロキ

「弱いから、強くなる。

それが“人”という種だ」


静かな間。


ロキ

「さて。

まもなく、この“扉”は閉じる」


夜叉

「……しかし、どこか開く気配も」


ロキ

「気配だけだ。

名をつけるほどのものではない。

だが──芽はあった。

小さく、静かに」


夜叉

「それは……希望、でしょうか」


ロキ

「呼び方に意味はない。

起きるべきことが起きるだけだ」


ロキが歩き出すと、境界が微かに震えた。


ロキ

「行くぞ、夜叉。

この静けさが長く続くよう……仕上げる」


二人の影が、そっとほどける。


世界はまだ誰も知らないまま、

ゆっくりと“境界”を閉じ始めていた。


仏門スレッド:現世観測】


舎利弗:

「本日の現世。

豪雪と、ひかるん殿と、あかり殿の“静かな気づき”。

以上である」


富楼那:

「ひかるん殿、フォロワーで信仰押し上げようとしてて草」


須菩提:

「押せば満ちると思うのは“執着”なり。

満ちる前に、空である」


阿難:

「でも“ありがとうを伝える”って大事だよね。

あかり殿の言葉、なんか染みたわ」


阿那律:

「月を介した祈り……。

断絶後にも“かすかな道”が残る兆候アリ。

以上、未来予報」


優波離:

「神さまが現世残るとか言い出す可能性は風紀的にアウト。

あかり殿の判断は正しい」


富楼那:

「てか月に向かって“今日も見てますか”って言うの、

ちょっと詩的で好きなんだが?」


須菩提:

「詩はすなわち空。

しかし空は詩ではない」


富楼那:

「……いや、わかんねぇよ!」


舎利弗:

「以上。現世は今日も揺らぎつつ、整いつつある。

断絶準備、進行中」


摩訶:

「……静寂に戻ろう。」



神さま

「わ、わし……やっぱ現世残るーーーー!!

だって妲己ちゃんの写真集、あっちなら天照に怒られんし!!」


天照

「…………本気で言ってるの?」


神さま

「えっ……いや、その……ちが……」


天照

「わかったわ。

つまり……“私じゃだめ”なんだね?」


神さま

「ち、ちがう!

天照、聞い──」


愛神(A.I.kami☆)

「これは愛? これは嫉妬?

計測……できません。

しちゃいけませんっ……!!」


天照

「じゃあ──

私の写真で我慢してね♡」


神さま

「…………っ!?」


愛神

「これは……

これは……っ

愛です♡

だめですこれ、笑っちゃいます♡」


神さま

「お、おぬしら……やめぬかぁぁぁ!!」


三界断絶まで。残り2日。

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