表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/87

第8話 神様、広告代理店に転職する

「信仰が減った? なら増やせばいいじゃない。」


天界会議室。

金色の天蓋の下、重役たちが沈痛な顔で数字を見つめていた。

「信仰指数、先週比マイナス23パーセント。」

「若年層の祈り離れが止まりません。」

「供物課のボーナスカットも避けられないかと……」


創造神は立ち上がった。

神々の視線が一斉に集まる。


「諸君、問題は簡単だ。人は我々を忘れた。ならば――思い出させればいい。」


ルシファーが嫌な予感しかしない顔で呟いた。

「またスレ立てですか……?」

「違う。」

神様の眼がぎらりと光る。

「広告だ。」



天界PR部、誕生


こうして天界に「信仰広告部」が設立された。

マアトが倫理監査担当、ルシファーが謝罪担当。

スローガンは「バズれば信仰は戻る」。


最初の広告案がこれだ。


『祈れば光る。信じれば燃える。#神活しよう。』


「……炎上確定ですね」とルシファー。

「炎上は神聖なる照明よ」と神様。

マアト「倫理的にアウトです。」

「倫理よりエンゲージメントだ。」


マアトのこめかみの血管が音を立てた。



地獄との商談


「で、御社の広告枠、まだ空いてるかしら♡?」


地獄観光局の会議室。

妲己が笑顔で迎える。

閻魔はすでに頭を抱えていた。


「天界がスポンサーとか聞いてねぇぞ……」

「契約書には“光と愛のプロモーション”って書いてあったのよ♡」

「お前、それ絶対炎上案件だろ……」


神様は嬉しそうにパンフレットを広げた。

「今回は“地獄も天界もみんな友達キャンペーン”です!」

閻魔「内容が不穏だ。」

妲己「可愛いじゃない♡」

神様「地獄観光便に“聖なるマイル”を導入しました!」

閻魔「どこの航空会社だよ。」



その頃、掲示板では

【速報】神、広告代理店を設立

1 名前:名無しの神 ID:god000

 また始まったな。


2 名前:名無しの天使 ID:luci_444

 今回、僕は謝罪しません。


3 名前:名無しの地獄民 ID:bee666

 スポンサー料うめぇッス。

【新広告】#神活しよう がトレンド1位

 →1時間後 #神燃えろ が2位に浮上

愛と光のキャンペーン


天界と地獄の共同企画――“愛と光のキャンペーン”がスタートした。

CMソングは観音プロデュースの癒し系。

ナレーションはルシファー(無理やり)。


だが、公開30分後。

コメント欄が地獄になった。


「照度オーバーで失明した」

「広告の最後の笑顔が怖い」

「信仰誘導ってステマじゃね?」


天界広報部、サーバーダウン。

地獄観光局、笑顔でアクセス解析中。



「大成功ね♡」妲己が笑う。

「いや、これ大炎上だぞ!」閻魔。

「だって“愛と光”が燃えてるんだもの。」

「もう何言ってるかわからん!」


ルシファーが項垂れながら言った。

「神様、また謝罪動画を出しましょうか……」

神様は椅子をくるりと回し、モニターを指差した。

「見ろ。トレンド1位、“#祈れば光る”。」

「いや、“#祈れば焦げる”に変わってます。」

「誤字だ。愛嬌だ。」



そして光が落ちた


その夜、天界がまた停電した。

光が強すぎて、電力が落ちたのだ。

ルシファーは懐中電灯を灯しながら呟く。

「神様、これが照明の奇跡ですか……?」

「そうだ。闇があれば、また光が求められる。」

「いや、闇作ってるの自分ですけどね。」


神様は少し笑って、椅子に背を預けた。

「――信仰ってのは、思い出させる努力だよ。どんな形でも。」


遠くの地獄の街に、妲己の看板が光っていた。

「#地獄も、信じれば輝く♡」


妲己「ねぇ神様、次は“地獄と天界の合同音楽祭”どう?」

神様「採用。タイトルは“神フェス2025”。」

ルシファー「やめてください。」

閻魔「俺もう無理。」



次回予告


第9話「太公望、釣りから帰らず」

世界が騒がしくなる中、

一人の仙人が、静かに海を見ていた。

「――釣れたのは、神の未来だった。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ