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神々、掲示板に降臨す 〜天界勤務中、うちの神、業務中にスレ立ててる件〜  作者: 物書狸。
最終章:祈りの終わる場所で

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第70話 プリンスたま、旅立ちを決める——笑いの奥の本音

少し人の気配が減った天界の端。

宴みたいなざわめきも届かない場所で、神様とプリンスたまが並んで座っていた。


沈黙が、すこし長い。


神様

「……ぐふふ。

静かじゃのう、ここは。」


プリンスたま

「うん。

かみちゃまが静かにしたい空気、わかる場所だよ。」


神様

「べ、別に静かにしたいわけでは……その……落ち着くというか……」


たまは肩をすくめるように笑う。


プリンスたま

「かみちゃまってさ、

“落ち着く”と“逃げたい”の区別つけにくいタイプだよね〜。」


神様

「の、のう……お主は本当に、あれじゃな……

ぐ、ぐふふ……口が悪い……」


プリンスたま

「悪くないよ〜。

俺、かみちゃまの味方だもん。」


神様の指が、気づかないほど小さく揺れた。


プリンスたまは空を見る。

その角度のまま、ふっと声を落とした。


プリンスたま

「……かみちゃま。

俺わかってるから大丈夫だよ。」


神様

「……な、何をじゃ……?」


プリンスたま

「かみちゃまが一番みんなとお別れしたくなくて、

いちばん頑張ってるの。」


神様

「…………」


プリンスたま

「だから今だけは泣いていいんだよ?」


その言い方は軽い。

でも、軽いからこそ刺さる。


神様

「ぐ、ぐふふ……泣いてなどおらんぞ……!

儂は……そんな弱い……ぐ……弱い……」


声が、ほんの一ミリ震えた。


プリンスたま

「ね?

その声。

強がりの時のやつだよ。

俺、ずっと見てきたもん。」


神様

「……たま、よ。

儂は……儂はの……

みんなと……笑って終わりたかったんじゃ……

ぐふ……終わりがな……寂しいのは……のう……」


プリンスたま

「うん。

寂しいよ。

かみちゃまが誰より寂しいの、俺ちゃんとわかってるよ。」


神様

「…………

すまんのう……

本当はもっと、強くおらねばならんのにな……」


プリンスたま

「強いよ、かみちゃまは。

誰より。

でも、強い人ほど泣くんだよ。

誰も見てない場所で。」


神様

「ぐ、ぐふ……

お主……言うことが……刺さるのう……

ぐふふ……儂が泣くなど……」


プリンスたま

「隠れて泣くの、上手いよね。

でもね、

今日は隠れなくていいんだよ?」


沈黙。

風の音だけが動く。


神様

「……たま。

儂はの……みんなと……二度と会えんと思うと……

胸がきつい。

創造神じゃのに……こんなにも、きつい。」


プリンスたま

「きついのは、

それだけ“愛してる”ってことだよ〜。」


神様

「……たま。

儂は……愛しておったんじゃろうか……

みんなを……

天照を……

人間を……

この世界を……

ぐふ……

こんなに……苦しいのに。」


プリンスたま

「かみちゃま。

“苦しい=愛してる”だよ。

愛してなきゃ、痛くもないよ。」


神様

「…………

たま。」


プリンスたま

「泣いてもいいよ。

泣いたらね……ちゃんと前に進めるから。

かみちゃまは、そういう人だよ。」


神様が、小さく息を震わせる。


神様

「……ぐ……ふ……っ……

たま……

儂は……どうすれば……」


プリンスたま

「まっすぐでいいよ。

寂しいって言って、泣いて、それからまた笑えばいい。

全部込みで、かみちゃまなんだから。」


神様

「……たま……

儂は……儂はの……

寂しい……

本当に……寂しいんじゃ……」


プリンスたま

「うん。

知ってたよ。」


神様の肩が、そっと落ちる。

その一瞬だけ、神様は“神様じゃなくて”、

ただの一人の人の形をしていた。


プリンスたま

「ほら。

泣いても大丈夫な時間、作っておいたよ。

かみちゃまのために。」


神様

「……たま……

儂は……儂は……

ありがとう……」


たまは笑って、軽く背中をぽんと叩いた。


プリンスたま

「はいはい。

泣いたらスッキリするやつ〜。

ほら、いまのうち。」


神様

「……ぐ……ふ……っ……

たま……

すまん……

すまんのう……」


プリンスたま

「すまんじゃなくて“ありがとう”でいいんだよ。

ね、かみちゃま。」


ふたりの間だけ、風が止まる。


天界の片隅、夕方の光がゆるく差し込む。

みんなが各自の準備に散っていって、そこだけぽっかり静か。


プリンスたまが、勢いそのままに近づいてくる。


プリンスたま

「ブッダピアスちゃ〜ん!」


ブッダピアス

「…………」


プリンスたま

「ねぇねぇ、聞いてよ。

さっきさ、かみちゃまの顔見た?」


ブッダピアス

「…………見た。」


プリンスたま

「でしょー!?

あれ完全に“だいじょぶな顔してる時ほど大丈夫じゃない”やつ!」


ブッダピアス

「…………うん。」


プリンスたま

「だからさ。

かみちゃまの“ほんとの想い”、

ちゃんと誰かが広めなきゃダメじゃん?」


ブッダピアス

「…………」


プリンスたまが、ふっと声を落とす。


プリンスたま

「かみちゃま、誰よりもみんなと離れたくないんだよ。

みんなを安心させようって……

めちゃくちゃ頑張ってんの。

ああいうの……言わないけど、全部背中に出てんの。」


ブッダピアス

「…………背中。」


プリンスたま

「そうそう!

肩のあたり! あれ見ればわかるんだよ〜。」


一拍置いて、プリンスたまが笑う。

でも、その笑いはちょっとだけ静かだ。


プリンスたま

「……ねぇ、ブッダピアスちゃん。」


ブッダピアス

「…………なに。」


プリンスたまが胸に手を当てるみたいに、軽く前に出る。


プリンスたま

「ブッダピアスちゃーん! 一緒にさ、旅しよう!

二人で “かみちゃまはこんなにみんなのこと好きで、

みんなを安心させようって日々頑張ってるんだよー!” って

広めてこーよ!!」


声は明るいのに、目だけ真剣だ。

この“軽い言い方”が、プリンスたまの本気の合図。


沈黙がひとつ。

ブッダピアスは視線をゆっくり落として、

そのまま短く息を吐く。


ブッダピアス

「…………行こう。」


その“行こう”は、

どんな長い言葉より重くて優しい。


プリンスたま

「よっしゃあ〜!

やっぱりブッダピアスちゃん、わかってる〜!!

二人でならいけるよ。

だって、“光のペア”だもん!」


ブッダピアス

「…………光?」


プリンスたま

「そう!

かみちゃまの光を、受け取って、

そのまま現世に持ってく“ペア”!

ぼくらがやらなきゃ誰がやるのよ〜!」


ブッダピアス

「…………うん。」


静けさの中に、ふたりの決意がぽっと灯る。


プリンスたま

「じゃ、決まり!

二週間後、出発ね。

楽しみだな〜〜!」


ブッダピアス

「…………準備、しておく。」


プリンスたま

「さすがブッダピアスちゃん。

かみちゃまも喜ぶよ〜……

っていうか、絶対泣くね。わかるもん。」


ブッダピアス

「…………泣く。」


プリンスたま

「うん、泣く。

それがあの人の強さだし、優しさなんだよね〜。」


ふたりは並んで立つ。

夕日の光がゆっくり傾き、

“光のペア”の影が長く伸びた。


プリンスたま

「いやぁ〜、かみちゃまの会見……

あれ、普通じゃできないよね〜。

あんな怖い空気でよ? よく倒れなかったなぁって思うわけ!」


ブッダピアス

「…………(うなずく)」


信長は少しだけ目を閉じ、

二人をゆっくり見た。


信長

「……お主らのような“本物”であれば、

わしは焼き討ちなどせなんだのにな。」


プリンスたま

「えっ、急に重っ!

でもさ、なんかわかるよ?

“本物”ってさ……

強いとか偉いとかじゃなくて――

逃げないやつなんだよね。」


ブッダピアス

「…………」


たまは肩をすくめる。


プリンスたま

「かみちゃまもそう。

あの人さ、怖がりのくせに……

ぜんぶ自分で背負っちゃうじゃん。

泣きたいときも、笑うし。

だから……俺ら、行くんだよ。」


信長

「現世か。」


プリンスたま

「うん。

かみちゃまがどれだけ“愛してる人”なのか、

広めてくるの。

みんな安心するじゃん?

“あの神様なら大丈夫だ”って。」


ブッダピアス

「……行こう。」


たまが笑った。


プリンスたま

「ね? ブッダピアスちゃんもそのつもりだったんでしょ。

ほら、俺たち二人いればなんとかなるって。

かみちゃまの“良さ”は伝染力あるし!」


信長

「……おぬしらは、軽いようで……

芯は折れぬな。」


プリンスたま

「褒められた? 今の褒められた?

歴史上の大人物に褒められるなんて……

やばい、ちょっとテンション上がる!」


ブッダピアス

「…………(微笑)」


信長

「行け。

その軽さと、その静けさ……

両方持っておる者は、そうおらぬ。」


プリンスたま

「……行くよ。

かみちゃまの“泣けなかった涙”、

ちょっとだけ拾いにさ。」


ブッダピアス

「……うん。」


三人の間に、静かで強い空気が落ちた。





太公望

「……静かじゃのう。」


風の音だけが返ってくる。


太公望

「潮目が、変わったわい。

あやつが“二週間”と言うたとき……

世界の底で、何かがひっくり返った気がした。」


少しだけ間。


太公望

「ほんに……

あの子は、ようやっとるよ。

誰より笑って、誰より無茶して、

誰より寂しがりじゃ。」


短く息を落とす。


太公望

「さて。

ここから先、釣れるのは……

“別れ”か、“始まり”か。

……どちらにせよ、

逃げても避けても、波は来る。」


波の音がひとつ。


太公望

「ぬらりも夜叉も……

気づいとるじゃろ。

これは終わりやない。

“動くための静けさ”じゃ。」


また間。


太公望

「神様が泣く日は、

おそらくすぐそこじゃ。

泣いたあと……

あやつは、必ず歩く。

そのとき世界がどう揺れるか……

わしも見届けねばのう。」


静けさが戻る。


太公望

「……さて。」

「次に釣れるのは……

“誰”じゃろうな。」


1:名無しの天界民 

 プリンスたま……旅立つんだな……


2:名無しの地獄観光客 

 神様、泣いてたろあれ。可愛すぎ。


3:名無しの歴史ガチ勢 

 信長の台詞エグい。刺さる。


4:名無しの現世民 

 ブッダピアスの“間”が優しすぎる……


5:名無しの仙人オタ 

 太公望の言葉、今日も当たりそうで怖い。


6:名無しの読者 

 2週間後、ほんとに何が起こるの?


【仏門スレ】


舎利弗

「──まとめよう。

神様の謝罪に三界が揺れ、

それぞれの想いがひとつ場に集まった。

だが混乱ではなく、

“見守る”という姿勢が今日の答えだ。」


須菩提

「人の声も、神の声も……

実体はつかめぬ“空”である。

触れようとすれば散り、

そばにあれば自然に満ちる。

今日の静けさもまた、空なり。」


阿難

「……落ち着きましたね。

この場は、しばらく静観が良いでしょう。」


阿那律

「未来の揺れ……読めはしませんが、

“よい風”がひとつ、入ってきました。」


優波離

「風紀的には問題なし。

騒ぐより、今日は静かであるべき。」


摩訶

「…………

……静寂に戻ろう。」



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