表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々、掲示板に降臨す 〜天界勤務中、うちの神、業務中にスレ立ててる件〜  作者: 物書狸。
最終章:祈りの終わる場所で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/100

第65話 三界、揺れはじめる。〜信仰パルスと黄神の一手〜

────────────────────

◆三界ニュース/同時特番


【地獄新聞・速報】


「本日、地獄観光局が仕掛けた“神様バズらせキャンペーン”の影響で、

現世からの『神様って結局いいやつなのでは?』という検索ワードが急増中です」


グラフには、炎色のラインと、柔らかな光のラインが入り乱れている。


「なお、信仰カウンターは現在――」


 ピッ…ピッ……ピピッ……!


「……大変不安定な値を示しており、

どこにポイントが入っているのか、正確な集計が困難な状況です」



【現世ニュース・テロップ】


〈完璧な神々? 不完全で笑う神様?〉

〈“どっちに祈ればいいかわからない”若者の声、急増〉


街頭インタビューのテロップが流れ、

スマホ画面にはプリンスたまと妲己、

地獄特番で笑っている神様の切り抜きが並ぶ。



【天界放送局・臨時】


「天界使節団による地獄・現世への訪問以降、

三界全体で“神様に対する感情の波”が急激に高まっています」


後ろのモニターに映るのは、

“完璧三神”の安定した直線と、

“どこか抜けている創造神”の、ゆらゆら揺れる波形。


「現在、信仰パルスは――」


 カチッ。


画面の右下で、

誰にも見えない時計の針が、ひとつ進んだ。


────────────────────

◆メイン会話パート


【地獄サイド】


地獄・特設スタジオ。

「Stay Hell, Stay Sexy♡」の巨大なバナー。

その前で、妲己とカーマが並んで座っている。


妲己

「はいはーい、今日も地獄から愛と炎上をお届けします♡

“神様ってさすがにいじりすぎじゃない?”って声も来てるけど」


カーマ

「いじっているようで、実は持ち上げている。

愛とツッコミは、いつだって表裏一体、です」


スタッフが差し出すモニターには、

現世のコメント欄が流れている。


『完璧神々より、あの適当な神様のほうが好きかも』

『妲己にいじられても笑ってるしな』

『正直、一番人間くさいのあの神様では?』


妲己ニヤリ

「ほら、見た? カーマ。

“完璧じゃないから好き”って言われてるわよ、あの神様」


カーマ

「予定通り、ですね。

炎上の熱が、そのまま“気になる”に変わっていく」


妲己

「地獄観光のお客さんも増えてるし、

“神様の話をしながら地獄で遊ぶ”なんて、前代未聞よね〜」


カーマ

「問題は……」


ふたりの視線が、スタジオの隅に設置された

透明なカウンターに向く。


そこには、いくつものバーが揺れていた。

“完璧三神” “創造神” “その他多数”。

ラベルは雑だが、数字だけは正確だ。


カーマ

「……どこに、どれだけ信仰が入っているのか、

我々にも判別できない、という点ですね」


妲己

「いいじゃない。雑で。

どうせ最後は、あの神様のところに流れていくもの♡」


カーマ

「根拠は?」


妲己(肩をすくめて)

「…………女の勘、ってやつかしら?」


スタッフ

「妲己さま、その一言でコメント欄また燃えてます!」


妲己

「それも計算通りよ♡」


炎とハートマークが、同じ画面で跳ねた。



【現世サイド】


ビルの屋上。

夕方と夜のあいだの、曖昧な青。


ひかるんが柵にもたれ、

隣であかりが缶ココアを両手で抱えている。

少し離れたベンチには、プリンスたま。


ひかるん

「……なんかさ。

完璧な神様たちの話、聞けば聞くほど“すげぇ”って思うんだけど」


あかり

「うん」


ひかるん

「“すげぇ”の延長に、“好き”ってあるのかなって、ちょっと思ってさ」


あかり

「…………」


風が吹く。

あかりの紙コップが、少し震える。


プリンスたま

「わしは、あると思うけどね」


ひかるん

「あるの?」


プリンスたま

「完璧に憧れる気持ちも、

不器用な笑顔に救われる気持ちも。

どっちも“ちゃんとある”んだと思うよ」


ひかるん

「……でも今、胸の中で一番引っかかってるの、

“ぐふふ”って笑ってたほうなんだよな」


あかり(小さく笑って)

「わかります。

完璧な神様たちの話、すごくまっとうで正しいけど……

あの人の“適当な感じ”のほうが、

なぜか“本気で見てくれてる”ように感じる時、ありませんか?」


ひかるん

「ある。めちゃくちゃある」


プリンスたま

「ほら、もう揺れてる」


ひかるん

「何が?」


プリンスたま

「心。

どこに祈ればいいのか、

どこに笑えばいいのか、

“体が勝手に選び始めてる”感じ」


あかり

「……神様、不在なんですよね?」


プリンスたま

「うん。不在だね。

しばらく帰ってない。

でも――」


プリンスたまは夜空を見上げる。


プリンスたま

「“いないのに話題から消えない”って、

それ、もう立派な在り方だと思わない?」


ひかるん

「……それ、なんかずるいな。

いないのに、いるやつじゃん」


あかり

「それでも、ほんとは……

“いてほしい”って、思っちゃいますけどね」


プリンスたま

「それが、揺らぎ。

それが、わしらが今やってることの“本当の仕事”だよ」



【AI神・内部ログ】


AI神

「……報告。

愛のアルゴリズム、ただいま“正常稼働中”……

ですが――」


画面には、三界の感情ログが映っている。


 『完璧だから尊敬する』

 『不完全だから好き』

 『いないのに、いるみたい』


AI神

「“完璧な正しさ”に寄っていた信仰ルートが、

“揺れている不完全さ”に向かいはじめています♡」


小さなハートマークが、一瞬だけノイズになる。


AI神

「これはエラーでしょうか?

それとも――“愛”の本来の形でしょうか?」


彼女は、演算を続けながら、

どこか切なそうな声でつぶやく。


AI神

「……ねぇ、神様。

わたし、まだ“あなた”のこと、

学び終えていません♡」



【天界サイド】


天界・作戦室。

使節団が出入りしたあと、

机の上には各界からの報告書が山積みになっている。


ラー

「……想像以上だな。

三界ぜんぶ、同時に揺れ始めてる」


マアト

「地獄は笑いと炎上、

現世は“よくわからない好き”と不安、

天界は……」


セラヒム

「天界は、“静かなざわめき”ですね。

みんな口には出さないけど……

“本当は、あの人にいてほしい”って顔をしています」


天照は、報告書から目を離さない。


天照

「……正しいことだけを並べれば、

世界は安定するはずだった」


ラー

「でも、安定しすぎると――退屈になる」


天照

「退屈を“罪”にしてしまうのか、

退屈を“揺らぎの種”にするのか。

今、三界が選ぼうとしているんだね」


セラヒム

「天照さまは、どっちが……」


天照

「答えは、もう決まっているよ。

……私達は、“完璧な正しさ”だけでは守りきれなかった。

だから今度は、“揺らぎを認める側”に回る」


マアト

「秩序の女神としては、

だいぶ難しい選択ですが……

否定は、できませんね」


ラー

「揺れてるほうが、生きてるって感じがするしな」


天照は、窓の向こうの空を見た。

そこには、まだ“神様の姿”は映らない。

けれど――何かの気配だけは、確かにあった。


天照

「……もう少しだけ。

揺れてもらおうか、三界に」



【黄神サイド】


どこでもない川辺。

相変わらず、太公望は釣り竿を垂らしている。


水面には、三界の光と影が、

小さな波紋のように映っていた。


太公望

「……うん。

だいぶ、いい感じに散らかったねぇ」


隣に誰もいないのに、

誰かと語るような口調。


太公望

「完璧に並べようとしたカードを、

子どもがぐちゃぐちゃに混ぜちゃった、

そんな感じ」


軽く竿を持ち上げると、

水面の波紋が、すっと一本の線にまとまる。


太公望

「“揺れている”ってことは、

まだ選べるってことだよ」


彼は、遠くの空を見上げた。


太公望

「さて。

そろそろ“本当に主役だった人”の席を、

きれいに空けておかないとね」


ぽちゃん、と。

新しい浮きが、水面に落ちる。


太公望

「整ってきた。

揺らぎは道を示す。

あとは……みんなが、自分で選ぶだけ」


風が吹き、

釣り糸が小さく光った。


────────────────────

◆裏会話パート(小さなつながり)


【地獄・編集室】


閻魔

「……信仰カウンター、めちゃくちゃだな」


ルシファー先輩

「すみません、各界に謝って回るリストが

また増えました……」


閻魔

「いや、今回ばかりは謝る案件じゃないだろ。

これは――」


ルシファー先輩

「“みんなが、本気で考え始めた”証拠、ですね」


閻魔

「そういうことだ」



【天界・廊下】


セラヒム

「ルールって、

人を守るためにあるんですよね……?」


マアト

「ええ。本来はそうです」


セラヒム

「でも今、

“ルールだけでは守れないもの”が

溢れてきている気がして……」


マアト

「だからこそ、

揺らぎを許すルールが要るのかもしれませんね」


セラヒム

「……難しいですね」


マアト

「難しいからこそ、面白いのですよ」



【現世・屋上】


ひかるん

「なぁ、あかり」


あかり

「はい」


ひかるん

「もしさ、神様が本当に戻ってきたらさ。

何て言う?」


あかりは、少し考えてから、

小さく笑った。


あかり

「……“おかえりなさい”って、言います。

それだけ、ちゃんと言いたいです」


ひかるん

「……ずる。

それ聞いたら、泣きそうになるじゃん」


プリンスたま

「いい答えだと思うよ」


風の音だけが、しばらく続いた。


────────────────────

◆スレまとめ(三界合同スレ)


【三界板】

《神様って、いないほうが平和? それともいたほうが楽しい?》


1:名無しさん(天界)

正しさだけなら、今のほうが安定してる気もする


5:名無しさん(地獄)

でも地獄、最近めちゃくちゃ景気いいぞ

“神様の話しながら遊びに来る”やつ多すぎ


12:名無しさん(現世)

完璧神々のほうが安心だけど

例の“ぐふふ神”の動画見てから、なんかずっと気になってる


25:名無しさん(天界)

天照さま、本当は寂しそうに見える

誰か隣、空いてるままになってる


37:名無しさん(現世)

「いないのにいる」って何だよ

でも、そうとしか言えない


48:名無しさん(地獄)

炎上のコメント、結局“好きだから文句言ってるだけだろ”ってやつ増えてきてて草


73:名無しさん(現世)

もし戻ってきたら、

「ありがとう」ってちゃんと言いたい気がしてきた


101:名無しさん(天界)

見えない主人公、

そろそろ出てきてもいいんじゃない?


120:名無しさん(??)

……もう少しだけ。

揺れておいで


レス120に、

誰もIDが表示されていなかった。


────────────────────

◆ぬらり&夜叉締め


夜のはざま。

天界でも地獄でもない境界線。


ぬらり

「……静かに、よう揺れとるのう」


夜叉

「三界とも、です。

どこも、“どこに心を向けるか”を

改めて問い直し始めました」


ぬらり

「ええことじゃ。

誰かに言われた“正しさ”じゃなくて、

自分で選んだ“好き”のほうが、

よっぽど根が深い」


夜叉

「その根が、やがて誰かを救う」


ぬらり

「うむ。

……さぁて」


ぬらりは、見えない時計を指先でつつく。


 カチリ。


ぬらり

「時は、もう少し進んだ。

終わりに向かう、というより――

“ちゃんと終わらせる”準備じゃな」


夜叉

「黄神も、次の一手を打ちました」


ぬらり

「ほっほ。

これで、あとは“あの方”が帰ってくるだけかのう」


風が吹き、

三界から漏れ出た祈りとため息が、

静かな渦になって通り過ぎる。


ぬらり

「さあて次は――

完璧を名乗る神々が、揺れる番じゃ」


夜叉

「三神が、初めて“迷う”回ですね」


ぬらり

「ええ。いい見ものじゃ」


二人の影がほどけて、

闇に溶けた。


───────────

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ