第63話 天界、動き始める。〜光と影の測り直し〜
──────────────────────────
◆天界ニュース/臨時
【天界放送局】
「……本日、天界評議室は急遽“共同連絡会”の招集を決定しました。
地獄・現世との“連携強化”を念頭に、天照さまご自身が指揮を執られる模様です」
キャスターの声は淡々としている。
けれど、その背後――
天界の廊下を、誰かが速いテンポで歩く音が響いている。
その人こそ、天照。
その歩みは静かで、でも“急いでいる”。
天照(小声で)
「……ここから先は、待ってるだけじゃだめ」
後ろからセラヒムがメモを抱えて走る。
セラヒム
「天照さま! ひ、評議室、そちらじゃなくて……あっ、そっちは倉庫です……!」
天照
「……ごめん。考え事してた」
ラー(遠くではしゃいで)
「おーい!天照!こっちだってば!道まちがえてんぞー!」
信長(ゆっくり歩きながら)
「ふむ……天照殿ほどの御方でも、迷うことはあるか。
いや、これは迷いというより――“考えすぎ”か」
プリンスたま(ポケットに手突っ込んで)
「ほら、雰囲気重くなる時は、軽く揺らす誰かが必要だろ?
俺は散歩気分でついていくよ」
天照(苦笑して)
「……頼りにしてるよ、みんな」
その声には柔らかな震え。
でも“前に進む決意”の熱があった。
──────────────────────────
◆会話パート(天界評議室)
天界評議室。
壁いっぱいに並んだ、三界からの最新ログ。
地獄の炎のニュース。
現世のざわつくスレッド。
そして、天界の空白。
マアト(ログを淡々と並べ替えながら)
「地獄と現世は“動き”始めています。
天界がこのまま静止していることは、むしろ混乱の火種になります」
信長
「うむ。同意だ。
わしから見ても、天界が動かぬままでは“乱世の予兆”のようなものじゃ」
プリンスたま(軽くイスを回しながら)
「さて天照。どう動く?
“光の頂”としての一手、そろそろ見せる頃だよね」
天照
「……示すよ。
天界として、三界すべてに“正式な声明”を出す」
セラヒム(息を呑む)
「せ、声明……」
天照は静かに頷いた。
天照
「“神様不在の今、天界は三界の安定を共に支えます”
それを、地獄・現世に送る。
その準備を今日から始める」
マアト
「……それは、“天照さまの戦い方”ですね」
プリンスたま
「うん。争いじゃなくて、光の側から寄り添うやり方だ」
信長
「しかし、声明だけでは弱いぞ?
言葉だけで人心は動かぬ。行動で示すのが肝要よ」
天照
「わかってる。
だから――“同行チーム”を作る」
ラー
「同行チーム?」
天照
「天界から直接、地獄と現世に向かう“使節団”を送る。
顔を合わせて、声を届ける。
そのうえで声明を出す」
その瞬間、空気が一気に引き締まった。
マアト
「……ずいぶんと攻める決断ですね」
天照
「もう、“待つ天界”ではいられないから」
セラヒム
「ひ、人選は……?」
天照(迷いなく)
「ラー、セラヒム、マアト、信長、プリンスたま。
そして……私も行く」
ラー
「お、天照も来るのか!」
信長
「危険ゆえ、わしが前に立とう」
プリンスたま
「面白そうだし、俺も行くよ。
久々に地獄の空気でも吸ってこようかな」
マアト(小さく息を吐いて)
「了解。
わたしは“秩序”の観点からサポートします」
セラヒム(メモを握りしめて)
「わ、わたし……! が、頑張ります!!」
天照はチームを見回し、静かに笑った。
その微笑みの奥に、“淡い影”がふっと灯る。
ラー
「……天照、今ちょっと影でてなかった?」
天照
「気のせいだよ」
プリンスたま(目を細めて)
「……そうかな? 気のせいって言われると、余計気になるけどね」
天照(そっと視線をそらし)
「……行く準備、しよう」
その動作ひとつひとつが、
“もう止まらない”ことを示していた。
──────────────────────────
◆裏会話(評議室の外)
マアト
「天照さま……最後に、誰かの影を背負っているようでしたね」
信長
「うむ。“月”の気配……か。
あれは、いずれ現れるやもしれぬな」
プリンスたま
「天照は寂しさを隠すのが上手すぎる。
胸の奥で、ずっと痛んでるくせに」
ラー
「……戻ってきてほしいって思ってるんだろ?」
プリンスたま
「そうだろうね。
あの人ほど、“隣に誰かが必要な神”はいないよ」
マアト
「……泣かせないであげましょう」
プリンスたま
「泣かせないよ。
泣かせないけど――“揺らす”くらいはするつもりだけどね」
ラー
「お前……天界で一番自由だな」
セラヒム(小さく笑って)
「……でも、それで救われる時もあるんですよね」
──────────────────────────
◆スレまとめ(天界板)
【天界スレ】
《天界、動くらしいぞ》
3:名無しさん
なんか今日、空気違わん?
12:名無しさん
天照さまが“動く側”になるらしい
やばい、胸がふるえる
21:名無しさん
天界使節団ってマジ?
地獄行くの?現世行くの?どっちも?
42:名無しさん
プリンスたま同行は強すぎる
56:名無しさん
信長も行くって聞いた。
護衛が豪華すぎる
90:名無しさん
…え、なんか天照さまの“影”濃くない?
気のせい?
101:名無しさん
いや、あれは……月やろ
120:名無しさん
三界、揺れるぞこれ……
──────────────────────────
◆ぬらり&夜叉締め
天界を少し離れた宙の端。
黒い雲のような影がゆらりと揺れ、
そこから、ぬらりひょんが顔を出す。
ぬらり
「ほっほ……動いたのう、天照。
ようやく“静の側”が歩き始めたわ」
夜叉
「この動き……地獄も現世も揺れます。
そして――天照の影も、揺れた」
ぬらり
「揺れねばええものは見えてこぬ。
……のう、“月よ”?」
月の光が薄く揺れた。
まるで誰かが、そこに立っているように。
夜叉
「時は、刻まれています。
三界が動き、やがて――“あの方”も」
ぬらり
「ほっほ。
ええ、ええ……ええ流れじゃ」
二人の影が、天界へゆっくりと流れ戻っていく。
ぬらり
「さて次は――
地獄か?現世か?
どこが一番、揺れるかのぉ……」
──────────────────────────
◆次回予告
『三界、ざわめく。〜使節団、光の足音〜』
天界が動けば、三界全部が呼応する。
地獄も、現世も、
そして――読者の“揺らぎ”も。
次回、
天界から放たれた“一歩”が三界の空気を一変させる。
その裏で、“月”がまたひとつ微笑む。




