第62話 『天界、静かすぎて落ち着かない件。〜月の影と、まだ言えない本音〜』
◆天界ニュース/臨時
――静まり返った天界。
羽ばたく音すらない、久しぶりの“空白”。
【天界放送局】
「本日も、天界は静穏です。
……神様の気配は、観測されず」
カメラが回るたび、
天照は表情を整える。
整えるけど、完璧じゃない。
どこか “ぽつり” と穴が空いている。
天照(小さく):
「……慣れていると思ったのにね」
後ろでセラヒムがメモを落とす。
セラヒム:
「す、すみません……あっ、また……! き、緊張とかじゃなくて……」
ラー:
「いやもう、それは性格だろ。
てか静かすぎんだよ天界。
なんか“寒い”んだけど?」
天照:
「……うん。寒いね」
その“寒さ”がどこから来たかは、
言わなくても、誰もが知っていた。
⸻
◆天界メイン/会話パート
アーカイブ室。
散らばった信仰ログ。
神様がいた頃は、こんなに散らからなかった。
天照:
「……本当に、“いなくなっただけ”なんだよね」
ラー:
「まぁ……“いなくなったって言ってない”けどな?
ただ、姿が見えないだけで」
セラヒム:
「……でも“見えない”って、こんなに不安なものなんですね……
神様って、そこに立ってるだけで……“あ、あったかい”のに……」
天照は閉じていたファイルを開く。
“神様・観測ログ”。
空白がずっと続いている。
天照:
「……ねぇ、ラー。
神様がいなくて、一番困ってるのは“どこ”だと思う?」
ラー:
「そりゃ三界全部だろ。
地獄が一番騒いでるけどな」
天照:
「……うん。でもね……
本当は“天界”が一番困ってるの」
言葉が落ちた瞬間、
空気がわずかに揺れた。
天照(微笑みのまま、痛む顔で):
「だって私、ずっと……
“あの人の隣にいる温度”で動いていたから」
ラー:
「……天照」
セラヒム:
「……わたし、泣きそう……」
天照:
「泣かない。泣いたら、帰ってきてほしくなるから」
そして天照は立ち上がる。
天照:
「動くよ。天界も。
言葉じゃなくて、行動で――示す」
ラー:
「なんか久しぶりに“リーダーの顔”してんじゃん」
天照:
「……昔の“月”の顔かもね」
ラー:
「ん?」
天照:
「なんでもないよ」
小さく笑った。
その笑みの奥に、“月詠の影”が淡く灯っていた。
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◆裏会話(天界控室)
セラヒム(メモを抱えたまま):
「天照さま……
本当は、すごく寂しいんですよね……?」
ラー:
「言うわけねーだろ。あの人は“背中で守る側”だぞ」
セラヒム:
「でも……
あの人、“完璧なふり”するときだけ指が震えるんです。
さっき、ちょっとだけ震えてました」
ラー:
「……気づいてるくせに、言わないんだな?」
セラヒム:
「言ったら泣いちゃいそうで……
泣いたら天照さまが困るから……」
ラー:
「……優しいな、お前」
セラヒム:
「天照さまが、わたし達の“光”ですから。
……本当は、誰よりも“月”みたいな人なのに」
ラー:
「お前……言うじゃねーか」
セラヒム:
「……あ。言っちゃった」
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◆スレまとめ(天界板)
【天界スレ】
《静かすぎて逆に怖い件》
1:名無しさん
天界、今日マジで音がない
5:名無しさん
天照さま……なんか雰囲気違わん?
決意?覚悟?そんな感じ
12:名無しさん
てか神様どこいった?
20:名無しさん
“見えないだけ”って誰か言ってたけど
それ一番怖いやつでは?
37:名無しさん
天照さまの“影”が
なんか前と違っててさ……
なんだろ、月が出てる感じ
(伝われ)
58:名無しさん
地獄は暴れはじめたぞ
現世もざわついてる
天界も動くんか?
73:名無しさん
天照さまが動くって言ってた
あれはガチだわ
空気が変わった
101:名無しさん
神様……帰ってきてほしいよマジで
⸻
◆ぬらり&夜叉締め
夜の天界。
風ひとつ吹かない、青い空気。
ぬらり:
「……静かなのう。
天界がここまで静まるのは、久しぶりじゃ」
夜叉:
「動き始めましたね、天照。
三界が揺れるほどに」
ぬらり:
「ほっほ。
揺れるのは悪くない。
揺れねば“澱み”になるだけじゃからの」
夜叉:
「……時は、まだ。
でも、近づいています」
ぬらり:
「うむ。
“終わりの前の、光の片鱗”じゃな」
二人の影が、薄く揺れた。
ぬらり:
「さて――天界は動き出した。
次はどこが揺れるかの?」
『天界、やっと腰を上げる件。〜月の影と、光の走り〜』**
ナレーション(落ち着いた声):
天界、静寂。
けれど――沈黙は“決意”の予兆。
天照:
「……もう隠れてなんていられない。
私達も、“動く側”になるよ」
ラー:
「おっしゃ、やっとだな!
天界が本気出さねぇで誰が出すんだって話だしな!」
セラヒム(メモ抱えながら):
「……天照さま、わたしもついていきます!
えっと……あ、メモ落ちた……!」
声(淡く、揺れる影):
「……夜の番は、わたしが」
???(天照だけ小さく反応):
「…………月?」
ナレーション:
そして――動き出した影を、
天界の誰もまだ“正体”とは知らない。
ぬらり(どこからともなく):
「ほっほ……ええ流れじゃ。
天界が動けば、三界すべてが走り出す」
夜叉:
「時は、確実に刻まれています」
ナレーション:
次回、
『天界、覚悟の一手を打つ件。〜光と影、二つの顔〜』
天界が、ついに“実際の行動”へ踏み出す。
――そして、“月”が微かに笑う。




