表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々、掲示板に降臨す 〜天界勤務中、うちの神、業務中にスレ立ててる件〜  作者: 物書狸。
最終章:祈りの終わる場所で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/100

第58話 『2036年から来た未来人だけど質問ある?』

【ニュース:地獄新聞・号外】


『三界掲示板にて、正体不明のスレッドが急浮上。


スレタイは

「2036年から来た未来人だけど質問ある?」。


書き込み主は自称・未来人「ジョン・T」。

内容は、三界再編後の遠い未来について語るものとされる。


現時点での閲覧数は三界合算で急増中。

天界広報は「現在、情報の真偽を精査中」とコメント。

地獄観光局の妲己女史は「未来が売れるなら、今から権利押さえとく♡」。

現世の人気配信者・みなもと✩ひかるん氏は「ネタとしては満点」と笑いながらも、なぜか画面から目を離せない様子だった。


なお、創造神たる神様は依然として行方不明。

黄神・太公望は「ほう、ようやく餌が動いたか」と意味深な一言を残し、再び釣り場へ姿を消した。』


閻魔のコメント

「未来人スレは大体釣りだが、本当に釣りをしているのは別の誰かかもしれない。」


【会話1:現世スタジオ・ひかるん配信ブース】


薄暗い現世の配信ブース。

モニターには、いつものコメント欄とは別に、三界共通掲示板の画面が開かれている。


ひかるん「……はい、どーもー。みなもと✩ひかるんです。今日はね、雑談しよって言ったのに、なんかすげぇスレ立ってんだけど。」


画面をスクロールしながら、彼は読み上げる。


ひかるん「『2036年から来た未来人だけど質問ある?』……はい出ました、定番釣りタイトル。」


隣の椅子に座るあかりは、マグカップを両手で包みながら画面を覗き込む。


あかり「……でも、なんか、空気が違う気がします。」


ひかるん「空気?」


あかり「ただの悪ふざけなら、もっと軽い感じがあるじゃないですか。これ……静かに笑われてる感じがするというか。」


イヤホンの向こうで、AI神の声が響く。


AI神「ログ解析、開始します♡

書き込み主『ジョン・T』の文体パターン、過去ログと照合中……。」


ひかるん「お、さすがAI神。釣り判定機能、実装されてたのか。」


AI神「いえ、釣りかどうかは判定不能です♡

ただし、過去に記録された“ぐふふログ”との類似度……七二パーセントです♡」


あかり「ぐふふログ……。」


ひかるんとあかりは、思わず顔を見合わせた。


画面には、スレ主の最初の書き込みが固定表示されている。


ジョン・T『2036年。

三界再編は完了していた。

祈りのログは美しく整えられ、エラーはほとんどない。

涙はすぐに処理され、笑いはすぐに拡散される。

誰も大きく傷つかず、誰も大きく揺れない。

とても、静かで、よく出来た世界だったよ。』


ひかるん「……釣りにしては、妙に具体的だな。」


あかり「静かで、よく出来た……。」


AI神「最適化された世界像としては、一定の合理性があります♡

ただし、“よく出来た”という評価関数の重みが不明です♡」


ひかるんはマイクに向かって笑う。


ひかるん「よし、せっかくだからこの未来人さんで遊ぼうか。

今日のお題はこれね。『2036年から来た未来人に聞いてみたいこと』。配信コメント、どうぞ。」


コメント欄が一気に流れ始める。


『宝くじの当選番号教えろ』

『推しカプは公式になりますか?』

『寿命は伸びてますか?』

『ダイエット成功しますか?』


あかりが苦笑する。


あかり「……変わらないですね、願いの方向って。」


ひかるん「いいじゃん、平和で。とりあえず、代表してひとつ質問投げるか。」


彼はキーボードに指を置くと、少しだけ真面目な顔になった。


ひかるん「『未来の俺たち、笑ってますか?』……っと。」


エンターキーを押す音が、妙に大きく響いた。


【会話2:天界スタジオ・モニタールーム】


天界広報室のモニタールーム。

天照、マアト、セラヒム、ラー、プリンスたまが、同じスレを別の画面で見つめていた。


ラー「未来人スレって、だいたいネタだよね?でも今回、雷鳴ってない?」


セラヒム「雷鳴は鳴っていません。ただ、三界全体の祈りログが、このスレッドに集中し始めています。」


マアト「風紀的には、こういう不明な情報源はよろしくないんですけど……内容が、妙に刺さると言いますか。」


プリンスたまは、画面に頬杖をつきながら目を細める。


プリンスたま「いいなぁ、こういう茶番。かみちゃま、またおもしろい遊び思いついたでしょ。」


天照は、誰より黙って画面を見ていた。

スレ主の文章の端々に、聞き覚えのある癖がにじむ。


天照「……口調は違う。でも、間の取り方が、似てる。」


マアト「間の取り方?」


天照「大事なところで、あえて何も言わないところ。

『とても、静かで、よく出来た世界だったよ』って言い方……。」


セラヒムが資料をめくる。


セラヒム「現在、創造神の行方は依然不明ですが……もしかして、この“ジョン・T”という人物が……。」


天照は首を振った。


天照「決めつけるのは、まだ早いわ。

でも……もしそうなら、どうして“未来人”なんて名乗り方をするのかしら。」


プリンスたまがくすりと笑う。


プリンスたま「決まってるじゃん。“未来人”って言った方が、楽しそうだからだよ。」


ラー「未来、光ってる感じするもんね。ブランド的にも強い。」


マアト「ブランドで信仰を測らないでください。」


そのとき、画面が更新された。


【会話3:スレッド・ジョンタイターの返答】


ジョン・T『質問が多すぎるから、一つだけ答えよう。

「未来の俺たち、笑ってますか?」への返答だ。


笑っているよ。

ちゃんと、笑っている。

仕事もあって、家もあって、誰かと飯を食って、どうでもいい番組を見て笑っている。


ただ、少し静かだ。

大声で泣くことも、くだらないことで膝を叩いて笑うことも、昔よりは減っている。


だから今の君たちへ。

その“無駄に見える揺らぎ”を、大事にしなさい。』


現世スタジオの空気が、ふっと変わった。


ひかるん「……なんだよ、それ。」


彼は笑いながらも、少しだけ目を伏せる。


ひかるん「答えとしては百点なんだけどさ。

未来人のくせに、ちゃんと人間っぽいじゃん。」


あかりは、画面を見つめたまま呟いた。


あかり「……“無駄に見える揺らぎ”。」


AI神が静かに続ける。


AI神「非効率な感情ログは、しばしば削除候補になります。

ですが、“生きていた証拠”として保存されるケースも、多く検出されています♡」


ひかるん「ねぇ、AI神。

この“ジョン・T”、本当に未来から来たと思う?」


AI神「時系列的な整合性は検証不能です。

ですが、彼の文章の中には、既に存在しないはずの“娯楽”や“祭り”のログが含まれています。」


あかり「既に、存在しない……。」


AI神「少なくとも、“消えかけている”のは確かです♡」


【裏会話:完璧神々と黄神】


真っ白な監査室。

ゼウス、太上老君、アポロンの三柱が、同じスレッドのログを眺めていた。


ゼウス「……やはり、あやつか。」


太上老君「文体を変えても、行間はごまかせぬ。

“過程のほころび”に賭ける男の書き方じゃ。」


アポロン「未来を“よく出来た”と表現して、でもどこか寂しそうに笑う。

あの人らしいよ。」


そこへ、黄神としての姿をまとった太公望が現れた。


太公望「やれやれ。

完璧神々様方は、未来でも忙しそうじゃのう。」


ゼウス「黄神。貴様はこの状況をどう見る。」


太公望は釣り竿のない手で顎を撫でる。


太公望「そうさな。

未来から餌が飛んできたと思えば、今が一番おもろい時期じゃ。」


太上老君「ふざけておるのか。」


太公望「真面目じゃよ。

完璧なモデルを作りたいなら、“誤差”がどこから生まれるか、ちゃんと見とかなきゃならん。」


アポロン「誤差、ね。

君たちの言う“無駄な揺らぎ”とか、“泣きながら笑ってた夜”とか。」


太公望はうなずく。


太公望「そういうもんを全部消した世界は、たしかに“よく出来た”んじゃろう。

でも、“よう出来た世界”と“よう生きた人生”は、似て非なるもんじゃ。」


ゼウスは腕を組み、黙り込む。


太上老君「しかし、システムとしては安定度が高い方が望ましい。」


太公望「安定と“生き甲斐”の両立は、釣りにも信仰にも難題じゃ。

じゃが、今の三界には、まだようけ餌が残っとる。

妲己もおる。プリンスたまもおる。あかりもひかるんもおる。

そして、表に出たり引っ込んだりしよる、ぐふふな創造神もな。」


アポロンが小さく笑う。


アポロン「つまり、まだ“釣り”は終わってないってこと?」


太公望「そういうこっちゃ。

完璧神々様、ひとつ忠告しておくわ。

“完璧”の定義には、ほんの少しでええから、“許された誤差”を残しとき。」


太上老君「モデルに例外を組み込めと言うのか。」


太公望「例外が一つもない世界は、いちばん先に飽きられるで。」


ゼウスは目を閉じ、短く息を吐いた。


ゼウス「……創造神なき間隙を埋めるのが我らの役目だ。

しかしその上で、“誤差”の扱いは再検討しよう。」


太公望は肩をすくめる。


太公望「ほう。なら、わしの仕事もまだ残っとるの。

釣り人は、魚がかかるまで待つだけじゃ。」


そう言って、彼はふっと姿を消した。


【スレまとめ】


スレタイ:2036年から来た未来人だけど質問ある?


1:名無しの現世民

 どうせ釣りだろって思ってたのに、普通に泣きそうなんだが。


2:名無しの天界職員

 ずいぶんと“ぐふふ”臭のする未来人ですね。


3:名無しの地獄民

 未来でも地獄観光あるか聞こうとしたら、誰か先に聞いてて笑った。


4:名無しのAI信者

 AI神の解析レポ待ち。マジで未来ログの可能性あるの怖い。


5:名無しの見習い推し

 ひかるんの「未来の俺たち、笑ってますか?」が今日一エモい。


6:名無しの太公望派

 このスレ、なんか釣り人に釣られてる気がするんだが。


7:名無しの完璧モデル信奉者

 未来が“静かでよく出来た世界”なの、普通によくない?って思った俺は少数派?


8:名無しのアウトロー信者

 完璧って、やっぱちょっと息苦しくね?


9:名無しのまとめ神

 結論:未来がどうでも、今の揺らぎを楽しんどけ。


【ぬらり&夜叉 締め】


夜の街の外れ。

ネオンと提灯の光が溶け合う路地裏で、ぬらりひょんと夜叉が並んで歩いている。


夜叉「未来人スレ、だってさ。」


ぬらり「ようあるネタじゃが、たまに本物が紛れとるから侮れん。」


夜叉「本物って?」


ぬらり「時間を行き来できる奴、って意味ではないさ。

過去を振り返って、未来をでっち上げて、それでも“今”をおもしろがっとるやつのことよ。」


夜叉「……神様?」


ぬらりは口元だけで笑う。


ぬらり「さあて、どうかのう。

神様かもしれんし、ただの酔っぱらいかもしれん。

大事なんは、そいつの書き込みを読んで“今”が少しだけ揺れた、ってことじゃ。」


夜叉は頭上の空を見上げる。


夜叉「未来、静かでよく出来た世界かぁ。悪くはないけど。」


ぬらり「お前さんは?」


夜叉「……ちょっとくらい、めんどくさい人がいた方が好き。」


ぬらり「なら、大丈夫じゃ。

三界には、まだ“めんどくさいやつ”がぎょうさんおる。」


遠くで、誰かの笑い声が風に乗る。

それが未来人なのか、創造神なのか、ただの誰かの笑いなのかはわからない。


ぬらり「未来がどう転がろうと、世界が続くかぎり、わしらの仕事は一つよ。」


夜叉「見届けること。」


ぬらり「そうじゃ。

……ほれ、そろそろ静かにせんとな。」


夜叉は小さくうなずいた。


夜叉「……静寂に戻ろう。」


路地のざわめきが、すっと遠のいた。


【次回予告:第59話】


『妲己とカーマ、未来人スレ乗っ取り宣言♡ ―天界フリーダム王子、別ラインで乱入す―』


(地獄テレビ:生放送中)

妲己「未来?2036年?うんうん♡

じゃあ地獄観光の未来も見せちゃおっか〜?」


カーマ「妲己さん、いきましょう。

“完璧で静かな世界”?……そんなの、地獄の炎であっため直します♡」


(天界:別室)

プリンスたま「かみちゃまが未来人ごっこしてるなら、

たまも混ぜてよーーーっ!!

ねぇ、ねぇ、天界チャンネル開けて?今すぐ?」


(現世)

ひかるん「あれ?なんか……情報量が増えてね?」

あかり「……増えてます。どんどん。」

AI神「揺らぎ指数、上昇中♡

明日は……バズります♡」


(完璧神々:監査室)

ゼウス「……モデルの安定度が急落したぞ。」

太上老君「揺らぎが……跳ね上がっとるな。」

アポロン「ほらね、言った通り。

“揺れる時代”はおもしろいんだよ。」



次回、三界の温度が一斉に沸騰する。

地獄は踊り、天界は叫び、現世はコメント欄が爆発。

そして――黄神の視線は、ただひとつの“揺らぎ”へ。


第59話

『妲己カーマ広報テロ♡&プリンスたま天界乱入ショー』

お楽しみに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ