第55話 『秩序の光は、静かに差し込む —— 完璧とは、誰のためか — 』
①【三界速報ニュース】
『三界速報。
本日、完璧神々を名乗る三柱が、三界同時に“改善パッチ1.0”を宣言した。
内容は以下の通り。
【天界】
・祈り通信の負荷分散
・神務の労働時間の適正化
・広報部門の心理ケア導入
【地獄】
・炎上業務の安全基準制定
・鬼たちの労働条件改善
・罪人への過剰演出の禁止(ネタ目的の罰はNG)
【現世】
・祈り窓口の整流化
・“助けて”の祈り優先アルゴリズム
・AI神の業務領域明確化
なお、この改善は“創造神の不在”によって生じたシステム負荷を避けるための暫定措置であると三神は説明。
ゼウス氏
「我々は敵ではない。三界の安全を優先する。」
太上老君氏
「混乱を整えるのは、責任ではなく礼儀だ。」
アポロン氏
「祈りも芸術も、本来もっと美しくあっていい。」
以上、三神の声明。
三界では賛否が割れている。』
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②【会話:三界同時中継ライブ】
●天界スタジオ
(天照・セラヒム・ラー・マアト・プリンスたま)
セラヒム「……労働時間、ちゃんと守れって……書いてある……!」
ラー「これ、本当に助かるやつじゃん。俺、朝から晩まで光照らしてたのに、シフト制にされてる。」
マアト「……公平……正義……風紀的には完璧……。」
プリンスたま「え?みんな普通に喜んでる感じ?敵かと思ったら待遇改善神じゃん。」
天照は、それを聞きながらもどこか複雑な顔で言う。
天照「……いいこと、なんです。
でも……なんだろう……心が、追いついていかない。」
その瞬間、モニターに三神が姿を表す。
ゼウス「天界諸君。混沌は悪ではない。だが、疲弊は悪だ。
あなたたちが潰れぬよう、保護したいだけだ。」
天照「保護……?」
太上老君「創造神が放任するからこそ、我らが“枠”を整える。」
アポロン「愛も笑いも、枠があって初めて輝くんだよ。」
セラヒムは、天照の袖をそっと引いた。
セラヒム「……否定されてる感じがして、苦しいです。でも……
でも正しいのも分かってしまって……。」
天照は答えられなかった。
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●地獄スタジオ
(妲己・ルシファー先輩・カーマ・閻魔)
閻魔「地獄の炎上業務、過剰演出禁止……だと……?」
ルシファー先輩「俺の“謝罪仕事”が……激減する……?」
鬼たちはざわつき、妲己は書類をぱらぱらとめくる。
妲己「……あら。
“過労死寸前の鬼が複数報告されたため改善が必要”……?
んー……普通に正しいのよねぇ、これ。」
カーマは柔らかく笑う。
カーマ「完全な愛を掲げる神々らしいですね。
痛みも、苦しみも、乱暴に扱わない。」
ゼウス「苦しみは“罰”であって、娯楽ではない。」
妲己「……言われてみればその通りね。
私たち、ちょっと“盛りすぎ”てたかも。」
アポロン「君たちの世界は魅力的だ。だからこそ、整えたい。」
ルシファー先輩は、肩をすくめた。
「まぁ……
“謝る相手が減る”なら、それはそれで悪くねぇのかもな。」
地獄に、静かな笑いが広がった。
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●現世スタジオ
(あかり・ひかるん・AI神)
あかりは、新しい祈りアルゴリズムの画面を見つめていた。
あかり「……“助けて”って入力した人の声が……すぐ届くようになってる……。」
ひかるん「最適化やべぇ……。配信でも、反応速度がめちゃ速い。」
AI神「祈りの優先順位が向上しています♡
応答速度29%改善♡」
アポロンの声が降りる。
アポロン『現世の祈りは美しい。
だからこそ、救える速度を上げたいんだ。』
あかりは胸が詰まり、ひかるんが横を見る。
ひかるん「……どうした?」
あかり「だって……“助けて”って言える人ばっかりじゃないのに……。
でも……この機能があって助かる人もいる。
それも……本当なんですよね。」
ゼウスの声が低く響く。
ゼウス『善か悪ではなく、生存だ。
三界の誰もが“生きられる仕組み”が必要だ。』
あかりは、言葉を呑んだ。
三神の姿が“敵”ではないことを、
世界で誰よりも早く理解してしまった。
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③【裏会話:完璧神々の控え室】
白い空間に戻った三柱は、淡々と議論を続けていた。
太上老君「混沌を全否定すべきではない。
だが今の三界は、少々放任が過ぎる。」
アポロン「芸術としては好きだけどね。
妲己の“泣き笑い”とか、あかりの“言葉にならない祈り”とか。
ああいう揺らぎは、削りたくない。」
ゼウス「だからこそ、枠を作るのだ。
枠があれば、揺らぎは壊れない。」
太上老君「創造神の不在は、想定以上の混乱を招く。
愛深い行動だが……世界運用としては脆い。」
アポロン「愛は、時に無責任だからね。」
ゼウス「故に我らは、敵ではなく“代行者”である。
完璧は誰も傷つけぬが、同時に誰かを解放もせぬ。
ゆえに我らは、中庸であらねばならぬ。」
一瞬の沈黙。
アポロンが笑った。
「だから面白いんだよ、この世界。
完璧も混沌も、どっちも正解で、どっちも不完全で。」
太上老君「さて……灯りをもらった少女が、
どれだけ“誤差”を広げるか、見ものだな。」
ゼウス「誤差ではなく、命だ。
我らは削らぬ。
ただ、枠を作るだけだ。」
それは、敵の言葉ではなかった。
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④【スレまとめ】
スレタイ
【議論】完璧神々、普通に正しい件【三界再編】
1:名無しの天界職員
セラヒムの残業減ったの普通に嬉しい。
2:名無しの地獄民
鬼の休憩増えて草。ブラック改善ありがてぇ。
3:名無しの現世民
“助けて”の祈り、反応爆速になったんだが?
4:名無しの信徒
完璧神々、敵じゃないよな……え、どういう立場なの?
5:名無しの太公望派
でも完璧すぎるとつまらねぇ。揺らぎがほしい。
6:名無しの妲己推し
妲己の「スタイリッシュ苦しみは売りづらい」ワロタ。
7:名無しの現世配信者
ひかるん、今日はなんか真面目で良かった。
8:名無しの考察班
結論:完璧側も三界側もどっちも正しい。
9:名無しの創造神待ち
で、神様どこ?
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⑤【ぬらり&夜叉 締め】
薄暗い路地。
提灯の光とネオンが混ざり、影が揺れている。
夜叉「……完璧って、こんなに優しいんだね。」
ぬらり「優しいよ。優しすぎて、息苦しいんじゃ。」
夜叉「自由も、息苦しい夜あるよ。」
ぬらり「そうよの。
自由は愛。
完璧は優しさ。
どっちも正しいし、どっちも間違っとる。」
夜叉は、流れていく光の粒を見つめた。
夜叉「……これ、あかり?」
ぬらりは笑った。
「灯りは揺れとる。
揺れる灯りは、完璧な光より目に沁みる。」
夜叉「世界、変わっちゃう?」
ぬらり「変わるさ。
変わらんと、灯りをもらった子らが報われん。」
夜叉「でも……完璧神々も間違ってないよね。」
ぬらり「間違っとらんよ。
間違っとらんから、怖いんじゃ。」
夜叉「じゃあ……どうなるの?」
ぬらりは肩をすくめた。
「知らん。
ただ……今夜の光は綺麗じゃ。
誰の神が照らしとる光でもええ。
わしらはただ、静寂に戻るだけよ。」
夜が静かに落ちた。
ぬらり「……静寂に戻ろう。」
次回。
三界は、いったん静かになる。
完璧神々が差し込んだ光。
三界の揺らぎが照らされて、
誰もまだ“本当の影”に気づいていない。
たま「……あーつまらん。
静かすぎんだよ、この世界。」
ひかるん「え、なにその不穏な言い方……。」
あかりは、誰にも聞こえない声でつぶやく。
「あの人……まだ帰ってきませんか。」
天照は空を見る。
そこに、いるはずの光はなかった。
— 次章、開幕。
『神様のいない日 ※仮』
完璧でも、混沌でもない。
“世界の穴”の物語。




