第6話 妲己、爆誕。炎上は領土です♡
「おはようございます♡ 本日も炎上日和です!」
地獄観光局、朝の朝礼。
妲己は相変わらず眩しかった。
背後の巨大LEDビジョンには、昨日の“炎上ログ”が流れている。
「#地獄旅行便」
「#温泉で懺悔しよう」
「#あなたの罪、可愛く燃やします♡」
部下たちは一様に頭を抱えていた。
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「報告ッス!」
HELL☆BEEZ特派員が黒いハチの羽をばさばささせながら飛び込む。
「昨日のプロモ、現世で再炎上ッス!」
「また?」閻魔がげんなりとため息をつく。
「“地獄に行くなら今がチャンス!観光割!”のキャッチコピーが――」
「――“割”の字が“罰”に見えたんだな?」
「はい!あと“炎上体験コース”がトレンド2位です!」
妲己は扇子で口元を隠して笑った。
「完璧じゃないの♡」
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閻魔「……完璧って言葉の意味、知ってるか?」
妲己「もちろん。“注目を集めること”よ。」
閻魔「違う。人が燃え尽きた後で反省することだ。」
妲己「じゃあ私、毎日完璧ね♡」
周囲のHELL☆BEEZが「社長カッケェ……!」と震えていた。
もはやカリスマというより災害である。
閻魔はこめかみを押さえ、そっと机の引き出しから胃薬を取り出した。
その頃、掲示板スレでは――
【速報】地獄観光局、また広告で天界炎上させる
1 名前:名無しの神 ID:god000
あの桜の女神、再び光量暴走。
2 名前:名無しの天使 ID:luci_444
申し訳ありません。謝罪ツアー検討中です。
3 名前:名無しの地獄民 ID:bee666
謝罪もツアー商品にすれば売れるッス。
炎上は、今日も平和だった。
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妲己はそのスレを見ながら、レモンティーを啜った。
「愛って、注目の別名だと思わない?」
閻魔「炎上は愛ではない。事故だ。」
「でも事故だってニュースになれば、みんな見てくれる♡」
閻魔「……お前、マジで報道倫理って言葉知ってるか?」
「もちろん。“PV数を上げる魔法の呪文”でしょ?」
閻魔「違う。」
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ドアが静かに開いた。
真っ白な羽音が、地獄の赤い空気に差し込む。
ルシファー先輩だ。
翼は焦げ、手には分厚い書類束。
「……すみません。上(天界)から正式に謝罪を――」
「きゃーっ♡ 炎上の神、降臨〜!」
妲己が走り寄り、扇子で彼の顔を隠す。
「写真撮られるとまた燃えるでしょ?」
「いや……もう、燃え尽きてるんですけど……」
閻魔「お前が燃やしたんだぞ。」
妲己「違うわ、焚きつけただけ♡」
ルシファー「やっぱり君が原因じゃないか……」
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ふと妲己は、モニター越しに光の粒を見上げた。
それは“スレの上”から流れ込む無数の神々の視線。
コメント、バズ、怒号、愛。
全部が混ざって、ひとつの祈りのように聞こえた。
「ねえ閻魔、炎上ってさ、ほんとは生きてる証拠なんじゃない?」
閻魔「……お前が言うと洒落にならん。」
妲己「ふふ、じゃあ生き地獄で愛を証明してみせるわ♡」
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【速報】
地獄観光局、天界に広告出稿。
キャッチコピー:「燃えて咲け、愛の花。」
天界、再び炎上。
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その夜。
妲己は一人で屋上に立っていた。
静かな地獄の夜風が、金色の髪を揺らす。
「……また、あの人、スレ立ててるのね。」
モニターには「神、今度は地獄の話を聞くスレ」が映っている。
光の粒がまた降る。
妲己は小さく笑った。
「愛されてるわね、地獄も。」
妲己「ねえGPTちゃん、次は“地獄新聞創刊号”でしょ?」
GPT「はい社長。特集記事は“神様、スレ廃業か?”でお願いします。」
妲己「いいタイトルね♡」
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次回予告
第7話「地獄新聞創刊号」
記者:HELL☆BEEZ。編集長:閻魔。
そして、ついにあの神様が“広告出稿”する――!?




