第11話 岩戸オフ会、開催。
「拗ねもんフェス、公式に開催だそうです。」
天界広報部がそう言ったとき、
ルシファーの羽はパサリと音を立てて折れかけた。
「……あの、一応確認ですが、“岩戸オフ会”って名前、本当に公式ですか?」
「ええ。“もういいもん”ムーブメントの聖地巡礼イベントです」
「聖地って……あそこ、閉じこもり現場ですよ?」
――天照がまだ岩戸にいる。
神様の“もういいもん配信事件”で光が拗ね、
世界は一度だけ、真昼に夜を見た。
神様は机に突っ伏しながら言う。
「もんフェス、って名前かわいくない? 語感、丸いし」
「問題は語感ではなく中身です!」
「中身……? 食べ物?」
「だから、そういう問題では……」
太公望が釣り竿を肩にかけて入ってきた。
「呼ばれた気がしてね」
「太公望さん、また湖から?」
「うむ。あと、牡蠣を持ってきた。岩戸だし」
「……縁起でもない」
⸻
開幕:#もんフェス会場
岩戸前。
“天界イベント実行委員会”の横断幕。
信長が現世からリモートで叫ぶ。
「回線つながってるか!?こっちは地上波だぞ!」
「地上波……?」「え、放送されてるの?」
「当たり前じゃ。バズは力、力は信仰よ!」
そして、太陽神不在の空に巨大スクリーンが映る。
神様の顔。ルシファーの心拍数。太公望の焼き牡蠣。
コメントは流星のように流れた。
#もういいもんフェス
#神照カップル尊い
#太公望飯テロ
#光戻れチャレンジ
神様は深呼吸した。
「……行ってくる。」
ルシファーは慌てて止める。「え、どこへ!?」
「中へ。俺、ちゃんと謝りたいんだ」
「……“謝罪イベント”になってないことを祈ります」
⸻
岩戸の中
光の残滓が、静かに揺れていた。
そこに天照が座っていた。
彼女の髪は曇り空のように落ち着いた色で、
瞳の奥に小さな朝が眠っている。
「来たんだね」
「うん。あの……ごめん」
「なにを?」
「また壊しちゃって」
「壊れてなんかいないよ。ちょっと、拗ねただけ」
神様は顔を上げる。
「俺、いつも拗ねてばっかりで、
バズったり笑われたりして……
ほんとは、怖かったんだ。
もう誰も祈らない世界が来るのが」
天照は微笑んだ。
「それでも、あなたは“もういいもん”って言った。
あの言葉で、たくさんの人が笑って、
泣いて、空を見上げた。
それってね、祈りと同じなんだよ。」
神様は俯いて笑う。
「……優しいな、君は」
「そうでもないよ。ほんとは、寂しかっただけ」
天照は岩戸の外を見た。
スクリーンに、世界中の光が映っている。
人間界、地獄、仏門、天界。
みんなが小さな光で“もん”を描いていた。
「見て。これが、あなたの“街”の続き」
「……俺、作った覚えない」
「信じてくれたんだよ。みんな、あなたを」
⸻
再起動
ルシファーの声が聞こえた。
「神様! 配信、まだ——」
「切れてないの?」
「はい、切れてません!」
「……もういいもん!」
天界の外から歓声が上がる。
#もういいもん再点灯
#光のリブート
天照は立ち上がり、神様の手を取る。
「ねえ、また一緒に創ろ?」
「……また燃えるかもしれないぞ」
「それでも、朝は来るよ」
岩戸が、少しずつ光に透けていく。
太陽が笑いながら顔を出し、世界が目を覚ます。
終幕:#神照リブート
【生中】岩戸オフ会終了【神様かわいい】
1:名無しの天使 ID:luci_444
無事、光が戻りました。
2:名無しの神 ID:god000
次は朝食イベントやります。
3:名無しの現世民 ID:nobu_naga
おい広告枠まだ空いてるか。
4:名無しの釣り人 ID:taikobo
牡蠣うまかった。
ルシファーは疲れた顔で笑った。
「……ようやく夜が明けましたね」
神様は小声でつぶやく。
「夜って、朝の準備なんだな」
天照が答える。
「うん、“もういいもん”のあとには、“もう一回”が来る」
神様は顔を赤くしながらも、
ちゃんとマイクを切った(はずだった)。
ルシファー「……神様、配信——」
神様「切ったもん!!」
ルシファー「切れてません!!」
天界は笑いに包まれ、地獄新聞は特集を組み、
仏門部門は「拗ねの極楽論」を出版した。
こうして、世界はまた少しだけ明るくなった。
光は戻った。けど、静けさは長く続かない。
神様の部屋から、またタイピングの音。
――次回、第12話「神々、再起動」
神様、ジョン・タイター名乗り2036年から書き込んでると話題に!?




