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マルクス主義批判
そして彼は、マルクス主義は解決ではなく加担である、と言いました。なぜなら、権力を悪とする一方で民衆を善とするモチーフが、論理的に単純化されてイデオロギーの核となる状況では、言説上で権力を悪魔化しつづければ成立は保てるのであり、一方で民衆自身については利他的な共感性という実践を課すところがないから、全体は個人同士が他者化された個人主義に堕落し、まさに武力的または経済的な利害によって最も操作しやすい砂粒としての民衆ができあがる。だから、状況の根本を改善するどころか悪化させると彼は明言したのです。それは、人間という生き物の理性の裏にある自己欺瞞という構造を眺めつづける彼らしい視点でした。