ナンバーXX
SF?って感じかもです;;どちらかというとミステリーかと。。。期待はずれだったらすみません;;
アレは。。。ああ、そうか。そういうことだったのか。私にはわからない。ナンバーXX。
『死ね』、『メス豚』、『キモイんだよ』
その文字たちは、今にも美月を襲おうとしているかのように、乱暴で下卑で血の色に似た、赤いマジックペンで書かれていた。またか。美月は思った。消しても消しても、毎日登校してくる前に必ず書いてあるこの陳腐な文字たちに、美月はもう呆れるしかなかった。もう消すのはやめよう、疲れるし、めんどくさい。そう思って、美月は何事もなかったかのようにその席に着く。ガヤガヤ、ガヤガヤと学校の朝はどこかの市場のようにうるさい。おはようだの、昨日のテレビ見た?だの、宿題がどうのこうのだの。
美月もつい三ヶ月ほど前まではこのにぎやかさの中に居て、いじめなんかとは程遠いごく普通の中学一年生を始めていたのに。なのに、なんでこうなってしまったのだろう。小学校四年から友達で、一緒にこの中学に入り、しかも同じクラスになった香織でさえ今では目を合わそうともしない。その他の女子の無視や軽い暴力には大体慣れたけど、仲の良かった香織が離れていってしまったのは一番辛かった。あの笑いあった、楽しかった日々はもう香織の中では消してしまいたい過去になっているんじゃないだろうか。そう思うと、美月の胸はグッと苦しくなり、涙が出そうになる。が、もちろん美月は泣かなかった。泣いたら止まらなくなるし、いじめている奴等が喜ぶ、それに、自分より泣きたい子はもっといっぱい居る。私は両親が出来ただけ幸せなんだ、と思うようにしていたのだ。
美月は孤児だった。今の両親が引き取ってくれたのが小学四年生の時。不思議と孤児の時の記憶はないのだが、今の生活は幸せなのだと、心のどこかが語りかけてくるのでそう思うようにしている。一度両親に孤児院のことを尋ねたが、孤児院は美月にとって記憶を消したいほど嫌なところだったんだろう、そのまま忘れていたほうがいい。と言われてしまった。
それからはあまり考えないようにしているのだが、やはり考えてしまう。残っている子供たちはどうしているのだろうか?名前はおろか、顔さえ誰一人として思い出せない自分に、ふと香織の後姿が思い出されて、とてつもなく自己嫌悪に陥る。香織のことを責められない、私だってかつて一緒に笑いあったであろう友達の姿を忘れたのだから。ふうっと美月は短いため息をもらした。あるいは、そんなもの元から居なかったのかもしれない。私には過去なんてなかったのかもしれない。いっそその方が、、、自分を嫌いにならないですむのなら、その方が絶対いいと美月は思った。
美月には、いじめとは別にもう一つ悩みがあった。
その悩みとは『ある一つの数字が認識できない』ということだった。その数字は22と24の間にあるアノ数字。12の次は13とか、20とか3とか個々で認識は出来ているのに、間のアノ数字だけはどうしても見えなかったし、なんなのか解らなかった。最近ではソノ数字が見えないことによって、ああ、いつものアレなのだなと解るようになってきたくらいだ。
カレンダーにも、時計にもあるアノ数字。今まで気づかなかったのだけれど、美月には毎月アノ数字の日の記憶がない。22日の夜寝て、朝起きるともう24日になっている。最初は気味が悪かった。私が知らない一日が本当はあって、そして、終わっている。誰かに昨日の私を聞きたいのだけれど、気づいた今となっては聞く友達もいない。親は決まって、いつも通りだよ。というが、本当にそうなんだろうか?
一度、22日の夜を寝ないで過ごそうとも考えたが、だめだった。22時59分までは起きれたけれど、あと一分がどうしても超えられない壁だった。気がつくと朝、その繰り返しだった。
しばらくして美月は抵抗することをやめた。なんであれ、数字が見えなくても、一日を忘れていても、私は傷一つなく毎日を生きている。ちょっとクラスでいじめられている、という日本ではよくありそうな、ただの女子中学生なのだ。なんの心配もいらない。みんな、飽きたらやめてくれるだろう。私はそれを待てばいい。大丈夫。美月は何度も自分にそう言い聞かせた。いじめ、思い出せない過去、不可解な数字とソレにまつわる記憶の欠如、それらすべてを拭い去るように何度も何度も言い聞かせた。大丈夫。きっと大丈夫。と。
『おい、ブス』
お昼休み、いつの間にか美月の席の周りには4、5人の女子が取り囲んでいた。上から見下ろされる圧迫感と、汚いものでも見るような眼。何も悪いことはしていないのに、存在こそが悪と言うかのような彼女達のオーラに美月は少なからず怯えていた。
『おい、お前のコレは飾りか、返事ぐらいしなよ。』
主犯格の女子が美月の右耳を思いっきりねじり上げるように引っ張った。それを合図に残りの女子も引っ張りにかかる。
『ううぅぅ。。』思わず低い声が美月の口からもれる。鈍い痛みが両耳に広がってやがて大きくなる。バーゲンの洋服のようにたやすく美月は左右に揺らされる。あまりの痛さにもがき離れようとするが、残った女子が抵抗する美月の頭や、体を懸命に抑える。練習でもしているかのような彼女達のチームワークのよさを前に美月は身動きがとれず、ただ小さな抵抗として、痛いとだけは言わないようにした。
『放課後屋上に来い、面白い話がある。』少し間をあけて『お前。。。。でしょ。』主犯格の女子が耳 元で言った。
『????』
後半の言葉が聞き取れなかった。というよりは解らなかった、アノ数字同様、美月の頭をスウーと実体のない幽霊のようにソノ言葉は通り過ぎて行った。アノ数字以外で聞き取れなかった言葉は初めてで、驚き呆然としている美月に、主犯格の女子は満足したかのように耳を離した。
『絶対来いよ、逃げたらどうなるか、解るよね?』
そういって机をガンっと蹴り飛ばし彼女達は去っていった。
開放された両耳の激痛はすぐにひいたものの、まだジンジンと疼き、熱を持っていて熱かった。机が倒れた拍子に飛び出した教科書を無意識に拾い、両耳の熱さをどこか他人事のように感じながら、美月はただ、あの聞き取れなかった言葉のことを考えていた。私が何かだと彼女は言った。何かとは何だろうか?私には解らなくて、彼女は知っている。そんなことがあるのだろうか?あるのかも知れない。現に私にはいろいろな記憶がない。情報が少ない。屋上に行こう。何が起こるか解らないけど、このままじゃいけない。私が何者かちゃんと聞かなくちゃ。怖くても、大丈夫、大丈夫。美月はぎゅっとコブシを握り締めた。
放課後、美月は恐る恐る、屋上に向かった。
先生に相談してみようとも思ったが、やめた。これは自分の戦いで、自分が何者か知るための言わば聖戦なのだと美月は思っていた。
ギィー。少しさび付いたような鈍い音を出して屋上の扉は開いた。お昼までは顔を出していた太陽が、今では暑い雲に覆われて、暗い空になっている。七月だというのに、風にはどこかピリッとした寒さが混じっていて、美月の高ぶった気持ちを静めてくれた。
生憎、彼女達はまだ来ていなかった。美月はフェンスの傍まで行って、校庭を眺めた。運動部がゾロゾロとジョギングや体操などをして、部活動に励んでいる。他にも、友達同士や、恋人同士で楽しそうに下校をしている人達の姿も見える。その姿は、とても平和で悩みなどなく、キラキラした今しかないこの時を謳歌しているようでとても眩しかった。いっそこのまま、ここから飛び降りてしまえば。。なんて少し考えてしまう。馬鹿馬鹿しいと、思いつつもその考えはとても魅力的に思えた。
その時、ギィー、と音がして、彼女達が入ってきた。
『あら、ちゃんと逃げずに来たんだ。そんなところに居て、飛び降りでもするつもり?』
美月は彼女達のほうを向き、でも両手でフェンスの縁をがっしりと掴んでいた。
『そんなことしない。』強く言い返したつもりだったが、心とは裏腹にか細い声が出た。なんだろう、私、迷ってる?美月は少なからず戸惑っていた。
そんな美月の様子を鼻で笑いながらいつものように彼女達は広がって輪を作る。もちろん中心は美月だ。その真ん中で美月は今から料理にかけられる鶏にでもなったような気分だった。せめて痛みがないようにサクっと首をひねってもらいたい、そうするべきだと思った、お前達が人間で、常識ある普通の人だったらなと。しかし、殺す過程に意味があるのだとするとそうも言ってられない。そんなことは鬼畜の所業で、そして、鬼畜には常識など皆無だ。
『お前は。。。。なんだろ?』
また主犯格の彼女はそう言った。美月は戸惑っていた。『。。。。』って何だ?何故聞こえない、解らない、私は一体何なんだ。いろんな思いが頭の中を過ぎる。グルグル、グルグルと思考は廻り続け、しかし、一つとしてコレが正解だというような答えは出てこない。彼女はさらに続ける。
『この間この子が見たんだって、着替えている時にお前の胸元にXXって数字が入っているのを。』
そう言って、彼女は隣にいた女子を指差す。いつもいじめに加わっているメンバーの一人だが、名前はわからない。誇らしげに腕を組み、胸を張り、自分のしたことは勲章ものだと言わんばかりに、ニタニタと笑っている。気持ち悪い。美月は素直にそう思った。
確かに美月はお母さんから、裸はなるべく見せないようにと言われてきていた。着替えるときは、極力見えないように隅の方で、みんなが着替えた後にすばやく着るようにしていたし、それがめんどくさい時にはトイレや、保健室に行ったりいろいろ工夫していた。なぜ、そのようにしなければいけないのか、お母さんは詳しく教えてくれなかったが、女の子はこうするものなのだと言われてしまっては、信じるしかなかった。私が何も知らないのは今までお母さんが居なかったから仕方ないのだと、お母さんの言うことは正しいのだと、盲目的に信じていたのだ。しかし、中学に入って、大半の女子はそんなことをしなかった。小学校まではまだみんな恥じらいもあり、私の行動は別段おかしい事ではないと思われたが、中学に入ってから、美月は周りの大胆さに正直驚いた。女の子はそうゆうものじゃないのかとお母さんの言葉を疑がった。そして、疑いの隙間にこそ油断ができる。美月は見事、お母さんが隠したがっていた何かを見られてしまったのだ。
美月は急に寒気を覚えた。名前もしらないこの女子は、アノ数字が見えたのだといった。私の見えない数字が私の胸元に入っている?今まで幾度となく自分の裸を見てきたが、そんなものがあるとは夢にも思わなかった。その感覚はまるで、自分は何かに操られているような、嫌な感覚。知らないということがこんなにも居心地が悪く、気持ちが悪いことだと美月は初めて知った。
お母さんはこのことを知っていたのだろうか?いや、知っていたからこそ隠させようとしたのだ。お母さんは何か隠している。それは他人には見られてはいけないもの?疑問は疑問を呼び、絡まった毛糸のように大きさを増していく。そんな美月の物思いを主犯格の彼女が遮った。
『それから、毎月XX日、何をしてるのか話しな。』
いつの間にか彼女は美月に詰め寄り、聞いてきた。その声には今までにない凄みがかかっている。
『何って。。わからない。。。』彼女の様子にダンダンと恐怖がまし、目も合わせられなくなってきている美月に、更に彼女が追い討ちをかける。
『解らない訳ないでしょう、自分の事なのに。じゃあ、教えてあげる。』
ゆっくりと、彼女が続ける。その表情は恍惚としており、もうすぐ獲物を仕留められるという、支配者の顔だった。
『町外れの運送屋のことはもちろん知っているでしょ?』彼女は一呼吸して『兄がそこに出入りしてて、私いろいろと知っているのよ。そこが何をしている所かも。』
ああ、何か良からぬことをしているらしいあの建物のことなら、知ってる。と美月は思った。武器や、麻薬の密輸、人身売買など様々な憶測が飛び交っているが、実際は工場のような大きな建物で、表向きは運送業としている。その為普段はいろいろな車が出入りしており、それが逆に住民たちの間では怪しいと噂されているのだ。しかし、彼女は一体何を知っているというのか。
『XX日、お前たち家族がそこに入っていくのを見たんだよ。』
それは、衝撃だった。
美月は呆然と固まってしまった。先ほどまでの恐怖も、今やどこか別の次元のもののように感じられた。頭の中はたくさんの疑問と、繋がりつつある事実に、フルスピードで回転を始める。私が知らない一日に、家族は私を怪しい建物へ出入りさせている?しかも毎月XX日。私が読めないあの数字の日にだ。何故?何の為?私はそんなところに入った記憶などまったくないというのに。両親は何か知っていてそれを隠している。何故私に教えてくれないのだろうか。みんななんで私をのけ者にするのだろうか。なんで一人にしようとするのだろうか。美月は、やはり本当の親ではない彼らとの深い溝を感じたと同時に、深い孤独感におそわれた。
と、急に頭に激しい痛みが走った。ズドンッ。まるで雷に打たれたかのような衝撃に、美月はううっとうめき声を上げる。痛みは容赦なく美月の中で暴れまわっている。『イタイ。。』野に放たれた狼のように、荒々しく噛み付いてくる痛みは、とても意思の力だけでは抑え切れなかった。
そんな美月の様子に周りを取り囲んでいた女子たちは慌てた。先ほどまで主犯格の彼女に便乗して、美月を小突いたり、やいのやいのとはやし立てていた立場から一転、困惑と戸惑いで立ち尽くす。
そして、そのうち一人が『私今日はもう帰るわ。じゃあ。』そう言って走り去ってしまった。それに続いて、私も、私もと、一気に四人帰り、ついには美月と主犯格の彼女だけになってしまった。
残された彼女は少し離れて美月を見ていた、が、さほど慌てている様子はない。むしろ当然だというように、やや冷静に眺めている。
美月は唸り続ける頭を抱えて、何故自分だけこんなめに合うんだ。何故自分だけ見えない数字や、聞こえない言葉、謎があるんだ。自分は一体何者なのか。そんな絶望感を味わっていた。不意に、もう何もかもどうでもいいと思えてきた。もう、悩むことも痛いこともつらいことも全部放り出してしまおう。そう思い美月はよろめきながら、フェンスを乗り越えようした。美月たちの学校のフェンスはさほど高くなく、易々と乗り越えられる。せいぜい、美月の腰くらいの高さしかない。未だに頭は痛むが、先ほどまでの激痛はなくなった。美月は死を前にしてやっと吹っ切れた気がした。妙にすがすがしいようなそんな感じだった。ガンガンと頭が響くたびに、前へ前へと言われている様で迷いはなくなる。
そんな美月を見て彼女が左腕を引っ張った。もはや彼女の存在を忘れかけていた美月は驚き、まじまじと彼女の顔を見る。彼女は決して、美月が飛び降りようとしているのを止めたわけではなかった。
『上、脱いで。』
え?美月は意味が解らずに小さく聞く。
『飛び降りる前に自分の目で確認したいの。胸の数字、本当にあるのか。』
彼女の顔にもはや感情は見えなかった。淡々とまるで機械のように接してくる彼女に美月は激しい悲しみと怒りがこみ上げてきた。『嫌』美月は一言言い放って、彼女の手を振りほどこうと強く彼女を押し返す。しかし、彼女の手は離れなかった。むしろ、押された反動で倒れまいとし、掴んでいた彼女の右手に更に力が加わり、思わず美月は怯んでしまった。この子はおかしい。直感的に美月は悟った。何がどうおかしいのか上手く説明できない。しかし、確実に、何かに囚われているような、その迫力が美月には常軌を逸しているように見えたのだ。これ以上この子に近づきたくない。美月がそう思えば思うほど、彼女はドンドン美月に詰め寄り残っていた右手も掴まれてしまう。
『いや。。』美月は激しく抵抗しているはずなのに何故か彼女に逆らえない。自分と変わらないか少し高いくらいの背丈と、女子中学生らしいほっそりとした体つきの彼女の、どこにこんな力があるのだろうと思ってしまう。
一体、何が彼女をこうさせるのか?怒り?憎しみ?いや、単純に好奇心だろうか。時として好奇心は人を惑わす。アルコールのように、薬のように、盲目的なその感情はなかなかとめられず、一度知ってしまうとその快楽は病み付きになる。そして彼女はもう、立派な中毒者だった。美月の体の数字を自分の目で見るまでは、意地でもこの手を離さないだろう。普段の美月ならここで抵抗するのをやめて、素直に胸でも、何でも見せていただろう。
けれども今日は違っていた。何が何でも見せないつもりだった。彼女の今までの行いと、今から美月がしようとしていることに対して、そうすることが一番いいと思ったからだ。これが本当の美月の最後の抵抗だった。制服を剥がそうと激しく掴みかかってくる彼女をなんとか払いのけようと美月は逃げる。そして、美月の逃げ場は後ろ、フェンスの向こう側だった。ジリジリ、ジリジリと後ろに下がっていく美月に、彼女はあせり更に動きが大きくなり、力も加わる。
二人の取っ組み合いは徐々にエスカレートしていき、ついに美月はフェンスから上半身が飛び出るほどまで追い詰められていた。いや、追い詰めたと言うよりは誘い込んだという方が正しいだろうか。このままもう少しで落ちる。もう少し。。。美月ははやる気持ちを抑えられなかった。もう少しで私は勝つ。この世界から居なくなってやる。短い間だったけど可愛がってくれた両親。感謝している一方で、何かを隠していた不信感と溝はなくならず、そのおかげで、すがすがしくこの世から居なくなれる。そう、美月は思った。
ブチブチっ。突然、鋭い音がして、美月の制服のボタン全部が取れた。彼女がついに、美月の制服を引きちぎったのだ。露になる美月の小ぶりな胸と、可愛らしい下着。
『やった。。』
そう言って彼女が笑った。が、次の瞬間、眉間に皺がよる。髪の毛が浮き上がり、一変して、その表情には今まで見たこともない恐怖が現われる。『キャーー』と頭のてっぺんから飛び出たような甲高い声があたりに響く。
そう、二人は落ちていた。
彼女が美月の制服を引きちぎった瞬間。一瞬力が抜けたその瞬間、美月が彼女もろとも引っ張ったのだ。落ちながら美月は満足だった。負けた。負けた、けど、もう負けない。これで、私の勝ちだ。これで、何もかも終わりだ。。。。。。。。ガシャン。。グシャ。。。
遠くで人の騒いでる声がする。飛び降り。。落ちた。。女の子。。二人。。ざわざわ。。
美月はボーとそんな様子を聞いていた。やっと頭痛が治まった気がする。今や何の痛みも感じない。が、そんなのどうでもよかった。体を起こそうにも全身に力が入らないし、指先一つも動かせない。当たり前だ。あんな高いところから飛び降りたのだ。すぐ近くにはグシャグシャになった彼女が見えた。美月の机の上に書かれた落書きのような、真っ赤な血が流れていた。少し可哀想なことをしたかしら。ちょっとだけそう思う。だけど、もう死ぬときまで一人は嫌だった。よく見ると、彼女のすぐ横に飛び出た美月の目玉が転がっていた。横向きに倒れている美月が、飛び出た目玉に写って見える。私の体。そこにあるのは、グシャグシャに千切れている手足から、色とりどりの配線が飛び出ていた、異様な姿だった。彼女のように真っ赤な血を流すことなく、ただ壊れてしまった私の体。バチッバチッと火花が飛んでいるところもある。本当はもっと驚くべきはずなのに、美月はなんだか嬉しかった。やっと、やっと自分が何者なのか解ったから。はは。。そうか。。。私は人間ではなかったのか。私は、ああ、聞き取れなかった言葉が今は解る。『ロボット』だろう。そして、見えなかった数字。私の左胸のちょっと上のほう、飛び出した目玉が丁寧に映し出してくれている。
そこにははっきりと。。。。23。。。。
アレは。。。ああ、そうか。そういうことだったのか。私にはわからない。ナンバー23。。。
そこで視界は真っ黒になる。。。
。。。三年前。。。
町外れの大きな建物。外観は工場のようだが中は、驚くほどたくさんのパソコン、精密機械、コードの類や、怪しい薬品であふれかえっている。神田夫妻は、今日この日を十年も前から待ち望んでいた。
『自信作ですよ、コレは新たな人類の一歩です。』
白衣の初老の男が上機嫌で言った。ぺらぺら、ぺらぺらと今までの苦労話をしているが、夫妻の耳には入っていない。期待で胸が膨らみすぎて、心ここに在らずといった感じだ。
『さあ、ここですよ。赤ちゃんをお望みでしたが、まだ、上手くいかなくて。赤ちゃんの成長はめまぐるしいですからね。その変化に対応できる体を作るのは今のところ難しいのですよ。って聞いてないですね。はい、もう着きます。あと、子供の左胸に製造ナンバーを入れました。そればっかりはすみません、隠してもらうしかないです。まだ、完全に完成というわけではないので。日常生活は普通におくれると思いますよ。いえ、おくれます。はい。あと、もう一つ。毎月一日は必ずメンテナンスに来て下さい。彼女の場合は23日ですね。これは絶対です。安全に日々をおくるためにも絶対です。わかりましたか?はい、ではお待たせしました。コレがあなたたちの娘です。製造ナンバー23です。』
最後まで読んで下さってありがとうございます★今までは短い話ばっかりだったので、今回は頑張った(゜∀゜)♪しかし、長くて、くどくて、読みづらいかも;;
上手くオチまで持っていけてたか心配です;;是非、ご意見、後感想聞かせてくださいませ★何でもお待ちしております\(≧∀≦)/