第五話 来客二名
エレンが自室に来た。
「何しに来たんだよ」
「何にも、あ、一応伝えとくことがあったわ。どうやらあの娘がちょっと勘づいてるみたいなの」
「あの娘ってミリスのことか」
エレンは首を縦に振った。
「あの娘、結構魔法のこと知ってたみたいでねー。あのビーム見て、あれが神聖魔法ってことに気づいちゃったみたいなの」
神聖魔法の記述については存在はこの世界の魔術書でも載っており特徴も読んだことが俺もある。だから、神聖魔法のことを知っていても不思議はないのだ。しかし……。
「なんで、お前はそんな現状のことに詳しいんだ?」
「全知全能だからよ??」
都合のいいことばっかこいつは言う。まず、そのセリフは「全知全能の神」みたいな感じで神様ポジのやつが言うセリフだろう。腐ってもこいつは一応天使のはずだが。
「まあ、今のキャラ的には結構神様ポジだと私は思っているんだけど」
「お前、心読めんのかよ」
「全知全能?」
便利なフレーズだ。
「てか、神聖魔法を使ってたことがばれるとどうなるんだ?」
「どうにも、神のように崇められ、未来の勇者扱いされる」
それはまずい。
くどいように言うが俺の目標は異世界スローライフだ。崇められて、勇者にでもなってしまえばスローライフなんて夢のまた夢となるだろう。
エレンは俺の机に置いてある紙に興味を示した。
「この描いてる女の子はなに?」
「ああ、それは前世で観てたアニメのキャラだよ」
俺が帰宅して、芸術ステータスが上がってるか確かめるため描いたものをエレンは見ていた。
結果は前世と同じレベルの絵ができたのだが。
「ここでもロリキャラなのね」
「俺、おっぱいを描くのが苦手なんだよ」
「へぇ、でも上手ね」
出会って初めてエレンに褒められた気がする。少し照れくさく、ほおを赤らめる。
「何照れてんの?きしょい」
こいつ、暴言の使い方プロか?使い慣れてる。
「ひどいなぁ」
翌朝。
「ど、どうも……。昨日は本当にありがとうございました」
ミリスが訪ねてきた。
「どうぞ上がって」
ミリスを俺の部屋に上げた。一応エレンも同席させている。
「で、何の用?」
「いえ、昨日は突然帰られたので、あまりお礼も言えてないですし」
とミリスはかしこまった感じで言った。
「別にいいのに。後、タメでいいよ。まず、俺のほうが年下だし」
すると、ミリスは急に表情を変えて
「あ、そうなの?分かった」
と言った。ミリスもいつかエレンみたいになりそうである。
「で、ほんとに何の用なの?」
と、エレンが威嚇気味に尋ねると
「いや、お礼言いに来てくれたんだろ」
「いや、別の用もあるけど」
「あるんかい」
サーリーが入って来て、お茶とお菓子を出してきた。
「あれ、俺のは?」
「いるの?」
ミリスはもちろんだが、エレンの分さえあるのに、何故か俺のがなかったのだ。この家族たち俺にちょっと冷たくない?
「さて仕切り直して、ちょっと教えてほしいことがあるんですが」
「何?」
ミリスはひざまづいて
「もしかして、エレン様って天使だったりしますか?」」
「だから、タメでいいって……。ん?さっきなんて言った?」
エレン……天使……。そう、彼女はエレンが昨日言っていた。勘づいたと言っていたこと。それの確認を本人であるエレンその人にしてきたのだ。
「ええ、私、エレンは天使よ」
めっちゃ簡単に言った。
「誰に憑いてるんです?」
ミリスは目を輝かせて聞いてきた。やはり、こうゆう話題に彼女は興味関心らしい。
「それは、勿論このルースよ!」
「なるほど!つまり、あのビームは神聖魔法だったり」
「う……うん。てか、タメでいいって」
しかし彼女にはその声は届いていないみたいで、俺はその隙にエレンに耳打ちした。
『なんで、そんなすぐバラすの?』
『隠す理由、私にないじゃん』
確かにそうだが、俺にとってはスローライフを送る上で都合が悪い。何とかこれ以上知られないようにしなくては。
「これは、おじい様にもお伝えしなければ!」
「本当にやめてください!!ミリス様!!!!!!!」
俺はひざまづいて、思いっきり土下座した!!
俺は詳細をミリスに伝えた。
「そうですか。別にいいですけど私からもお願いを頼んでいいですか?」
なんだろう?
「私と友達になってください」
「いいえと答える意味がないんだが」
彼女は友達を作るのが苦手であり、生涯一人も友達ができなかったらしい。だからこそのこの願いということだ。
俺としてはこんな美少女と友達になれるのはご褒美あたる。
「これからはタメな。エレンとも」
「よろしくね。ミリス」
「うん。よろしく」
俺達は握手を交わした。
初回連続投稿一旦終了です。少し不定期気味になるかも。