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第三話 美少女エレンの神聖魔法講座

 草原の中にて爆煙が立ち上った。やがて煙が晴れると、そこからひょっこりと黒焦げになったエレンが顔を出した。


「ちょっとおおおおおおお!!あんたぁ何やってんの!!!!」


 その惨めな姿は、とても神聖な天使の姿とは思えられない姿だった。


 俺はゴミのようなエレンを処分するつもりでまた魔法を唱えだす。


 すると、エレンは当然のように瞬間移動をし、俺の魔法を阻止した。


「うわぁ」


「いい加減にしなさいよ」


「何でお前こんな一瞬で来れた!?」


「実体を持った天使はいつでも主人のところに行けるの」


 これぞ天界パワーといったところであろうか。面倒で都合のいいシステムだな。


「てかなんで、私に向けて爆発を起こしたの」


 俺は無言を貫いた。正確には言い訳は用意している。もっとも俺は魔法を使うためにここに来たのだ。勝手に出現したのはそっちじゃないか。


「まあ、約束通り姿を見せたわけだけど……」


「あ、そんな約束してたな」


「記憶力ゴミかよ」


エレンに突っ込まれたが、俺は本来の目的をもう一度果たすことにした。


「もう撃ったじゃん」


 とエレンは言ってるが


「もうちょい落ち着かせて撃たせてくれ」


 と言って撃った。


「そういえば、一般魔法使うのね」


 一般魔法?中級魔法のことだろうか。てか撃ったのは上級魔法なんだが。


「あっそっか。まだ教えてないっけ。神聖魔法のこと」


「申請?何か契約?」


「字が違うわよ馬鹿。神聖魔法!聖なる神の魔法!」


 そっちかよ。ややこしい。まぁ、申請魔法も意味分からないが。


 エレンは分厚い本を俺に寄越した。俺が開いてみると言語はなんと懐かしい日本語で書かれていた。


「読み方忘れてないわよね」


「当たり前だろ」


 しかし、この本、時々難関な字が使われており、読解に多少時間がかかった。もともと国語そんなに得意ではなかったし。


 ふと前を見ると、小馬鹿にすることを通り越して本気で心配するエレンの姿があった。


「……何その顔」


「う……うんごめん」


 しばらくして、ようやく解読でき、この【ビーム】というものをやってみることにした。


「いきなりビームだなんてチャレンジャーね」


「何で?」


「だってその魔法、危険だもん。あんたにとってはだけど」


 試してみることにした。受け取った本『神聖魔法魔術書』に載っている過程を踏む。

 身体はリラックスして、腕を伸ばし、手を銃のように見立てる。すると、自動的に指先に魔力が集まる感覚がした。不思議な感覚である。


「今!」


 というエレンの掛け声によって俺は反射的にたまった魔力を撃った。指先から放出された俺の魔力を具現化したエネルギー弾は大きな音と熱風を出して、空の彼方に飛んで行った。


「あ……あれは……」


「あれこそ、ビーム。魔力光線というものよ。とても攻撃力が高くて手軽な魔法。調整は簡単でビームの威力、直径とか自由に変えられるわ」


 とエレンは解説しながらポンポンビームを撃っていた。


「物騒だなぁお前」


「助けてぇーーーーーー!!!」


 突然、助けを求める声が聞こえた。声の感じからして子供の女の子だ。


「千里眼」


 エレンはそう唱えて手で丸を作り、それを覗いている。俺もそれを真似てみると、見ていた景色が拡大された。俺は事件が起きた現場を必死に探す。


「いた!いくわよルース!」


 エレンは俺の腕を強引に引っ張り、当然のように空を飛んだ。


「浮いてますけどエレン様!!」


「文句言うな阿呆」


 と若干きつめの注意を俺に浴びせたエレンは間もなくして地上に降りた。そこでは、女の子がイノシシ風の魔物に襲われている現場が確認できた。


「あいつ、殺したほうがいいの?」


 と俺が質問すると、


「この世界では勿論魔物は害悪の部類だから殺せる能力を持ってる人は目撃したら極力駆除しなくちゃいけないのよ」


 といったので俺はすぐさまビームを撃った。


「随分物騒な世界だなぁこんな所でスローライフなんか送れるのか?」


 と少女の前に登場して決め台詞風に言うと。


「イキるなカス」


 とヤジが飛んできた。酷い。


 魔物は脳天にビームを撃ち込まれて程なくして死んでしまった。


 俺は可愛らしい少女に「大丈夫か?」と声を掛けた。すると返事は。


「あなたのほうが五倍物騒です……」


 とおびえながら言っていた。


 物騒な相手にそんな言葉が言えた度胸は認めよう。


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