五 ハデムとの買い物で
今日は休暇だ。リニウスの授業は今日は休みである。
ゆっくりしようとは思っていたんだが、ハデムに呼び出された。
「どうしたんですか?」
「市場に出よう」
「はあ」
ため息ではない。了解の合図だ。
どんどん人が多い通りに出てきた頃ハデムは言った。
「ルース、欲しいものってあるか?」
ハデムは突然俺に聞いてきた。
「欲しいもの?強いて言えば剣ですかね」
俺は正直に答えた。するとハデムは進行方向をいきなり変えた。
「ちょ!ちょっと!?」
「ちゃんとついてこいよ!」
ハデムは中年だが、この時は凄く無邪気だった。
ハデムはじきに足を止めた。そこには武器屋があったのだ。
「ハデムさん……。これって」
「ルース。好きなのを選べ」
チャリーン
「らっしゃい……って思ったらハデムさんじゃないっすか!」
「よう、繁盛してるか?」
「そりゃもうおかげさまで。で?今日はどんな武器が欲しいんです?」
「今日はこの子の剣をだな」
武器屋の店主は俺をじっと見た。
「こんな小さい子が剣持つんかい?」
「そう思うか?」
ハデムは得意げに俺のことを話した。何だ?まだそんなに俺のこと知らないだろう?
「で、この子はどんな剣が欲しいんですかね?」
「多分このあたりじゃないか?」
ハデムは刀が飾ってある場所を指差した。
何故知ってるんだ……。
実言うと、俺は日本刀などの刀が狂うほど好きで、日本に住んでいたときは『日本刀サークル』という変わったサークルに入るほどだった。
しかし、そんなことハデムに話してただろうか。
気になりもしたが、この世界に刀があるとは!俺はそっちの方に今は興味を持っていた。
「うひょー!じゃあこれ!これください!!」
「いいねー!テンション上がってんな!兄ちゃん!」
俺は気に入った刀を買ってもらった。
*****
「でも、何でこんなの買ってくれたんですか?給料は貰ってるのに(微量だが)」
「ああ、まぁ……。日頃の感謝的な……?」
「じゃあ、もうちょい給料上げてくださいよ」
「はっはっは!面白いこというな」
そこまで大笑いするほどかと思ったが特に気に留めないことにした。
(ル……。ルー……)
ん?何だこの声は……。
「ハデムさん……。なんか言いました?」
俺はそう尋ね、ハデムの顔を見ると、ハデムは冷や汗をかいて、目を見開いていた。
「どうしたんですか?」
「エ……エレン……様?」
ハデムのその声に俺は驚愕した。そして、気づいた。
そうだ……。さっきの声……。エレンの声だ!
俺がさっき聞こえた声の方向に行こうとするとハデムに腕を掴まれた。
「ルース……。行ったら駄目だ」
「なんで!」
「お前は天界の関係者だが、人間だ。そんなお前があそこに入ると異空間に迷い込むことになる」
「何言ってんだ!」
俺はエレンの声に対して、焦っていた。早くあそこに行かないと、エレンの手がかりが消えてしまう気がして。
エレンはあんなやつでも大事な仲間だ。だからこの機会絶対逃したくない!
「ちょっと落ち着いて聞いてくれ!」
その大声に俺は動きを止めた。
「すまんな。少し焦って、お前にとって意味不明なことばっかり言ってしまって」
「もう、いいですよ。今更行っても遅いし」
「詳しいことはシリスがいるときに話すが、これだけ言わせてくれ」
「何?」
するとハデムは少し間を開け言った。
「以前、エレンの担当の転生者が禁忌に触れたことがあった。俺はその事件の関係者だ」
一回聞いたとき、全然意味が分からなかった。
さっきから俺の心の中でハデムはすっかり『変なことを言ってるおっさん』というレッテルが貼られていた。




