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四 指導バイト

 北大陸中央部。

 ビギナ

 北大陸の中ではかなり大きな街である。

 俺たちはとりあえず旅の初めにここに来たのだ。

 ここでの目的は


①物資の確保

②ルースの戦力確保


くらいだろうか。

しかしここで俺は気になった。


「そういえば、金ってあるの?」


シリスは小汚い財布を取り出した。

 そして、シリスはそれを振って中身を確かめた。

 出てしたのは234シス(シスとはこの世界の通貨単位であり、1シスは日本円で1円である)


「……」

「……」


 「ごめん。ないわ」とシリスは口に出さなくても、その顔が全てを物語っていた。


 そこからビギナでの生活が始まった。

住み込みの働き口が見つかりそこである子供に教育をするという仕事を引き受けた。こんなのあるんだな。


「今日からよろしく」

「よろしくお願いします」


 俺とシリスはその子の両親に頭を下げた。

 礼をしながら両親の陰のぞいてみるとその子がいた。

 

ミリスの子供の頃に似ている女の子だった。

その女の子は恥ずかしそうにコチラを見ている。


「よろしく」


俺は彼女に握手を求めた。


「え、あなたも先生なの?」

「あ、うん」


 まあ、そうですよね。今、僕子供ですし。


「よろしくな」


 俺と同じようにシリスは握手を求めた。


「あ、よろしく」

「……」


 うん、まあ、そうか。


 俺は何だか虚しかった。


*****


「じゃあ、僕たち一家の紹介をしようか。じゃあ、各自、自己紹介を。私は父のハデム・グレルシュールだ。グレルシュール家という貴族は知っているだろうか?一応そこの家系だ」

「私は妻のマリュテーナと申します。ほら、リニウスも」


 小さな子供がマリュテーナの影から現れた。


「リニウス・グレルシュールです……。えっと、よろしくお願いします」

「よし、じゃあ君たちの紹介も頼みたい」

「あ、はい。私の名前はルースです。魔力はないので今は使えませんが、魔術を教えることはできます」


 俺はシリスに「おい。次お前」と合図を送った。

 すると、シリスはそれを察知したようで、自己紹介を始めた。


「シリスだ。剣技くらいなら指導できる。よろしく」

「はい、よろしくお願いします」


 マリュテーナは笑顔で応えた。


*****


 俺たちの仕事は主にリニウスの教育だ。読み書き、算術、魔術、剣術を指導することになっている。


 それでは、そんな我らの一日を紹介しよう。


 午前五時半。

 俺とシリスはこの時間に起床する。シリス曰く、「お前も剣技は叩き込まなければならない。だから、リニウス達が起きる前にお前の指導は済ませておく」とのことだ。

 そのため、俺にはランニングと厳しい訓練が朝から待っているのである。


 午前七時。

 グレルシュール一家が起床する。

 俺たちは朝食の準備を手伝い、グレルシュール一家と朝食をとる。

 西洋風のごく一般的な食事だ。

 グレルシュール家は一応名の知れた貴族の家系なのだが、何故彼らは比較的質素なち食事をとっているのだろうか。


 午前九時。

 指導開始。

 まずは読み書きから教える。リニウスはとても勉強熱心で助かる。


「ところでお前は読み書きできんの?」


 とシリスに尋ねたところ、彼女は首を横に振った。


 午前十時。

 算術の時間だけ。

 リニウスは勉強熱心で助かる。

 シリスに「できんの?」と尋ねたところ。また彼女は首を横に振った。


 午前十一時。

 ちょっと休憩。

 そして0時に昼食だ。


 午後一時。

 剣術の時間。

 主にシリスが指導するため俺は暇を持て余す。よくリニウスの相手をすることはあるのだが。他はあんがい時間が空いているので、家事を手伝ったり、趣味のイラストを描いたり、グレルシュールの夫婦と話をしたりしている。


 午後三時。

 魔術の時間。

 しかし、俺は魔力がないので、魔術の仕組みや知識、コツなどを教えるだけにしている。あとはシリスに実践してもらう。これによって、教えやすいし、シリスの魔術の訓練にもなるので都合の良い。


 そこから夕食までは自由時間。遊んだり、色々だ。

 そして、風呂に浸かって、就寝。


 このようなサイクルで回っていき、半年が経った。

 俺は思った。もう十分これもスローライフではないか?

 毎日平和なサイクルで過ごしている。

 でも、朝っぱらのあのしごきを味わうとそうでもない気がする。

 でも、やっぱり、スローライフだ。比較的ゆっくり過ごしている。勿論、ミリスやエレン、エイジャと過ごしたあの日々の方が平穏ではあるのだが……。


…………。


 今、彼女達はどうしているのだろう。

 無事なら良いのだが。

 勿論、助けに行きたいが、お金がない以上、旅に出ることはままならない。

 まだ、お金は十分に北大陸を出て、中央大陸を旅する資金は集まっていない。

 俺の戦力の武器も買えていない。


 助けに行きたいが、行けない。あまつさえこの生活に満足感を覚えてしまっている自分を悔やむ。

 しかし、ビギナを出れば厳しい生活の始まりだ。

 俺は資金が貯まっても、この街に居座り続けるのだろうか。

 今の俺にまだ決心はできていない。

 とんだヘタレだ。


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