プロローグ1
ある日、日本にて地震が起こった。
住んでいたアパートは崩れ、ガス漏れを起こしたようで、アパートには火が回った。俺は一足遅くにそれに気づいたので、見事に逃げ遅れてしまった。初めは逃げようと努めたが、もう無理だな。これと悟り、開き直ってその場に座った。
「そういえば、異世界転生なんか本当にあるんかなぁ……。本当にあるんだったら、来世はのんびり異世界スローライフでも送りたいなぁ……」
ライトノベルなどで見たことがあるファンタジー風の異世界に行く来世に期待していたら。
「なんだ?お前。そんな願望を持っているのか?」
何やら変な声が聞こえた。ロリっぽい声だ。正直タイプである。可愛い系がやはりいい。
「あんたの心の中めっちゃきもいな」
「ほっとけ」
うるさい声だ。死ぬ前くらい静かにこの生を振り返らせてほしいものである。
「それは悪いことをしたな」
ロリ声は俺に気を使った。俺はその言葉に甘えることにした。
小学時代。俺はどちらかと言えば優秀だった。テストでもたまに100点を取るくらいの成績はとっていた。中学はそのまま公立中学に進学。高校受験で失敗し、俺は学校に馴染めず不登校になった。流石に親の目を気にした俺は家を出て、何とかやりくりして今まで暮らしてきた。
……。
「俺の人生ろくでもねえな」
「そうね……」
「せめて、来世はのんびりとしたスローライフがおくれるといいわね」
こいつが何者かは分からないが、そう祈ってくれるだけでも励みになる。
「最期に聞いてもいいか?」
「なに?」
「お前、何者だ?」
やはり気になる。俺は人生最後の願いを彼女に言ったが。
「それは、また後で教えるわ」
「そうかダメか」
「後で教えるって言ったでしょ」
後で、っていつだよ。という文句は心の中にしまうことにした。
とやっている間に火の手はみるみるうちに広がっていた。もう俺は助からない。分かりきっていたことだが、いざ人生が終わるとなるとこみ上げてくるものがある。
俺は最期に涙し、炎に飲まれ、灰になって消えた。
来世はスローライフを謳歌しよう。