プロローグ
ここは、東京都のどっかにある八一神社。整備も掃除も全くされていないせいで、人が寄り付かないことで有名だ。
そして俺は、この神社に生まれた 八一 恭介 だ。
俺は今、小学校から高校までエスカレーター式の学校に通っている、高校2年生だ。
そして俺は、人生で一度きりの『ハイ スクール ライフ』をエンジョイしたかった、悲しい高校2年生でもある。
なぜ俺が悲しい学校生活を送っているかって?いいだろう、授業の暇つぶしがてらに話そう。事の発端は、俺が小学3年生の夏の頃だった。
神社生まれの俺には、普通の人には無いある特殊な力がある。それは、霊を触れる、見れる そして極めつけには『祓える』という豪華三本セットだ。
そんな俺はちょうど小学校の授業中に見てしまったのだ。変態おじさんの霊を。
そいつは、クラスのマドンナ的な存在である、ゆきちゃんのリコーダーをべろんべろんに舐め回していたのだ。
先ほど言った通り、ゆきちゃんはクラスのマドンナである当然僕も多少は気にかけていた。
そんな想いを寄せる人のリコーダーが舐めまわされてる現場を見てみろ、黙っていられるだろうか?
ー-ー-黙っていられる訳がない!
そして気づいた時には、俺はクラス中の悲痛な視線を浴びていた。
ゆきちゃんのリコーダーをあいつから守ることしか考えていなかった俺は、変態おじさんからリコーダーを奪い取った。
そして、ゆきちゃんのリコーダー片手に自由の女神を連想させるようなポーズで机の上に立っていたのだ。
授業中にクラスのマドンナのリコーダー片手にそんなポーズしたらそりゃ小学生でも引くよねっていう話である。それだけで、俺の評価は下がっていたのに焦っていた俺は、
「変態おっさんの霊から守っただけだ」とかいう、何こいつ頭おかしいんじゃねえの?と思われるような言い訳を重ねてしまったのである。
だが、その時の俺は「中学は知り合いのいないどこか遠くの中学校に行けばいいや」とかいう安直な考えしか持っていなかった。
そして時が流れ、小学6年生の冬。俺は絶望した。
親に中学校は別の場所がいいと言ったら、まさかの
「お金がないから無理よ。」の一言である。さらに
「おとなしくエレベーターに乗りなさい」と言われた。
俺は最初はエレベータ?どういうことだ?という疑問で頭上にハテナマークが大量にあった。が、意味がだんだん分かってくると同時に俺の顔はどんどん青ざめていった。
そう、俺が通ってた小学校は高校までエスカレーター式。つまり、小学校のメンツと高校まで同じ場で学校生活を共にするのである。俺の場合は、あの悲しい黒歴史も共に。
そんな感じで黒歴史も一緒にエスカレータに乗っちゃったせいで、黒い噂は広がり、絶賛ボッチを満喫している今日この頃なのである。
ボッチの放課後はカラオケとかに行く相手もいないから、家の中でゴロゴロ過ごしている。
そんな俺を見かねた母がある提案をしてきた。
「最近ご近所さんの、徳さんがねぇ、悪霊に取りつかれたっていうのよ。あんたの力でどうにかやってくれないかしら~?」
「いやだ」
だるそうに母の顔を見上げると、鬼もびっくりするほどの圧がそこにあった。
その圧はまるで「行くよな?」と語りかけてくるようだった。
「まぁ~、たまには?運動も必要だし~?行きますかねぇ~」
そういって俺は逃げるように徳さんの家に向かうのだった。
ここは、徳さんの家。大きな柿の木が立派ないかにも和って感じの家だ。
だが、普通じゃありえない程の霊気が漂っていた。
「なんだこれは、どうなってんだ?」
こんな霊気は生まれて初めて感じた。今ならまだ、引き返せると思ったが、何もしないで帰ったと母にばれたら、あとが怖いということで渋々中に入ると、庭に漂っていた霊気とは比べ物にならないくらいの霊気が中に充満していた。
「お邪魔しまーす‐?徳さーん?聞こえたら返事してくださーい?」
返事がない、どうやらいないようだ、帰ろう! と思ったその時、何かが動く音が聞こえた。
「はぁぁぁ」
と、ため息をつきながら玄関のすぐそばにある居間を開けてみると、そこには何か様子がおかしい徳さんが一人で立っていた。
「徳さん?ですか? 何かありました,,,か?」
俺がしゃべり終わった直後、徳さんは急に俺を襲ってきた。徳さんの力は人間の域を超えていた。
「まさか、乗っ取られた!?」
乗っ取りとは、霊が人間を乗っ取るというものであって、雑魚の霊ならすぐに対処できるのだが、徳さんを乗っとった霊は次元が違っていた。
「うっっ! 放せ! 」
徳さんは俺の首を抑えてきた。放そうとしても力が強すぎて微動だにしない。
あれ?俺ここで死ぬのかな? まだ、俺、黒歴史,,,残したままなのに,,,
だんだん視界がぼやけていく、そして視界が真っ暗になる寸前でうっすらと声が聞こえた。
「おまえを殺した霊はぬらりひょん、霊すなわち妖怪の王に君臨するものだ。そして我が名は……」
その声は、まるで死んでいるかのような、低く、きみの悪い声だった。
そして俺は死んだ。あっけない人生だった。
キーンコーン
なんだこの音、授業中に寝ちまったか?
俺は学校のあの音によく似た音色で目を覚ました。
だが、視界に映るそこは、日本とは全く違ってまるで西洋のような雰囲気だった。
そして異様に狭い視界、謎にめっちゃ大きく見える女と男の姿。
女が俺を抱きかかえて、しゃべりだした、
「会いたかったわ。私たちの赤ちゃん」
は? 俺が赤ちゃん? おいおい、冗談きついぜ。だが、そんな考えも一瞬で消えることになった。
目の前の鏡に映る俺は紛れもない赤ん坊だったのだ!
「おぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ」
(はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?)