9 わ~るだくみ会議:ありとあらゆる自然発電を普及させて、原子力発電を無用化し、日本政府を恐怖のどん底に陥れる計画!
―― 解説しよう! 今日も今日とて、栄光ある悪の秘密結社『邪須訂巣』△△支部の秘密アジトにある会議室では、日本征服を目論む者達が、密かにある計画を企てている最中であった。 ――
「今回の議題は秘密基地の建設を兼ねて電力会社のシェアを奪い取るというものだ。計画案はどうなっている。メグシテゴナ」
「はっ」
わたしは機械を操作して幹部の皆様が討論を円滑に行なえるように大スクリーンに資料を映し出します。
ここに集まっている幹部の方々は表向きは滝グループ傘下の盾前コーポレーション』の幹部として活動している方々です。
「こちらをご覧ください。計画案では従来の大規模太陽光発電は勿論のこと、滝グループの私有地の風の強い地点に密かに建設する予定の風力発電、洋上に設置した風力発電機の下には波発電機と海流発電機を設置の予定です」
「風力発電は居住区が近くにあると音が問題になるのではないのか? 近隣の住民に騒がれて気付かれてはまずかろう」
「近年、海外では羽のない風力発電の開発が進んでおります。これにより羽の回転による騒音問題は抑えられ、尚且つ、羽で風を受けるため、その風の影に入ると風力が十分に受けられなくなるのを防ぐ対策として、一定の幅を空けなければならなかった設置問題も解消されることになるようです」
「「おおっ!」」
「原子力発電では災害や攻撃で破壊された場合、最悪半径数十キロ圏の地域が使用不能となる可能性がありますが、これら太陽光発電や風力発電は仮に破壊されたとしても、その場を設置しなおせば、他にはほとんど影響が出ませんし、逆に他の部分が生きていれば、たとえ孤立したとしてもその場で部分的にでも発電を可能にし、活動を続けることが可能となります」
「夏の暑い時は太陽光発電が、台風時期や風の強いところではその風力発電が生きるというわけだな」
「羽式の風力発電だと、風が強すぎると、羽を守るために止めなければならなかったからな」
「こっちの海流発電は常時発電が期待できると」
「原子力は確かに効率という面では良いかもしれないが一極集中のリスクを負うことになるが、少しずつでも分散させることにより、一か所に集中しているリスクを避ける効果もあるわけか」
「風は風速数メートルからでも発電可能になってきているとのことです。尚且つ、従来に比べ、メンテナンスや廃棄にもコストがかからない仕様となっております」
「「おおっ」」
「原子力とはえらい違いだな」
「さらに、高速道路や鉄道網、繁華街の歩道などに、振動発電や音発電などをすでに密かに設置して回っております」
「これも地道な分散、リスクヘッジということだな」
「もちろん、蓄電技術の向上も図っております」
「偽装の方はどうなっている?」
「抜かりはありません。各関係省庁には工事の許可は取ってありますので疑われることはありません!」
「なるほど、民衆は知らず知らずのうちに我々、邪須訂巣のために電力をせっせと作り出してくれているというわけか。ふははははっ、ご苦労な事だ!」
「まったくです」
「原子力発電では万が一、敵から攻撃を受けた場合、以後基地が土地共々使い物にならなくなってしまうが、これらの発電であれば破壊されても作り直せばすぐにでも基地の再稼働は可能となりますな」
「敵がそこを攻撃すると見せかけただけでも戦闘員達はパニックになってしまいますからな」
「部下達の心と身体の安全と安心を確保するのも上司の努めですからな」
「よし、この計画を進めたまえ!」
「「はっ!」」
◇
『次のニュースです。滝グループ傘下の盾前コーポレーションが複合型の自然発電を取り入れたスマートシティー計画を発表しました。この計画は……』