31 わ~るだくみ会議 不要と思われている廃油を集めて新たなるエネルギーとし、輸入に頼るエネルギー政策を揺さぶり、日本政府を恐怖のどん底に陥れる計画!
―― 解説しよう! 今日も今日とて、栄光ある悪の秘密結社『邪須訂巣』△△支部の秘密アジトにある会議室では、日本征服を目論む者達が、密かにある計画を企てている最中であった。 ――
「諸君、以前議題に上っていた食品ロスとは少し話は異なるが、家庭や飲食店で使用された油が、どうなっているか知っているか?」
「そのまま流してしまうと、水質汚染や排水管の詰まりにつながるため、新聞紙やキッチンペーパーで吸わせてから、それを密閉してゴミとして出すのが一般的ですかな」
「あとは油凝固剤を使うという方法もありますな」
「台所にある可能性が高いものとして、片栗粉で代用することもできますね」
「うむ、その通りだな。だが、元は油だ。もったいないとは思わんか?」
「ワルビレル様、もしかして、『SAF』のことが言いたいのでしょうか?」
「ふっふっふっ、察しがいいな」
「『サフ』とは何ですかな?」
「うむ。メグシテゴナよ、説明を」
「はっ! 『SAF』とは『Sustainable Aviation Fuel』のそれぞれの頭文字を取った略称で、『持続可能な航空燃料』と訳されています。主に家庭から出る廃食油を集めそれを再生成することによって、今までは捨てられているばかりの使用済みの油を燃料として再利用するものです」
「うむ。この廃棄されるばかりの油だが現状、多くが外国へと輸出され、それを日本が『SAF』として輸入しているという何とも無駄の多い手間をかけている。これを日本国内でできるようになれば、エネルギー資源の少ない日本にとって十分有益となるはずだ」
「それをわが組織が掠め取ってしまおうと」
「そういうことだ。だが、それだけではないぞ。メグシテゴナよ。続きを」
「はっ! 『SAF』であれば、わが組織にある航空機器の今までの機体にそのまま使用することが可能なため、新たな開発を行なう必要がありません」
『『おぉ!』』
「ただし、問題がないわけではありません。これら廃食油をどのようにして量を安定して集めるかという課題が残ります」
「解決策としては?」
「各自治体との連携による学校や給食センターからの改修、大型商業施設などでの回収ポストの設置、飲食店からの回収システムの構築などが考えられます」
「うむ、速やかに実行に移すように」
「はっ! すでに根回しは始めております」
「よろしい。ふはははははっ! 国民は何も知らずに我々のため、日々の食事をとり続け、せっせと(あぶら)を出し、我々の燃料の原料を提供し続けてくれるというわけか」
『『おぉ!』』
本日の会議はこれで解散となりました。
ところで、「油を売る」って、働いている証拠ですよね。
確か、油を容器に移すのに時間がかかるため、その間話しながら待つ様子が怠けているように見えるのが云われと聞いたことがありますが、それは何となく理不尽ですね。
あっ、今日の晩御飯の献立が決まりました。
◇
『次のニュースです。滝グループ傘下の盾前コーポレーションが、各食品工場やスーパーなどと提携を結び使用済みの油、廃食油、の回収事業を行うことを発表しました。この計画は……』
「今日はてんぷらとカツです」
『アクゥー! (やったッス!)』
『アクゥー! (今日も食べるぞ!)』
『アクゥー! (早く着替えてこようぜ)』
『アクゥー! (お前達、手もしっかり洗えよ)』
「ふっふっふっ。ご飯は逃げませんから、いっぱい食べてくださいね」




