30 福利厚生 わが組織では副業も認められているんですよ。
我が栄光ある悪の秘密結社『邪須訂巣』では本業に支障がなければ、申請して副業が認められています。
最近ではいろいろな業種で副業が認められるようになりましたが、我が栄光ある悪の秘密結社『邪須訂巣』では随分以前から認められていたという事だそうです。
中には遊園地のヒーローショーのヒーローの着ぐるみアクター(スーツアクター)やご当地ヒーローをされている方もいらっしゃいます。
副業とは別にボランティア活動として、地域の清掃活動や孤児院の手伝いを行なっている方もいらっしゃいます。
で、今回とある遊園地でヒーローショーの怪人の着ぐるみアクターをされている戦闘員11ZAKOさんから、突然大人数のヘルプをしてもらえないかという相談がありました。
なんでも、ヒーローショーのメンバーで打ち上げに行った料理店で食べた料理で、集団食中毒を起こしたそうで、全員お休みされているそうです。
戦闘員11ZAKOさんはたまたまその日は我々の本業があったため、難を逃れることができたそうです。
「いやあ、悪運が強かったッス」
そういうことで、仲間のため、一肌脱ぐことになりました。
もちろん、ワルビレル様が悪の首領の役をすることになりました。
当然ですよね。
ほかにも、園長さんの伝で、戦隊ヒーロー役の方々は手配できたそうです。
で、顔合わせをしたのですが。
「いこえちゃん! いこえちゃんたちだったんですね」
「千里ちゃん! わあ、偶然だね!」
ヒーロー役は普段よく一緒にいるいこえちゃんたち5人でした。
さて、それではわたしも準備を。
「あのぉ、わたし、副官役をやろうと思うのですが、衣装はどこにあるのでしょうか。着替えてきますので」
「いや、千里ちゃんは女副官役じゃなくて司会のお姉さんをやってもらえないだろうか。とてもあっていると思うんだ」
そう、園長さんに言われ、それ用の衣装を渡されました。
着てみましたが、何となく宇宙刑事のパートナー役のヒロイン風ミニスカコスチュームみたいですね。
「うんうん、よく似合ってる。声もかわいいし、正解だね」
園長さんはニコニコしながら何度も頷いていました。
◇
いよいよ本番です。
子供たちの席を覆うように戦闘員さんたちが網を投げます。
「この会場は迷惑怪人ヨコハイリーと我々『絶狂魔侵ナケサケベ』が占拠した! お前たちには人質になってもらうぞ! 行け! ヨコハイリーよ!」
『イクッス!』
「さあ大変、みんなつかまっちゃった。どうしよう? ……そうだ! みんなぁ、お姉さんと一緒に、大きな声で正義の味方を呼びましょう」
「せーの!」
『『アトラクションファイブ~!!!』』
「そんなもの呼んでも無駄だ! 誰も助けに気はしないぞ!」
『マテ!』
「なにぃ!」
『レット・ジェットコースター!』
『ブルー・ゴーカート!』
『イエロー・メリーゴーランド!』
『ブラック・コーヒーカップ!』
『ホワイト・キグルミ!』
『『われら、遊園地戦隊アトラクションファイブ!』』
……なぜ、最後が乗り物ではないのでしょうか?
それに、なんだかとても既視感があるのですが?
気のせいでしょうか?
『早速、必殺技だ!』
『えっ、もう』
『「善は急げ」というだろう』
『なるほど?』
『『必殺! ポップコーン・バズーカー!』』
「うむむ、今回は引いてやろう。だが、これで終わったと思うなよ!」
「お逃げ……やったね! みんなの応援で怪人たちを倒したよ! じゃあ、みんなで「ありがとう」ってお礼を言おうか。せーの!」
『『ありがとう~! アトラクションファイブ~!』』
こうして、きょう一日の無事ショーを終わることができました。
◇
それから閉園後、ショーのあった場所で打ち上げを行ないました。
『『かんぱーい!』』
もちろん、私やいこえちゃんたち高校生組7人はジュースです。
「いやあ、皆さん素人にしては、とてもそうとは思えないほど板についていましたなあ」
「恐れ入ります」
戦闘員さんたちの笑顔がちょっと引きつっています。
「ヒーロー役の5人もポーズが決まっていたね」
「どっ、どーも」
「あははははっ」
「千里ちゃんも、ショーのあと子供たちに抱き着かれて大変だったね」
「いえ、子供たちがたくさんいるのは慣れてますから」
「そうなんですか? よろしければ、またお願いしたいですな。」
こうして、和気あいあいと打ち上げの時間は過ぎていきました。




