11 偽装学園生活 登校もご一緒したいと思うのですが、それは叶わぬことなのでしょうか
おはようございます。
わたしとワルビレル様は普段の世間を欺く偽りの姿として高校生を装い、小中高一貫の総合学園、霊王学園高等部に通っています。
もちろん、偽名を使っています。
ワルビレル様は鉱嶋 王史と名乗り、極々普通の素朴で目立たない学生に変装しています。
枠の太い眼鏡をかけて、髪をボサボサにして、普段の凛々しいお姿を完全に隠しておられます。
本当にお見事です。
わたしは阿久寺 千里と名乗っています。
元の名前はありましたが、過去の事情により、世間を欺く偽りの姿として氏名を変えることとなりました。
わたしも地味で目立たないようにするために髪をボサボサにしようとしたのですが、戦略会議の際、何故か周りから強硬に反対意見が出され、結局はワルビレル様の
「学内カーストの見地から、いろいろな階層に紛れ込み、多角的に情報を得られるようにしておいた方が良かろう」
との鶴の一声で、わたしは普段通りに振る舞うようにと言われました。
それでは正体がばれてしまうのではないかとのわたしの不安には
「お前には演技など出来る訳もないから、ボロが出ない様自然体の方が正体がばれにくい」
とおっしゃられました。
周りからもウンウンと頷か(うなづか)れ、採決の結果、満場一致で決まってしまいました。
わたしの未熟さが身に沁みます。
もっと精進しなければなりません。
◇
中高一貫校であり、尚且つ、マンモス校でもある霊王学園の登校風景はとても賑やかです。
本当はカバンを持たせていただきたいのですが、「偽装任務中だ」と言って、決して持たせてはいただけません。
非常に歯がゆい思いです。
せめて昼のお食事はご用意させて下さいと陳情したところ、その進言は聞き入れて頂け、わたしは毎朝ワルビレル様…王史君の健康管理をさせて頂く栄誉に預かりました。
なんてお心の広いお方でしょうか。
王史君は縁の太い眼鏡をかけ、髪は整えずボサボサにしています。
再度、わたしもやはりそうすべきでしょうかとお尋ねしたところ、
「くどい、何度も言わせるな。お前はそのままでいろ。お前には偽装はまだむずかしいだろう」
とおっしゃられました。
本当にまだまだ精進が足りず未熟なのが恥ずかしい限りです。
「それに、やはりお前はその方が都合がよさそうだ」
王史君が遠い目をしながら離れた所に固まっている男子生徒たちの集団を眺めていました。
「おい、なんだよあのムチャクチャ可愛い子!」
「学年は? 何処のクラスだよ?」
「近くにいるあの冴えない男はなんだ?」
「まさか、彼氏か!? 彼氏なのか!」
「そんな訳ねえだろ! 通行人aだよ。通行人a」
なんだか凄く見られている気がしますが、偽装がばれないか心配です。




