1 悪の組織のお仕事、今日も元気に頑張ります!
「ワルビレル様、今日のご予定は午前中に幹部会議、後に昼食を兼ねての協力者との会食。午後より戦闘員の訓練を視察、3時より研究部門からの新兵器の説明……」
わたしは栄光ある悪の秘密結社『邪須訂巣』△△支部の大幹部・ワルビレル様の副官を務めさせていただいております、メグシテゴナと申します。以後、お見知りおきを。
我々栄光ある悪の秘密結社『邪須訂巣』は日夜、日本を陰から支配すべく、様々な活動を続けています。
表向きは世界にも名を轟かす、滝グループ傘下の一企業『盾前コーポレーション』を隠れ蓑として、裏で暗躍しています。
「うむ、諸君! 我々、栄光ある『邪須訂巣』に集う、勇敢なる同朋諸君! 君たちの献身的な働きにより我らが計画は一歩一歩順調に前進している。
巨大な洞窟の空間内に『邪須訂巣』の幹部をはじめとする戦闘員の皆さんがきれいな列を作り並んで整列し、ワルビレル様のお言葉に耳を傾けております。
皆さん、全身黒ずくめの衣装に身を包み、緊張感を持って佇む姿はとても凛々しく頼もしく感じます。
わたしは水着のビキニをベースとした簡易的なエメラルドグリーンの鎧を身に纏っています。
いわゆる「ビキニアーマー」と呼ばれるものだそうです。
なんでも、女性の副官はこういった装いをするのが様式美だそうで、悪の秘密結社では正装なのだそうです。
金属の鎧で冷たかったり、肌に傷が付いたりして痛くないのかって?
大丈夫です。
内側はちゃんと保護されていますので冷たくはありませんし、肌が擦れて傷付く心配もありません。
開発者の魔頭斎 閻廷素斗様曰く。
「黒ずむ心配のない安心安全設計じゃ」
なのだそうです。
何のことだか意味はよく分かりませんが、とても大切なことなのだそうです。
『アクゥー! (メグシテゴナちゃん、今日も可愛いよな)』
『アクゥー! (ああ、俺、悪の秘密結社に入ってて本当に良かった)』
『アクゥー! (あの姿を拝めるだけでも毎朝の朝礼が楽しみだもんな)』
『アクゥー! (俺、前は○○支部にいたんだけど、そこの女性幹部、化粧が毛羽くてさ。しかも、少し離れた所からでもわかるくらいに、化粧と香水の匂いを噎せ返りそうなくらいさせててよ。正直勘弁だったぜ)』
『アクゥー! (そりゃあなんとも。そこへいくとメグシテゴナちゃんは素っぴんでアレだろ。しかも近くを通ると仄かに石鹸とシャンプーと爽やかな何かの香りがするし。悪の美少女副官万歳)』
『アクゥー! だな。黒髪ロングストレート美少女万歳!』
『アクゥー! (そこ! 気持ちは分かるが、私語は慎め!)』
『『アクゥー! (申し訳ありません!』)』
えっ、そんな格好で寒くはないのかって?
ご心配ありがとうございます。
ですが、大丈夫です。
寒々しい印象を受けますが、この秘密のアジトの中は全室冷暖房完備。
常に温度24℃、湿度55パーセント。空気清浄器による花粉、PM2.5、菌、ウィルスカット等々、組織員の健康に配慮した造りとなっています。
しかもその電力はグリーンエネルギーをフル活用していますので、支配した後の日本にも優しい快適な空間となっています。
この寒々しい洞窟のように見える一室も会議室の一つで『地下洞窟風大会議室』と呼ばれています。
ほかにも祭壇を象った『闇教団風』とか、何本もの石造りの柱の並んだ『神話の宮殿風』など大小幾つかの会議室が用意されています。
「行け! わが同志達よ!」
「皆さん、今日も一日お体に気を付けて任務にあたってくださいね!」
『『アクゥー! (清純派美少女幹部の励ましのお言葉来た~!)』』
『『アクゥー! (よっしゃあ~! 今日も一日ガンバるぞ~!)』』
今日も悪の秘密結社の一日が始まります。