中央都市、メルヘイン
俺たちは馬車で話し合いながらメルヘインに向かった。
村を出発して半日経った頃、中央都市、メルヘインが見えてきた。
大きな壁と堀が都市を囲んでおり、入り口では兵士による検問が行われていた。
検問では魔力石による魔力保有量の確認。
そして、賢者によって造られたとされるアーティファクト『種族鑑定石』というもので種族を鑑定していた。
しかも、そのアーティファクトは実際に俺が五百年前に造った物でその才能は俺の折り紙付きだ。
もし、魔法を使って種族を誤魔化そうとするとそれを感知し、アーティファクトに保存されている魔法によって攻撃されるというお遊び要素も用意している。
(さてと、どうしたものか)
今の俺は魔族であり、昔から魔族と人間は敵対関係にある。
そして、魔族とバレたら倒そうとしてくるだろう。
しばらくすると、俺たちの番が来た。
「この石に触れてください」
俺は言われるがまま石を触った。
石に浮かんだ数値はごく普通のものだった。
そして、俺たちは検問を難なく抜けることができた。
(上手く行ったようだな)
俺は検問のとき改変の魔眼を使い、検問で使われている石に浮かんだ文字を改変したのだ。
こうして俺はなんの問題もなく、メルヘインに入ることができた
そこは俺がいた頃からすっかり変わっていた。
キレイに整備された道と街並み。
そこで商売されている食べ物。
子供たちの賑やかな声。
街は人で溢れかえっていた。
俺は街を見て感動していた。
転生したときはこれほど賑わっておらず、食べ物ももっと高価だった。
メイシャに聞いてみたところ食べ物は栽培で安定供給されるようになったらしい。
「カリアナ。冒険者登録って何処で出来る?」
「それなら、冒険者ギルドだから俺らについてこい」
俺は言われるがままついて行った。
しばらくして冒険者ギルドに着いた。
そこは街の中でも一際目立っており、三階建ての木造建築で、他の家の三、四倍近くあった。
中に入るとエルフの受付嬢がおり、周りのテーブルには酒を飲んでいる冒険者たちがいた。
(エルフとの交流は続いているのか…)
「お帰りなさいませ、カナリアの皆様」
「おう、ただいまカルラ」
ギルドにいた冒険者たちはカナリアのことを知っているようで、皆騒いでいた。
「カナリアって有名なんだな」
「まぁ、俺は一応Sランクだからな」
カナリアはここのギルドにおける数少ないSランク冒険者のようだ。
「ところで、その横にいるのは…」
「あぁ、こいつはルーシャという者だ」
俺はカナリアたちとメルヘインに向かっているときに名を聞かれたので『ルーレン』と『リーシャ』の名前を取り、『ルーシャ』という名を名乗った。
「こいつは強いぞ〜」
そう言いながらカナリアは肩を組んできた。
それを聞いた他の冒険者たちは驚いていた。
カナリアが認める冒険者はほとんど居ないそうだ。
「冒険者登録ってここで出来るか?」
「いえ、カナリアさんが認める実力者ならここでは危険なので明日、またギルドに来てください」
冒険者たちはキョトンとしていた。
恐らくこの対応は俺が初なのだろう。
(…カルラ、どこかで聞いたような…)
俺はカルラという聞き覚えのある名前が気になっていた。