冒険者との出会い2
俺は遠くから戦いを眺め、冒険者が危なくなったら助けるつもりでいた。
だが、この身体で飛んだのは初めてで思っていたよりも早い速度で飛んでしまい、草原にデカい穴を開けてしまった。
気にしないで続けるよう言ったのだが、両者とも恐怖で動けないようだった。
しばらくして動けるようになった魔人の二人は俺から逃げようとした。
だが、その二人は見えない何かにぶつかった。
「なにかある!?」
「何だこれは!」
その二人は戸惑っていた。
「あ〜。それ、俺の魔法だよ。お前らが逃げられないようにね」
そう言うと俺を殺そうと覚悟を決め、突っ込んできた。
その二人の鳩尾を殴り、叩き落とした。
そしてそれを見ていた冒険者三人は俺の強さに怯えている様子だった。
「まぁ、お前らの強さはだいたいわかった。ところで、お前らはなんで子供を誘拐しているのか知っているか?」
二人は地面に横たわりながら、顔を横に振っていた。
「何故、こんなことをした」
「金が欲しかった…から…だ」
そう言って二人は気絶した。
そして俺は冒険者たちのもとに向かった。
「おい、お前らはここに残るか?」
「いえ、私達は子供を助けるという任務があります」
周りも頷き、まだ魔人と戦う気があった。
お世辞にも強いと言えるわけではなかったが、今後に期待ができる答えだった。
ついてくるように言うと、三人は俺の後ろを少し怯えながらついてきた。
俺は家にかけられている隠匿魔法を壊し、ドアを叩いた。
「やっと追手を殺したか。遅かっ…グウェ」
俺は出てきた魔人の鳩尾を一発なぐり、その後、顔を片手で掴んで外に投げ飛ばした。
魔人は嘔吐しそうだった。
だが、俺に気付くと何か言ってきた。
「俺を誰だと思っているんだ。俺は魔人の中でも上位種だぞ!」
何を言っているのかわからなかったが、魔法を放とうとしてきたので魔人の手足を吹き飛ばした。
「痛ぇっなぁ。何しやがる!」
俺はその叫んでいる奴のそばに歩いていき、そいつの髪の毛を掴んだ。
「おい、なんで子供を誘拐している!」
何度聞いても「離せ、俺を誰だと思っている」としか言わなかったので首を吹き飛ばした。
そしてその魔人は沈黙した。
その圧倒的な強さを後ろで見ていた冒険者たちは身体が震えているようだった。
「お前ら、魔人はこの辺りにもういない。早く子供を助けてやれ」
そう声をかけると「はい」と返事をして三人は家に向かっていった。
(五級かと思ったが、あれでは八級にもいかないな)
(もしかすると、魔族も弱くなったのか)
そう一人で考えていた。
しばらくして冒険者たちが帰ってきた。
俺はお疲れ、と一言かけた。
そうすると、冒険者の一人が声をかけてきた。
「私はメイシャ・サラールと言います。危ないところ助けてくれてありがとうございます」
他の二人も名前と感謝の言葉を俺に伝えた。
「子供たちは全員無事だったか?」
「無事でした」
子供たちは全員無事で安心した。
後は村に連れて帰るだけとなった。
「どうやってこの人数を連れて帰るんだ?」
子供は四十三人いた。
少人数なら抱えて行けば済む話だが、この人数ではそんな事は出来ない。
「今から移動魔法が得意なカランが村に馬車を呼びにいくつもりです」
そんな事をしていたら村に着くのは昼頃になるだろう。
なので俺はある提案をした。
「俺のことを信じれるのなら村まで一瞬で帰れるが…」
転移魔法で全員を連れて帰れる方法を伝えた。
三人は互いの顔を見つめながら相談をしていた。
そして三人は俺の提案に乗ることにしたのだった。
「この上に全員乗ってくれ」
恐る恐るだが、みんな魔法陣の上に乗った。
「メイシャ。村の風景を頭の中に浮かべてくれ」
俺はメイシャの頭の中の風景を読み取り、転移魔法を発動した。
辺りは一瞬白く染まり、その後、見覚えがある村にいた。
「ここであってるか?」
メイシャに聞くと「はい」と答えたが、かなり驚いている様子だった。
他の二人も同様に驚いていた。
子供たちは村で親を見つけて走っていき、親と子ともに泣きながら抱きついていた。
(これで一旦は落ち着くか…)
俺は一安心していた。
冒険者たちは村への挨拶を済ませると俺の元に来た。
「このパーティーの団長のカナリア・アルバートだ。この三人を守ってくれてありがとう」
冒険者の人数は合計十五人いて、全員が感謝の言葉を述べた。
「なに、子供を助けるついでだよ」
俺は気にするなと手をひらひらと振った。
そして俺たちは長い間、話をしていた。
そして、冒険者たちは依頼達成の報告のためにそろそろ出発しないといけなくなった。
「どこに行くんだ?」
「冒険者ギルドがある中央都市、メルヘインです」
中央都市、メルヘイン
そこは五百年前の大災害の日のとき、唯一被害を受けなかった場所だ。
その理由は単純で賢者ルーレンがいたからだ。
賢者ルーレンとその仲間たちは魔族数万の軍勢と戦い、見事勝利したのだ。
そして今や人口、五十万人以上いるそうだ。
「俺も行きたいんだが…良いか?」
恐る恐る聞くとカナリアは快く了承してくれた。
こうして俺は故郷のメルヘインに行くことになった。
サティラに連絡を忘れていることに気付き、急いで連絡したのはまた、別の話だ。