初稽古と初デート (上)
すみません遅くなりました。
考えると考えるだけドツボにハマっていく気がします
「アリー、準備出来た?」
「うん、今行くー」
今日は4歳になってから1週間後の初めての休日、3歳になってから少しずつ座学が始まり、文字の読み書き、この世界やここ大陸、この国のこと、簡単な計算を教わってきた。もちろんアリーも一緒。計算に関しては、当たり前だけど簡単な足し算と引き算しかやってないからかなり苦痛。この世界は異世界で1年が360日、30日が1ヶ月でそれが12ヶ月、時間は地球と変わらず1日が24時間。閏年や閏秒といったものもない。これを聞いて最初に思ったのは、地球より綺麗に公転と自転のバランスが綺麗なんだなってこと。
俺が今いるのはプリメーロ大陸にあるエーレンフェルス王国テルフォード辺境伯領の領都フローレンス。この領都の名前だが、なんでも初代テルフォード辺境伯の正妻の名前がフローラだったらしく、そこから名前を取ったらしい。ちなみに歴代のテルフォード家当主はこのフローラさんの直系で、詰まるところ俺の直属のご先祖さまに当たる。今現在父で52代目にして未だにお家騒動が1度もなかったらしい。これはすごいと思う。
そんなこんなで1年が過ぎ、先週4歳になったのだがそこで始まったのが、魔法と剣術の訓練だ。魔法と剣術そして座学、それぞれ1回半日ずつで5:3:4で月曜から土曜休みなくあって日曜日が休み。で、今日が初めての休みの日曜日。アリーと2人で街に出かけることになった。
この一週間特に魔法の訓練がまじでキツかった。剣術は父さんが、座学はレベッカ母さんが、そして魔法はアナ母さんが教えてくれるんだけど、父さんは普段より少し優しく1つづつ体づくりから素振りとかのトレーニング方法を教えてくれて、レベッカ母さんは普段と変わらず、おっとりとした感じで優しく教えてくれる。ぶっちゃけめっちゃわかりやすい。問題は母さん。普段激激甘々な母さんが魔法の訓練になると、鬼畜という言葉では甘いくらい、もはや修羅と化す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アル、今から魔法の訓練を始めるわ。最初に言っておくけど、とても厳しいから覚悟しておきなさい。」
「はい!」
ついに魔法を使う時が来た〜。
本当に待ちくたびれたよ。
「アル、あなた魔力循環は出来るのよね?」
「はい、知ってたの?」
「当たり前じゃない、自分の息子が魔力を発してそれを循環させていたら誰だって気がつくわよ」
え、それってやばくない?俺生後数ヶ月からずっとやってたんだけど、いきなり転生者ってバレそうなんですけど。
「でも、さすがは私の息子ね。物心つく前から無意識で魔力循環出来るようになっちゃうんだもの。アルには魔法の才能がずば抜けてあるわ。」
「はい...」
うちのお母さん親バカでよかったぁ。転生者だってバレるかドキドキした、今もずっと心臓バクバクいってるわ。いつかは言おうと思ってるんだけど、今はまだ早いっていうか、俺の心の準備が出来てないっていうか、もし受け入れてもらえなかったらって考えると、どうにも言い出せない。
「じゃあ始めるわ、魔力循環をいつもより3倍の速さで10分間循環させ続けなさい」
「はい!!!」
厳しいって言ってた割にこれは余裕かな。暇な時1時間とかやってたし。
〜6分後〜
「ハァハァハァハァ」
俺は地面に倒れながら息を切らしていた。いや、これめっちゃしんどいぞ。いつもより速く循環させてるだけなのにいつもの100倍はキツいぞ。
「ほら、早く立ちなさい。まだ終わってないわよ。」
「はい、、、」
力を振り絞って立ち上がり、もう一度魔力循環を再開する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あれ?何してたんだっけ」
「何してんの、ほら、立ち上がってこれ飲みなさい」
あ、そうだ、あの後5分くらい魔力循環させてたら急に目の前が歪み始めて、気を失ったんだ。
自分に起こったことを思い出しながら立ち上がり、母さんから小瓶を受け取り飲み干す。
「にがっ!!!」
「ふふふ、それは魔力回復薬といって、質が高いものほど苦くて、飲みやすくしようとすると質が落ちるのよ。ちなみに今アルが飲んだやつを、普通に買おうとすると最低でも王国金貨1枚分はするわよ。ほらそんなことを言ってる間に魔力欠乏症による怠さがなくなったでしょう?」
母さんはイタズラが成功したかのように笑いながら、そう言った。ていうか金貨一枚分ってことは10万円くらいか、たっか。ていうかいいのかそんな高い薬飲んじゃって。確かに体の重さは消えたけど。
「ありがとう母さん、でも金貨1枚もする薬を俺なんかが飲んじゃってよかったの?もっと安いのでも良かったんじゃないの?」
「いいのよ。さっきも言ったけど普通に買おうとしたらだから。それ作ったのお母さんだもの。それにアルは自分じゃ気づいてないかもだけど、アルの魔力量は既に普通の人よりも多いのよ。一つ下のグレードの魔力回復薬じゃ0から最大まで回復させることは出来ないのよ。物心つく前からずっと魔力循環させてきたからね、魔力の伸びが大きいのよ。大人になってからでも伸びはするんだけど、微々たるものね。どちらかと言うと魔力量を減らさないように、とか感覚が鈍らないようにする方が目的だしね。それに比べて成長期の子供がやると体が成長するように魔力も成長するのよ。はい、休憩は終わり、もう1回やってみなさい。1回魔力を使い果たして最大まで回復させたから魔力量も結構増えたはずだから10分間出来ても出来るところまで続けなさい。」
「はい」
結局13分20秒くらいでまた魔力切れを起こして気絶した。
〜翌日〜
「じゃあ昨日の続きを始めるわ。今日は昨日の5倍の速さで30分続けることが目標ね。頑張りなさい。」
「あの、母さん、それは分かったんだけど、いつ魔法を撃てるようになるの?」
「もう少し魔力の扱いに慣れてからね。今日の目標がクリア出来れば来週には始められるわね。」
「分かった」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
結局昨日の訓練では最初の500倍の速さで1時間22分で魔力切れを起こして気絶した。魔力切れを起こして魔力回復薬を飲んで全快にすると多い時は2倍、少ないときでも1.5倍にはなるんだけど、気絶するってわかって使い切るのって結構怖い。それにあのだるさはかなりしんどいから出来るならやりたくない。
でも今日はアリーと初めての2人きりでの街中デートだからね。精一杯楽しまなきゃ。アリーが準備出来たみたいだしそろそろ行こう。母さんに見つかるとまたニヤニヤされちゃうし、げっ!!!もう見つかってた、、、だと?
あ、手招きされた。
「どうしたの母さん」
「ほら、手を出しなさい」
言われた通り手を出すと、お金が入ったちっちゃい巾着袋を渡された。
「銀貨5枚と予備の大銀貨1枚が入ってるわ。これで精一杯アリーちゃんを楽しませてあげなさい。アリーちゃんにかっこいいとこ見せてちゃんとお嫁さんにするのよ?」
「べ、別に、そんなんじゃないよっ!」
自分でもわかるくらいに顔が真っ赤だ。めちゃくちゃ顔が熱い。そんな俺を見てニヤニヤしながら母さんが俺の後ろに向けて続ける
「あら、本当?でもそんなことアリーちゃんが聞いたら泣いちゃうだろうな〜」
その瞬間、振り向くと瞳をうるうるとさせながら、今にも大粒の涙がこぼれ落ちそうなアリーが言ってくる
「アルはアリーのこときらい?お嫁さんにしてくれないの?」
そう言いながら、目に溜まってた大粒の涙がポロポロと流れ始めた。もうこんなの答えは決まってるよなぁ。
「嫌いなわけないだろ、大好きだよ。俺のためにおめかししてくれたの?その服も髪型もとても似合ってるよ。こんなにかわいいアリーのこと誰にも渡さないよ。アリーの方こそ僕のお嫁さんになってくれる?」
「うん!アリー、アルのお嫁さんになる!」
アリーはそういうと俺の手を握ってえへへ、と照れながら笑ってくる。あぁ何だこの可愛い生物、子供の頃の約束とかじゃなくて本気で嫁にしちゃうからな。そもそも最近のアリーは俺のどストライクなんだよ。金髪碧眼で普段はポニーテールにしてて、めちゃくちゃかわいい。今日は、いつもポニーテールにしてる髪をシニヨンにして花柄のワンピースを着てとてもかわいい。いつも可愛いけどいつも以上に可愛い。まじで天使。前世では全くロリコンじゃなかったから、多分転生して子供になったから精神も引っ張られてるんだと思う。というかそうじゃないと困る。そうであると信じたい。