美少女留学生のホームステイ先が俺の家だった件について 〜約束を守りに来た彼女は学校でも家でも甘えん坊です〜
家に外国人美少女がホームステイしに来ないかなと考えながら書いた作品だったりします。
気軽に読んでいただけたら嬉しいです。
高校入学を機に一人暮らしを始めた俺の名前は――水瀬蒼太。裕福な家庭のため、一人暮らしをすることはすぐに許された。そんな俺はついに高校二年となった。
ラノベの主人公ような、華のある高校生活を期待していた俺が馬鹿だった。
俺は――彼女いない歴=年齢なのだ。イケメンと違って女子と話す機会がない俺にとって、彼女がいる学校生活は夢でもあった。
「俺にも彼女が欲しいな。外国人の美少女とか……」
そんな事を呟いた所で彼女が出来るはずはないのだが……
マンションを出た俺は学校へと向かっていた。途中でスマホがピロリッと音が鳴った。
立ち止まり確認すると、それは母さんからのメッセージであった。
『息子である蒼太へ
おはよう。あとよろしくね☆
母より』
「……何がよろしくね、だ! 主語が抜けているだろ!?」
ついそんなツッコミを入れてしまった。
今から返したところで、この時間帯ではスマホを見ないだろう。
そう思った俺は、スマホをポケットにしまい学校へと向かった。
学校に着き教室に入ると、一年の頃からの友人である速谷翔馬が俺に声をかけてきた。
「おはよう蒼太!」
「おはよう翔馬。やけに今日はテンションが高いな。何かあった?」
そう言って一緒に席へと歩いて向かう。
俺の席は窓際の一番後ろの席という最高の場所であった。
席に着くと翔馬が再び口を開いてきた。因みに翔馬の席は俺の前の席である。
「なあ聞いたか?」
「何を?」
学校に来る間、俺は噂になるような話は何も聞いてはいなかった。だが、今日の教室はやけに騒がしいように感じた。
翔馬は「だよな」と言ってから興奮気味に喋り出した。
「今日このクラスに外国からの留学生が来るんだってよ!」
「……は? 留学生?」
俺はぽつり言葉を零した。
今日この学校に、しかも俺達のクラスに留学生が来るなんて聞いてもいなかった。
「本当か?」
「ああ! しかもとびっきりの美少女らしいぞ!」
「そうなのか。でも俺達と話すと思うか……?」
俺と翔馬はクラスのリーダー的存在である葉山祐樹を見た。丁度、葉山も俺達と同じような会話をしていたようだ。葉山は運動部であり更にはイケメンでモテモテだ。言わば『非(?)リア充の敵』、そんな男である。
「「……ないな」」
再び翔馬と顔を合わせ同時にそう言って落ち込んだ。結局イケメンには勝てないのだ。
そんな俺達に声をかける人物がいた。
「二人ともおはよう~って、朝からどうしたの?」
落ち込んだ顔をする俺と翔馬に声をかけてきたのは、黒色の長髪に赤色の眼鏡を掛けクラスの委員長である如月綾乃であった。
「委員長か……」
「何かようか?」
「元気がないわね。このクラスに留学生が来るというのに」
そう言った委員長に、俺達が元気ではない理由を説明した。
結局は留学生だろうと葉山みたいなイケメンに取られるのだからと。
「だから元気がないのね……」
呆れたのか溜息を吐いた如月。それから元気がないままホームルームのチャイムが鳴った。教室の扉が開き担任の先生が入室した。
「入りなさい」
「――はい」
透き通るような声と共に俺達の教室に――一人の天使が舞い降りた。肌荒れや日焼けなどを知らなく、潤いが保たれた白磁のような白い肌。春の温かい風が窓から教室に流れ込み、彼女の流れるような銀髪のストレートヘアが靡いた。春風に煽られた彼女の髪は、窓から差し込む陽の光を反射し光沢を放っていた。
整った鼻梁に長いまつげに縁どられた大きな瞳。その瞳は空のように青く何処までも透き通って見えた。
俺達クラスメイトの目はそんな天使のような留学生へと向けられていた。
「簡単に自己紹介を」
「はい」
担任に言われ、彼女の艶やかな桜色をした小さな口を開いた。
「初めまして。エミリア=フェバリットといいます。小さい頃は日本に4年住んでいました。日本語はこの通り喋れますが、あまり難しいの聞き取れないかと思います」
最後にエミリアは、「よろしくお願いします」と言って頭を下げた。
俺は流暢な日本語を喋るな、と思っていた。
「誰かフェバリットさんに質問のある人はいるか?」
その言葉にクラスの男子ならず女子までもが手を上げる始末。
担任が一人を指名した。指名されたのは――翔馬であった。
「よっしゃあ! ならフェバリットさん、好きな人はいるの?!」
翔馬の問いにクラス全体が静まり返る。これは誰もが気になる質問であったからだ。
翔馬の質問に答えるため、エミリアは口を開いた。
その瞬間、何故か俺と目が合った気がした。
(気のせいか)
俺なんか見るわけないさっきのは気のせいだ。そう思っていた。
「――はい。いますよ」
その瞬間、女子は「きゃー」という黄色い声をあげ、男子は落ち込む。だが、翔馬は諦めないとばかりにその人物の名前を聞こうとする。
「そ、その、名前を聞いても?」
「もちろん。それは――」
突然こちらへと駆けだしたエミリア。方向は翔馬の方。翔馬は「マジで!?」と声を上げ手を広げ満面の笑みでエミリアを歓迎する準備をするのだが、エミリアはそのまま通り過ぎた。
「……え?」
翔馬を通り過ぎたエミリア。その後ろにいる俺を見てエミリアは――
「ソータ! 約束のため、あなたに会いに来ましたよ!」
――抱き着かれた。それはもうぎっちりと。
一瞬で静まり返る教室。視線は俺とエミリアに固定されそして……
「「「「って、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」
そんな驚愕の声が教室全体に響き渡った。
「本物のソータです!」
エミリアは俺の胸元に顔を擦り付け、幸せそうな表情をしていた。
「ま、待て待て! その前に約束ってなんだ!?」
戸惑いながらも言った俺の発言に、エミリアが「そんな!」とでも言いたげな顔をして説明した。だが、その説明がクラスの全員を静まり返らせた。
「約束したじゃん、お互いが20歳になったら結婚しようって……もしかして忘れたの……?」
静寂が教室を支配し、エミリアが上目遣いで俺を見上げた。エミリアの瞳には涙が溜まっており今にも泣きそうになっていた。エミリアを見ていると、幼い頃に別れた、好きだった少女の面影と重なった。そして徐々に思い出す幼い頃の記憶。
あれは俺がまだ小学一年生の頃の話だ。
ある日、近所に外国人の家族が引っ越してきた。どうやら父さんの取引先の社長だったようで親しいようだった。
そして引っ越し祝いのパーティーをするからと家へと招待されたのだが、そこで初めて彼女――エミリアと出会った。
「やあ。私は君のお父さんと親しくさせてもらってるリアム。君がソウタ君だね?」
「うん。6歳です!」
「そうか。では私の娘と同じだね」
リアムの後ろの扉から顔を出してこちらを覗き見る少女がいた。
そして、俺と目が合ったのだが扉の裏へと隠れてしまった。
「エミリア。挨拶をしなさい」
「う、うん」
そう言って俺達の前に、銀髪のストレートヘアをした少女が姿を現し、テトテトとリアムの側へと歩み寄ってきた。
「自己紹介を」
「え、エミリア。ヨロシク」
まだ日本語が苦手なのだろう。
「俺は蒼太! よろしくエミリア!」
「ひぅっ!」
俺の大声に驚いたのか、エミリアはリアムの後ろへと隠れてしまった。
それから仲良くなった俺とエミリアは、毎日遊ぶようになっていた。毎日が楽しく、気づけば俺はエミリアのことが好きになっていた。
そんな楽しい日々は突然終わりを告げた。
「ソータ……」
「どうしたのエミリー?」
口籠るエミリアだったが意を決したのか口を開いた。
「ワタシ、来月には向こうに帰らないといけないの」
「……え? 帰るって……」
突然のことで俺はパニクッた。
「イギリスに帰らないといけないの。黙っていてゴメンね……」
「どうして突然」
「お父さんの会社で問題があったらしくて……」
「そんな! やだよエミリーと一緒に居たい!」
俺の目には涙が溜まっていた。それはエミリアも同じであった。
「また戻ってくるから、だから、だからこっちに戻ってきたら私を、私をソータのお嫁さんにして下さい!」
「ああ、もちろんだよ! 必ず幸せにして見せるから! 俺とエミリーが20歳になったら結婚しよう!」
「うん!! ありがとうソータ!」
そして俺に抱き着いたエミリアは、唇にチュッとキスをしたのだった。
その記憶を思い出した俺は、驚きを露わに口を開いた。
「エミリー、お前なのか……?」
「う、うん! もう、忘れるとかないよ……」
涙を零し微笑んだエミリア。その微笑みは息をのむくらいに美しく、そして可愛らしかった。
「……すまん。でも思い出したから許してくれないか?」
「……ん。許す」
「ありがとう」
俺とエミリアが気が付くと、教室は静まり返ったままで皆こちらを見ていた。
男子から恨めしそうな視線を。女子からは羨望の眼差しを。
そんな視線に気が付いた俺とエミリアは、互いに見つめてから顔を真っ赤にした。
「ご、ゴホンッ! フェバリットさんい、いいかね?」
担任が咳ばらいをしエミリアに声をかける。
未だほんのりと頬を桜色に染めているエミリア。
「は、はい!」
「えっと、席の方だけど、水瀬君の隣だけど大丈夫かい?」
「「え?!」」
その声は俺とエミリアのものであった。
元々俺の隣は誰もいないのでそうなるのは当然の流れだろう。
席に座ったエミリア。隣に座る俺を見て「お隣です!」と笑みを微笑む。
「学校の案内とかは親しいようだし水瀬に頼んだぞ。皆も仲良くするように」
「あっはい」
そんな間の抜けた返事を返し朝のホームルームが終了した。
その瞬間エミリアは女子に囲まれ、俺は男子に囲まれ問い詰められるのだった。
ホームルームが終了し担任が教室を出て行って直ぐに、エミリアは女子に囲まれ俺は男子に囲まれ問い詰められた。
「で? 説明してもらおうか蒼太」
「さあ、吐け!」
「どうやってあんな美少女と!」
「どんな卑怯な手を使ったんだ!」
俺は男子から問い詰められたいた。
その目には殺気とも呼べるような感情が込められており、俺は身震いをする。
これが恋愛に飢えた男なのか、と。
「さあ早く吐け!」
「教えろ!」
「どんなインチキを使った!」
「催眠か!? 催眠なんだな!?」
おい最後! そんな手誰が使うんだよ! そんな展開同人誌でもなきゃある訳ないだろうが!
つい内心で突っ込みを入れた俺だったが、今にも襲って来そうな感じだったので答えた。
「……小さい頃の約束」
答えたのだが。
「んなもん分かってるんだよ!」
「そうだぞ!」
「なら何で聞いたんだよ!?」
可笑しいだろ、と言いたくなる。俺だって驚いているのだ。後で母さんに電話して聞くしかないな。
てかよくエミリアのホームステイ先を俺の所で許可したよな……
エミリアのお父さんは大丈夫なのか? と疑いたくなる。
俺は隣に座るエミリアをチラリと見やると、女子達に色々と聞かれていた。
アメリカの何処に住んでいたのかや、日本語は誰に教わったのかなど様々であった。
だがその中で一番多かった質問は俺との関係である。
「エミリアさん! 水瀬くんとはどんな関係なの? 気になっちゃって……」
「ソータとの関係ですか? ソータは私の──『婚約者』です!」
エミリアはクラスのみんなに聞こえる声量で『婚約者』とキッパリと言いきった。
怨敵を見るかの様な憎悪の瞳を俺に向ける男子と、「キャ~」っと黄色い悲鳴を上げる女子。
「エミリアさん。そ、その婚約者ってのはもしかして、両親公認なの?」
「もちろんです!」
俺の腕にしがみつくエミリア。腕が谷間に押し当てられ感触が直に伝わってくる。
柔らかい……そうじゃない! 俺は聞いてないんだが……?
つい胸の感触に意識が飛んでしまった。男ならしょうがないのだ。それに俺は両親から何も聞いてはいないのだ。もしかして隠していた、のか?
自分の両親だが疑いたくなってきた。
「うぐぐっ。妬ましい……!!」
「蒼太は俺達の裏切り者だ」
恥ずかしくないのかよ、と言いたくなるも、その前にエミリアを俺から離れるように告げる。
「エミリア」
「エミリー!」
「え、エミリー。その、は、離れてくれない、か?」
「なんで?」
「いやだって……な?」
「?」
これは分かっていないのか!? それともわざとなのか!? 無自覚だったのなら恐ろしいぞ……
言うか迷うが、これを言って何か言われたら俺が悪くなるのは確かである。
だが言わないと離れてくれなさそうななので、恥ずかしいも言うことにした。
「その、む、胸が、腕に当たって……」
その言葉でようやく気づいたエミリアだったが……
「ダメ、ですか? だって何年も会ってなかったのでもっとこうしていたいの……ダメ?」
上目遣いでうるうるした瞳を俺に向けるエミリア。
そんなエミリアに周りが「うぐっ!」と胸を抑えてうずくまった。
理由はエミリアが可愛い過ぎたからである。
その目は反則だろ……、と言いたくなる。断るにも断りずらい。
丁度良いことにそろそろ授業が始まる。
「嫌って訳じゃないけど、そろそろ授業が始まるから離れて欲しいなって……ダメか?」
「むぅ……それは仕方ないです」
シュンとしながらも腕を離して自分の席へと戻ったエミリアだが、俺に突き刺さる視線は、「お前何やってんだよ!」と物語っていた。
そして始業のチャイムが鳴り授業が始まるのだった。
外国人美少女っていいよね!