卑怯とは人を指さし馬鹿にする者の事である
今日もギルド(クエスト紹介所もしくは仲介所)は賑やかであった。
そこに酒場と隣接するギルドには似つかわしくない男が一人いた
その男はフルプレートアーマーであり、手入れの気届いた甲冑を着ており、ただ静かに酒を飲むでもなく椅子に座っていた。
男の周囲だけ空気が異様に重く感じられるのか、はたまた冷たく感じるのか、だれも近寄ろうとはしない・・・
その周辺だけが人一人分は入れるだけのスペースだけを周囲に残して、空いているのだ
そんな賑やかな一部は静寂な中を、切り裂くように扉を背中でたたき開けて入ってきた少女が、大きな声で望みを乞うようにこう言った―――。
「誰か助けてください!ぽ、ポーションでも!回復魔法使える方いませんか!!!!死んじゃう!このままじゃダッシュが死んじゃう!誰か助けてください!!!お願いします!!!ゲホッゲオッ」
赤髪の少女は枯れ枯れた声で皆に懇願をしているが、冒険者の誰一人としてそれを救うとする者はいなかった
なぜならば冒険者は死もまた自己責任であり、それを誰かに巣くってもらおうなんて甘い考えのものはまたどこかで同じような過ちを起こすと考えられている職業だからである
だが誰でも一度は誰かに助けられているはずなのだが頭の固い親父連中は誰かを助けようなどと思う人間はいない。
それ以前にポーションはかなり高額であり、自分の食い扶持を稼ぐだけでぎりぎりの低級もしくは中級の冒険者たちは、この状況ではポーションを差し出すことなのでる物はこのギルドには現時点では存在しないのだろう。
それを知っているからこそ回復魔法を開けてほしいとまた懇願しているのだろうが、回復魔法は聖なる魔法の分類であることから使えるものが限られる。
条件としては数十年の祈りをささげた淑女のみにしかつかえない魔法とされており、男性には扱えないと巷では言われているが新韓だけは男性でも使えるのでこの説は矛盾していることとなるが、そこまでしてわざわざ回復魔法を努力して手に入れたところで、回復魔法で己のキャパを使いつくす必要はないため、だれもやらないのだ。
だがこんな世界でも食い扶持を稼ぐためには己の命を天秤に捧げ、強力なモンスターに使い捨てのナイフや使い捨ての剣で何度も何度も戦いに身をとおじなければならない。
そしていつかその強運が尽きたとき死するのである。
ダッシュとかいう小僧もまたその流れで死ぬものだと冒険者の皆が、そう思いながら酒のつまみにしながら見ているといつもは、高難易度クエストの時しか立ち上がらないフルプレートの人間が椅子から立ち上がった。
その男は渋いそして太い声で、臓物を押しつぶすような威圧とともに初めて見るような色のポーションを差し出してきた。
「次はへまをするな。この子にポーションを飲ましてあげろ。これは罠と獣傷か?」
「そうです!」
「出血がひどいな、このポーションを二本ゆっくり飲ませた後、このポーションをかまれたところに塗り込むんだ。痛みがひどいようならこのポーションを飲ませてやれ。必ず安静にしておけ。それでも動きたい理由があるなら病院にでも行くのがいいだろう」
「ありがとうございます!」
「無理していいことは何もない。無理をしなくてはいけない時はあるが、必ず安全を持ったうえでやるんだ。死んでは元も子もない。」
「あの名前を教えてもらうことはできますか!このご恩はかならずいつかお返しします!」
「名前は九条 白」
「お名前心に刻んでおきます!」
「好きにしろ」
そういって男は、ギルドに張り始められた高難易度のクエストの中でも最上級のSSSクラスのクエスト用紙を千切ると、受付で受注していた。
だがその男が行って一連の作業は一部を除いてほとんどのものの目にはついていなかった。
気配隠蔽の魔法を己にかけているようだった――――――。